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個人的な栞(しおり)として皆さまの作品をピン留めしております。ヒマなときに見てもらうと、ひょっとしておもしろいかも。
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#ショートショート

紫乃「春ピリカグランプリ 2023」に向けて

紫乃「春ピリカグランプリ 2023」に向けて

11か月ぶりにやってまいりました、第四回「春ピリカグランプリ」です👑

まずは、こちらをしっかりとお読みください。
👇

詳しくはピリカさん募集要項記事をご覧ください。

     ・・・・・

以下は、今回の審査員としての、紫乃心構え。

ここ一年半ほどの私の日々の目標・糧は、「毎日、五句以上の句を詠むこと」。
目にする自然・光景は、ほぼ全て私の創作の種であり、その日の自分を俳句という創作で

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小説|北風と体温

小説|北風と体温

 北風は道ゆく彼女に話しかけます。風の声は、彼女の凍える紅い耳へ届きました。上着ではなく、ただ彼女の涙を吹き飛ばしたくて、日も雲に隠れる寒空の下、北風は彼女にこう語ります。

「より暖かい上着を着るのもよいでしょう。マフラーを巻き、手袋をつけるのもよいでしょう。カイロを懐へ忍ばせるのもよいでしょう。風の届かない建物で暖をとってもよいですし、暖かい地へ引っ越してもよいでしょう。

 去った夏を思い出

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小説|コーヒーが冷めるとき

小説|コーヒーが冷めるとき

 おばあさんは眠るまえにコーヒーを飲みます。「眠れなくなるからやめなさい」とおじいさんは毎日のように言いましたが、おばあさんはやめません。「うまいんだから仕方ない」

 近所の人に会ってもあいさつをしないことも、お医者さんに止められているのにお酒を呑むことも、めんどうでお風呂に入らない日があることも、おじいさんは何度も注意しましたが、おばあさんは聞きません。

 おじいさんはとつぜん亡くなりました

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邪悪な龍の子ども

邪悪な龍の子ども

 子どもの龍を拾った。たぶん、子どもなのだと思う。ひざに乗せられるくらいの大きさだし、目は大きくてつぶらで、全体的に丸っこくて愛らしい。龍と言えば見上げるくらい大きなものなのだと思うから、たぶんこれは子どもだ。もちろん、それがわたしの龍を見た最初だから、正確なところはわからない。その大きさで大人だという種類の龍の可能性だってある。
 雨の降る夜だった。わたしはアルバイト帰りで、クタクタで、コンビニ

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砂浜に無数の貝の遺骨 ¥100

砂浜に無数の貝の遺骨 ¥100

自作の自由律俳句を表題に短編を書く。
一作目。約800文字。

「砂浜に無数の貝の遺骨」

海が見たい。

始めたばかりの夜勤のアルバイトを終え、
徹夜特有のふわふわした頭に唐突に砂浜が浮かんだ。

一度思いついてしまったらそのまま帰宅する気分にはなれず、
携帯で手近な砂浜を検索した私は京急線に乗り込んだ。

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おもしろきことなき批評を面白く -星新½「時事ショートショート」集-

おもしろきことなき批評を面白く -星新½「時事ショートショート」集-

科学、政治、社会、ビジネス。芸能を除けば、ニュースや批評はいつだって難解だ。しかし、ちょっとしたユーモアでその壁を取り払うことは出来る。人民に批評的視点を与えることが出来る。すると、ほんの少し世界は動き出す。ニュースや季節の行事に基づく短編小説「時事ショートショート」は、そんな大袈裟な目的を持った小さな取り組みである。

作られ笑い

エモリー大学の脳外科チームは、大脳の内側面において、脳梁の辺縁

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ボタンを掛け違えたのは誰だ?

ボタンを掛け違えたのは誰だ?

私この神社の神なんですけど、一年で一番忙しいのって実は神無月なんですね。

神無月に出雲大社で向こう一年の男女の縁を決めるんですが、これがもう過酷な労働で。

昔はね、八百万の神って言うだけあって本当に八百万人近い神様が宴会しながら決めてたらしいんですけど、今はそんな効率悪いことできません。

リストラで神様八十人まで減っちゃって。一人の神が七十万人、つまり三十五万組の縁を結ぶとか、ザラなんですよ

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