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日々感じたこと、考えたこと、好きな本やアニメ、歌のこと、少しずつ書いてみようと思います…

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日々感じたこと、考えたこと、好きな本やアニメ、歌のこと、少しずつ書いてみようと思います。気軽に投稿することが目標。コメント等でやりとりもできたら更に嬉しいです。

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辻村深月さんの小説に救われて

辻村さんの作品に出逢いひかれたのは、20代になってからだ。10代の読者も多いだろうから、少し遅いほうかもしれない。 10代のころは、本は読んでいたが、一番好きな…

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3年前
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友人

友人と山に登った 白く美しい手 ゴツゴツとしていて、運動が好きで、傷が絶えなかったはずの手だ かすれた小さな声 人のために懸命に声をあげることをためらわなかった…

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2年前
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景色

景色は、遠い。 遠くの景色を見ると、ふっと力が抜ける。 日常生活には、「遠く」が圧倒的に足りていない。 近くの相手に対面して仕事をこなし、 近づく予定に心配事を…

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3年前
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想いの強さ

中学へ向かう、登校の上り坂。歩道橋の陰。締め付ける制服の襟元。 ぎゅっと目をつむって歩いていると、小学校の教室の喧騒が頭の中に蘇り聞こえてきた。このまま目を閉じ…

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3年前
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悲しみの底で

深い悲しみの海がある。 涙の波にのまれ、感情の渦に巻き込まれ、光さえ見えなくなって、暗い海中へ沈んでゆく。 苦しんでもがいても、どうにもならないことの圧倒的な喪…

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3年前
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書くということ

昨年は4月にブログ、次いでnoteを始めました。 以前から興味がありつつも手を出せずにいた、「書く」ということ。 これまでは、少し気になっても踏み込めない、結果を気…

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3年前
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希望を照らし出す作家

愛する人を喪うに等しい体験をしたことがある。 私は小さなころから、うたうことが好きだった。 理由などわからないほど好きで、うたうために生きていた。 すべてのこと…

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3年前
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三浦綾子「塩狩峠」

「聖書に書かれている出来事が“本当”かどうかはどうでもいい。ただ、イエスキリストの生き方そのものに感銘を受けるのだ。」 宗教という言葉からイメージしてしまう胡散…

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3年前
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星の王子さま

「星の王子さまはすてきな人で、いつもにこにこしていた。ヒツジを欲しがっていた。それが王子さまがこの世にいた証しだ」 私が一番好きな言葉です。 でも大人は、それで…

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「100万回生きたねこ」と「100万分の1回のねこ」

佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」という絵本があります。 この絵本に捧げる「100万分の1回のねこ」という短編集を書店で見つけたとき、心がふるえました。なんという素晴…

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3年前
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辻村深月さんの小説に救われて

辻村深月さんの小説に救われて

辻村さんの作品に出逢いひかれたのは、20代になってからだ。10代の読者も多いだろうから、少し遅いほうかもしれない。

10代のころは、本は読んでいたが、一番好きなことではなかった。

他に大好きなことがあった。

それは、歌。

理由などわからないほど好きで、歌うために生きていた。他のすべてのことは待ち時間でしかなかった。電車に乗ることも、本を読むことも、食事をすることさえも、待ち時間だった。

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友人

友人

友人と山に登った

白く美しい手

ゴツゴツとしていて、運動が好きで、傷が絶えなかったはずの手だ

かすれた小さな声

人のために懸命に声をあげることをためらわなかった声だ

山道
土をふむ音
木々の枝からのぞく空

久しぶりに会えてよかった
それだけで

頂上なんて、辿り着く必要はない

景色

景色

景色は、遠い。

遠くの景色を見ると、ふっと力が抜ける。

日常生活には、「遠く」が圧倒的に足りていない。

近くの相手に対面して仕事をこなし、

近づく予定に心配事を抱え、

近くのスマホに埋没する。

近い将来の目標を約束させられさえする。

近くにあるものは、隙間なく、逃げ口なく、心を圧迫する。

遠くの景色を見つめていると、
それだけで、圧迫から解放される。

遠いということ。

それは、

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想いの強さ

中学へ向かう、登校の上り坂。歩道橋の陰。締め付ける制服の襟元。
ぎゅっと目をつむって歩いていると、小学校の教室の喧騒が頭の中に蘇り聞こえてきた。このまま目を閉じ続けたら、次に目を開けたとき、タイムマシンみたいに過去に戻っていないだろうか。今見ている現実が夢だったことにならないだろうか。

そう思いながら歩いていたことを、よく覚えている。

初めから行きたくなどなかった。

地元の公立小学校から、受

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悲しみの底で

深い悲しみの海がある。

涙の波にのまれ、感情の渦に巻き込まれ、光さえ見えなくなって、暗い海中へ沈んでゆく。
苦しんでもがいても、どうにもならないことの圧倒的な喪失感になす術もなく、
やがて、悲しみの底にたどりつく。

そこは、これまでの大時化がうそのように、すっと凪いでいる、一等静かな場所だ。
その透明な景色の中で、夢にまでみた、亡くしたはずのものとの邂逅が待っている。

悲しみを感じること自体

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書くということ

昨年は4月にブログ、次いでnoteを始めました。
以前から興味がありつつも手を出せずにいた、「書く」ということ。

これまでは、少し気になっても踏み込めない、結果を気にしすぎて始められない、ということがほとんどでした。そうすると、何年経っても、いつまでも心の隅にひっかかり、まだやりたいような、諦めたいような、もやもやとした気持ちになる。自分の人生を受け入れて納得する道からは遠く離れてしまう。そう感

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希望を照らし出す作家

愛する人を喪うに等しい体験をしたことがある。

私は小さなころから、うたうことが好きだった。

理由などわからないほど好きで、うたうために生きていた。

すべてのことは、うたうための待ち時間でしかなかった。
電車に乗ることも、本を読むことも、食事をすることさえも。

うたうことは、空を自由に飛べること。
それさえあれば、ずっと生きていけると思っていた。

ところが、二十代になったころ、私はうたえな

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三浦綾子「塩狩峠」

三浦綾子「塩狩峠」

「聖書に書かれている出来事が“本当”かどうかはどうでもいい。ただ、イエスキリストの生き方そのものに感銘を受けるのだ。」

宗教という言葉からイメージしてしまう胡散臭さや、聖書に書かれていることに真実味のなさを感じていた私に、信者の先生が教えてくれたことだ。

そのような視点で聖書を見返すと、少し違って見えた。

そこに書かれている生き方はとても真摯で、魅力的な言葉が胸をうった。
あなたはどう生きる

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星の王子さま

星の王子さま

「星の王子さまはすてきな人で、いつもにこにこしていた。ヒツジを欲しがっていた。それが王子さまがこの世にいた証しだ」

私が一番好きな言葉です。

でも大人は、それでは納得しない。

「王子さまのふるさとは小惑星B612番だ」と言うと納得するそうです。それ以上に大事なことはなく、他には何も知ろうとしないそうです。

数字で管理する。管理すれば知った気になる。誰にでも通じる誰にも意味のない情報を重要視

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「100万回生きたねこ」と「100万分の1回のねこ」

「100万回生きたねこ」と「100万分の1回のねこ」

佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」という絵本があります。

この絵本に捧げる「100万分の1回のねこ」という短編集を書店で見つけたとき、心がふるえました。なんという素晴らしい企画!あの100万回のうちの、大事な1回1回を描いてくれるなんて!

13人の作家さんが短編を寄せていて、それぞれに「100万回生きたねこ」をテーマに、思う存分書かれています。

各短編の冒頭には、作家さんの一言メッセージ

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