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雨の京都

昨秋、エルメスのイベントを目的に京都を訪れたのだが

何と言っても、京都が最も美しい季節とも言える秋だったので、他に訪れた場所も、共有がてら記しておきたいと思う。恐らく多くの人にとってそうであるように、私にとっても京都は、美しくて歩くのがことほか楽しく、訪れることが特別、楽しみな街だから。

京都に到着後、ホテルに荷物を預けると今度はお腹を満たしに早速祇園へ向かった。この日の目的は萬屋よろずやさんのねぎうどん。

言わずと知れた人気店だけれど、開店よりかなり早めに並んだところ、二巡目で入店。この時季の汁物は身体も温まってすこぶる有難い。

エネルギーチャージしたところで、次はくだんエルメスのイベントを心ゆくまで楽しみ、後ろ髪引かれつつも次へと足を運ぼうと外に出ると…予報通り、というかそれ以上の雨模様。一度は進みかけたものの、そのひどさに流石に躊躇してしまい、しばらく雨宿りをしたのだが弱まる気配はない。迷った挙句、意を決して次の目的地へ向かった。

分厚い雲とひどい雨に手鼻をくじかれたこの日

降りしきる雨の中、バスを乗り継いで辿り着いたのは下鴨神社。

LIGHT OF FLOWERS 花と光

エルメスと同じタイミングでヴァンクリーフ&アーペルも京都でイベントを行っており、2021年これを東京で見逃していたのが、ここを訪れた理由だった。

ヴァンクリーフ&アーペル LIGHT OF FLOWERS 花と光

雨のためか人もまばら
ようやく辿り着いたヴァンクリーフ&アーペルの展示

初めての下鴨神社だったが、境内の広さに、点在しているヴァンクリーフ&アーペルの展示を探し出せず、その途中で下鴨神社の秋の美しさに見惚みとれ散策しているうちにあえなく時間切れに。結局展示を見つけられたのは2点のみ。本降りだった雨も神様の元へ着くと諦めたように小降りになり、時折泥濘ぬかるみに足を取られながらも下鴨神社に心奪われた私は、まだしとしとと続く雨の中、紅葉に色付く秋の境内に夢中になりさらに歩を進めた。

その時、ふと思い出した。

数年前に京都を訪れた際、知人のフランス人と会ったのだが、別れ際、彼はこう言ったのだ。

「雨の京都を楽しんでね。僕は雨の京都も好きだよ」

と。日本語で。

ああ、京都はこの外国人の心をも奪ってしまったんだと、そして京都の美しさは万人に通じる普遍的なもので、このフランス人は私の知らぬ京都を多く知っているのだろうと。彼を少しうらやむような…そんな複雑な気持ちと、京都の大学を卒業しここに長く住み、日本語を自在に操るフランス人に日本語でそう言われ、何だか負けたような感覚を覚えながらもその時、実際に雨降りしきる京都を私はそぞろ歩いた。それは4月の雨で、傘を差しながら Kyotographie の会場を周った時だった。私は自分を晴れ女だと思っていたが、こうして回想すると、京都ではどうやら雨に会う - ここでは “遭う” ではなく "会う" と書こう - ことも多いようだ。

灯りがともり始めた境内

下鴨神社は美しかった。私はひとしきり広い境内を周り、閉門の17時過ぎ、神社を後にした。

暗がりの帰り道、前回の雨の京都を懐かしく思い出し、鼻歌を口ずさみながら。

※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者の撮影によるものです。

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