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教育のはしくれ

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塾産業の中で教育などと偉そうには言いませんが、父親として息子たちと向き合ってきた一人としての体験と意見。時代的に早すぎた「イクメン」としての背景から、言葉を零してみます。
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#読書

『宗教と子ども』(毎日新聞取材班・明石書店)

『宗教と子ども』(毎日新聞取材班・明石書店)

当然、と言ってもよいと思う。2022年7月8日の安倍元首相銃撃事件から、毎日新聞社に、ひとつの取材が始まった。
 
宗教とは何か。これを問うことも始まった。特にその狙撃犯が位置しているという「宗教2世」という存在に、世間が関心をもった。次第にその眼差しは、彼らを被害者だという世論を巻き起こしてゆく。そして、子どもに宗教を教えてはいけない、というような風潮が、「無宗教」を自称する人々により、唯一の正

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『現代思想04 2024vol.52-5 特集・<子ども>を考える』(青土社)

『現代思想04 2024vol.52-5 特集・<子ども>を考える』(青土社)

曲がりなりにも教育を生業としている以上、「子ども」が特集されたら、読まねばなるまい。「現代思想」は、多くの論者の声を集め、内容的にも水準が高い。そして同じことを何人もが述べるのではなく、多角的な視点を紹介してくれる。「こどもの日」ということで、こどもへ眼差しを向けてみよう。
 
確かに多角的だった。全般的な対談に続いては、「家族」「法律」「制度」「学び」「未来」といった概略に沿った形で、論述が進ん

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『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

キリスト者として、何かしら重荷を負うというものがあるという。どうしてだか分からないが、そのことのために心血を注ぐしかない、という思いで生きるのだ。生きることが、考えることが、すべてそれのために営まれている、という気持ちになる。
 
著者にとり、「教育」がその重荷であるのだろう。しかも、「キリスト教教育」である。キリスト教を信じさせる教育だという意味ではない。教育する側が、キリスト教精神を以て教えて

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『戦争と学院』(下園知弥+山本恵梨編・西南学院大学博物館)

『戦争と学院』(下園知弥+山本恵梨編・西南学院大学博物館)

戦時下を生き抜いた福岡のキリスト教主義学校――そのサブタイトルがタイトルの下に並び、トップには、西南大学博物館研究叢書、と掲げられている。西南カラー(テレベルト・グリーン:百道浜の松の緑と青春そして自由を象徴する)の表紙に、その色合いに収められた、モノクロの写真がある。迷彩状に塗られたロウ記念講堂である。西南女学院である。
 
本書とその企画展が成立したきっかけは、2016年の「創立百周年」のとき

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『評伝 大村はま』(苅谷夏子・小学館)

『評伝 大村はま』(苅谷夏子・小学館)

教育産業に属するからには、教育の理想や公教育の難点などに、口出しするような立場ではないと自覚している。おまけに国語は、以前担当していなかった。それでも、「大村はま」という人の国語教育についての本には、触れないではおれなかった。わずかなものしか読んだことはないが、その信念というものには、圧倒されるものを感じていた。
 
もしかするとキリスト者ではないか。そう感じつつも、ご本人があまりそうした発言をし

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高校受験のための国語

高校受験のための国語

訳あって、昨2022年の後半から、中三生の国語を担当することとなった。もちろん経験はあるが、受験生にとり、受験間際に担当者が変わるというのは、不安になるのではないかと懸念された。私の配慮は、そこに置かれた。受験生の、メンタルヘルスである。
 
その上で、受験のテクニックを、存分に伝えなければならない。しかしこれもまた、ここまでやってきた彼らのやり方を否定して、このようにしろ、と命ずるわけにはゆかな

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