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【連載】異界をつなぐエピグラフ 第10回|これがエピグラフ効果である|山本貴光
第10回|これがエピグラフ効果である ここまでのところ、いくつかの具体例を通してエピグラフについてあれこれ考えてみた。もちろん、古今東西でこれまで書かれてきた本や文章全体からすれば、ここで触れたのは、そのごく一部の(中略)そのまた一部の(中略)ごく一部に過ぎない。そのつもりで見てゆけば、あちこちにさまざまなエピグラフが見つかる。私たちはまだエピグラフの深い森へ足を踏み入れたばかりとも言えそう。
【連載】異界をつなぐエピグラフ 第8回|「幾何学ノ素養ナキ者」はどこから来たのか|山本貴光
第8回|「幾何学ノ素養ナキ者」はどこから来たのか1.最古のエピグラフ問題再訪
前回、ジェラール・ジュネットの『スイユ──テクストから書物へ』(和泉涼一訳、水声社、2001)を手がかりにして、そこで「エピグラフを添えた最古の例」と目されていたラ・ロシュフコーの『箴言集』を眺めてみた。
『箴言集』の最初の版は1665年に刊行されたもの。といっても、同書には最初からエピグラフが備わっていたわけで
【連載】異界をつなぐエピグラフ 第7回|これが最初のエピグラフ?|山本貴光
第7回|これが最初のエピグラフ? さて、ここまでのところ、いくつかのエピグラフを眺めてきた。といっても、どれだけあるかも分からないエピグラフの全体からしたら、私が触れたのは砂浜でたまさか手に触れた一握りの砂といったところかもしれない(いや、もっと少ないかも)。
他方で、藤本なほ子さんによる姉妹連載「エピグラフ旅日記」をご覧いただくとお分かりのように、藤本さんはエピグラフ・ハンターとして書棚のあ
【連載】エピグラフ旅日記 第6回|藤本なほ子
エピグラフ旅日記(10月)10月某日(1)つづき──神西清ラインをたどる
ロシア・ソビエト文学の棚に滞留している。『パステルナーク詩集』(★1)を眺めてしばしの時を過ごした後、棚に戻し、さあ仕事をしよう、と棚の続き(右方向)に向かい、岩波文庫やちくま文庫、講談社学術文庫、平凡社ライブラリーなど、おもだった文庫や叢書を手当たりしだいに抜きとって閲覧席に運ぶ。
ドストエフスキーやトルストイな
【連載】異界をつなぐエピグラフ 第5回|人文界のスターたちをお迎えした強力な弁護陣、あるいは護符型エピグラフについて|山本貴光
第5回|人文界のスターたちをお迎えした強力な弁護陣、あるいは護符型エピグラフについて1.どこへ連れていかれるのか 世にヘンテコな本は数あれど、18世紀英国のお坊さん、ロレンス・スターン(1713-1768)が書き継いだ『紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見』(全9巻、1759-1767)ほどヘンテコな本となると、そうそうお目にかかれるものではない(★2)。
などと申せば、「またまた大袈裟な
【連載】異界をつなぐエピグラフ 第3回|ホラーの帝王にしてエピグラフの王|山本貴光
第3回 ホラーの帝王にしてエピグラフの王1.どう見てもエピグラフ愛好家 世の中には、エピグラフをこよなく愛するもの書きがいる。これまでも、ときおり「この人はもしかして……」と感じることはあったものの、逐一確認したりはしなかった。
だが、このたび『エピグラフの本(仮題)』をつくるにあたって、あれこれの本からエピグラフを探して集めてみたところ、「これはやはりどう見てもエピグラフ愛好家ですな」という
【連載】エピグラフ旅日記 第7回|藤本なほ子
エピグラフ旅日記(10月)10月某日(2)つづき──サトクリフ『思い出の青い丘』
図書館のいちばん端の棚から……ということで、日本十進分類表のおしりのほうから手をつけてしまい、900番台後半の、その他の諸言語文学、ロシア・ソビエト文学、イタリア文学、スペイン文学、フランス文学あたりの棚をうろうろし続けている。分類番号の並びを気にせず、手あたりしだいに見ていたのだが、「もっとちゃんと、整然と進め
【連載】エピグラフ旅日記 第5回|藤本なほ子
エピグラフ旅日記(9月)9月某日(6)つづき──アントニオ・タブッキの3つのエピグラフ
「まずはおもな文庫や叢書を、エピグラフがないか一冊ずつ確認していく」という方針の下、壁際のスペイン文学とフランス文学の棚をうろうろしたのち、イタリア文学の棚へ。
(ちなみに、今回の調査ではできるだけ網羅的なデータをつくりたいと考えており、主だった著者については、エピグラフがあった作品だけでなく「エピグラ