記事一覧

産婦人科医の不妊治療体験記③ 採卵まで(OHSSに見舞われる)

「お金と時間と体の負担の無駄遣いさえなければ不妊治療に過程は関係なし、結果よければ全てよしのポリシーで突き進むのみ。」と前回の記事②に書いていたけれど、読み返し…

tommy
4か月前
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産婦人科医の不妊治療体験記② クリニック初診から卵管造影検査まで

クリニックでは子宮頸癌検診から性感染症の検査、コエンザイムQ10やビタミンD濃度まで(専門医試験でも不妊治療の一般的テキストでも見たことないぞ!という様な項目も)あ…

tommy
5か月前
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産婦人科医の不妊治療体験記①クリニック初診まで

結婚してもうすぐ一年。キャリアのこと、年齢のことを考えるとそろそろ子供が欲しい…しかし夫婦とも多忙で家では疲れ切っていることが多く、このままではなかなか自然妊娠…

tommy
10か月前
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POLA美術館 ピカソ「青の時代を超えて」展 小さな記録

こんばんは。 先日1人で行ったPOLA美術館 ピカソ「青の時代とそれから」が素晴らしかったので書き残します。 POLA美術館は箱根の山奥にあるガラス張りの透明感あふれる大…

tommy
1年前
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新婚三十路産婦人科医が「私、子ども欲しいかもしれない(犬山紙子著)」を読んで考えたこと

二十代半ばで産婦人科医になった。 患者はほぼ歳上の妊婦ばかりだった。 初産婦の平均年齢を超えてきた昨年の冬に結婚した。結婚前は、周りの既婚の友達は皆妊娠出産してい…

tommy
1年前
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夜行列車で朝を迎えにいく-サンライズ出雲乗車記録-

横浜での仕事を終えて、1か月前に押さえていた切符を握りしめ、ずっとずっと憧れていたサンライズ出雲号に乗る。 座席はのびのび座席、両隣には中年男性。のびのび座席は…

tommy
1年前
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横浜中華街 極彩色の夏夜の迷宮

横浜駅から夜行列車が出発するのは22時15分。それまでの数時間、ひとり横浜中華街をぶらぶら歩いた夏の終わりのある日の記録。 悟空茶房でお茶ランチ。凍頂烏龍茶、茉莉花…

tommy
1年前
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推し、燃ゆ から考えるアイドルの存在意義

言わずと知れた大ベストセラー「推し、燃ゆ」 若干21歳の著者は芥川賞を受賞している。 卓越した表現技巧により描かれるのは女子高生の混沌。自分を思い出してもあの頃は…

tommy
2年前
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怠惰を許そう 前を向くために

「何もする気が起きないの→暇になる→忘れていた嫌なことが心に浮かぶ→余計憂鬱になる→何もする気が起きない→以下同文」という負のスパイラルってある...先週の自分が…

tommy
2年前
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韓流ドラマ「サイコだけど大丈夫」に救われた話

このたび、本当に素晴らしいドラマに出会いました。 ドラマはほとんど見ない私ですが吉本ばななさんがブログで「これがヒットするなら人類はまだ大丈夫」と絶賛されていた…

tommy
3年前
6

死にたい人を救うということ

医師一年目に、自殺を試みて生死の境を彷徨った男性を担当したことがある。同業者の中には、そんなに死にたかったなら逝かせてあげたらいいのに、という人もいた。私はただ…

tommy
3年前
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これから浪人が決まった人へ

現役合格を目指していた頃は、浪人とは負け犬の溜まり場で、二浪なんてしようものなら世間からのあぶれ者、変人の極み、くらいに思っていた。現役合格だけを目標とする進学…

tommy
4年前
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産婦人科医の不妊治療体験記③ 採卵まで(OHSSに見舞われる)

産婦人科医の不妊治療体験記③ 採卵まで(OHSSに見舞われる)

「お金と時間と体の負担の無駄遣いさえなければ不妊治療に過程は関係なし、結果よければ全てよしのポリシーで突き進むのみ。」と前回の記事②に書いていたけれど、読み返してみて、私たち夫婦の最優先事項は時間で、「とにかく早く妊娠したい」だった。そのためには手段もお金も選ばない、という道筋だったように思う。

 いざ体外受精を開始するにあたりまずは私の体内の卵子を体外へ運び出すことが必要である(採卵)。
 排

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産婦人科医の不妊治療体験記②  クリニック初診から卵管造影検査まで

産婦人科医の不妊治療体験記② クリニック初診から卵管造影検査まで

クリニックでは子宮頸癌検診から性感染症の検査、コエンザイムQ10やビタミンD濃度まで(専門医試験でも不妊治療の一般的テキストでも見たことないぞ!という様な項目も)あらゆる初診検査を受けた。
(この初診検査の受検と結果説明、治療が必要ならその治療、と2ヶ月近くかかることもあるので不妊治療計画中のご夫婦は余裕を見た受診をお勧めします)

不妊治療のステップは下記の通り。
①タイミング法(排卵のタイミン

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産婦人科医の不妊治療体験記①クリニック初診まで

結婚してもうすぐ一年。キャリアのこと、年齢のことを考えるとそろそろ子供が欲しい…しかし夫婦とも多忙で家では疲れ切っていることが多く、このままではなかなか自然妊娠はできないなーと思った。時間があればじっくり自然妊娠のための妊活に向き合うこともできたと思うけれど、高齢出産の35歳目前。産婦人科医仲間には、高齢だったり多忙だったりで妊娠可能性と高齢妊娠のリスクを検討して結婚後すみやかに不妊治療を開始する

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POLA美術館 ピカソ「青の時代を超えて」展 小さな記録

POLA美術館 ピカソ「青の時代を超えて」展 小さな記録

こんばんは。
先日1人で行ったPOLA美術館 ピカソ「青の時代とそれから」が素晴らしかったので書き残します。
POLA美術館は箱根の山奥にあるガラス張りの透明感あふれる大好きな場所。
冬空の薄いスカイブルーと葉を落とした森を全面に移した美術館に、ピカソの「青」。朝でも夜でもない青(私には夜明け前に思える)、空と海を混ぜた青。そこに落とされる赤の匂い立つような鮮やかさが胸にささる「海辺の母子像」が今

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新婚三十路産婦人科医が「私、子ども欲しいかもしれない(犬山紙子著)」を読んで考えたこと

新婚三十路産婦人科医が「私、子ども欲しいかもしれない(犬山紙子著)」を読んで考えたこと

二十代半ばで産婦人科医になった。
患者はほぼ歳上の妊婦ばかりだった。
初産婦の平均年齢を超えてきた昨年の冬に結婚した。結婚前は、周りの既婚の友達は皆妊娠出産しているし自分もすぐに妊娠しなければいけないと焦っていた。産婦人科医として高齢妊娠のリスクはよく知っていたし。
しかし今、本当にそれでいいのか…今すぐ更なる次のステージへ踏み出すことに迷っている。
想定外のことに、結婚生活にこれまでにない幸福を

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夜行列車で朝を迎えにいく-サンライズ出雲乗車記録-

夜行列車で朝を迎えにいく-サンライズ出雲乗車記録-

横浜での仕事を終えて、1か月前に押さえていた切符を握りしめ、ずっとずっと憧れていたサンライズ出雲号に乗る。

座席はのびのび座席、両隣には中年男性。のびのび座席は頭元だけしきりがあるものの首から下はただの雑魚寝!

妙齢女子として不安は若干あったものの、仕事の早起きと、夜10時まで時間を潰すために中華街とカフェをうろうろして溜まった疲労に飲み込まれ…リュックを枕に秒で寝落ち。写真の足元にあるのが掛

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横浜中華街 極彩色の夏夜の迷宮

横浜中華街 極彩色の夏夜の迷宮

横浜駅から夜行列車が出発するのは22時15分。それまでの数時間、ひとり横浜中華街をぶらぶら歩いた夏の終わりのある日の記録。

悟空茶房でお茶ランチ。凍頂烏龍茶、茉莉花茶、プーアール茶、、台湾茶の数々。台湾の店員により香りまで楽しむ方法が教示され、目の前で淹れられた麗しい茶器で茉莉花茶をいただく。大きなガラスの急須から小さな薄い茶碗に何度もお湯を注いで。おこわと角煮まんももふもふ食べる。台湾茶はシン

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推し、燃ゆ から考えるアイドルの存在意義

言わずと知れた大ベストセラー「推し、燃ゆ」

若干21歳の著者は芥川賞を受賞している。

卓越した表現技巧により描かれるのは女子高生の混沌。自分を思い出してもあの頃は人生で一番苦しかった…世間知らずでモヤモヤ、心身の変化についていけずイライラ、周りに溶け込めずにウツウツ、心が快晴の日なんてなかった。主人公の女子高生がそんな混沌の中で唯一自己表現できて他者と繋がることができる場所がアイドルの追っかけ

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怠惰を許そう 前を向くために

「何もする気が起きないの→暇になる→忘れていた嫌なことが心に浮かぶ→余計憂鬱になる→何もする気が起きない→以下同文」という負のスパイラルってある...先週の自分がまさにそれだった。

この三連休は引きこもってとにかく心と体を労わっていた。長すぎる孤独と退屈は人間をだめにするけど、程よい孤独と退屈は人間にとって必要なものだ。ただただ眠り、食べ、携帯で動画をみて、眠った。こんなに自分を甘やかしたのはい

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韓流ドラマ「サイコだけど大丈夫」に救われた話

このたび、本当に素晴らしいドラマに出会いました。

ドラマはほとんど見ない私ですが吉本ばななさんがブログで「これがヒットするなら人類はまだ大丈夫」と絶賛されていたので興味を持ち、このためにNETFLIXに登録しました。

幼少期に両親を亡くし、自閉症の兄のために自分の欲や感情を一切捨てて精神病院で保護士として淡々と働く青年が主人公です。彼ら兄弟が、パーソナリティ障害ばりばりの空気読めない自己中心的

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死にたい人を救うということ

医師一年目に、自殺を試みて生死の境を彷徨った男性を担当したことがある。同業者の中には、そんなに死にたかったなら逝かせてあげたらいいのに、という人もいた。私はただ毎日彼の全身状態をみてひとつずつ対応するのに精一杯で、彼の生きる意味なんて考える余裕はなかった。自殺者の命を救うのは善か悪か、そんな議論があることも知らなかった。結局、過酷な治療を乗り越え彼は生き延び、自分の治療のために全てを捧げた妻の愛に

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これから浪人が決まった人へ

現役合格を目指していた頃は、浪人とは負け犬の溜まり場で、二浪なんてしようものなら世間からのあぶれ者、変人の極み、くらいに思っていた。現役合格だけを目標とする進学塾や進学校の教育が当時の自分の全てだったから、それも当然のことだったと思う。
誰も、浪人して良かった、浪人という道もある、とは言わなかった。現役合格した優秀な先輩の話はしょっちゅう話題に上ったが、浪人して大逆転劇を見せた先輩の話なんて誰もし

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