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こころ

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ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
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2022年4月の記事一覧

京都の先輩の話

京都の先輩の話

福岡から、京都の大学に来た私をあたたかく迎えてくれたものは、たくさんある。まず逆の意味から言えば、田舎者の私を騙すような輩に出会うことがなかったのは幸いであった。そのうち、学生を大事にする京都の風土があるのもよく分かった。大学に紹介してもらったアパートは、自炊ができるという条件で探した、古いもので、その分家賃もいくらか抑えられていたが、私には決して安くはなかった。一か月の食費は、家賃の半分で賄った

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『戦争における「人殺し」の心理学』(デーヴ・グロスマン著・安原和見訳・ちくま学芸文庫)

『戦争における「人殺し」の心理学』(デーヴ・グロスマン著・安原和見訳・ちくま学芸文庫)

カントの誕生から今日で298年。その『永遠平和のために』が、NHKの「100分de名著」で取り上げられたのが2016年。それが2022年の、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、4月に一挙再放送となった。
 
カントは、理想的な国家関係を、道徳原理を踏まえた中で提言した。これが後の国際連盟、今の国際連合の理念的根拠となったことは有名である。だが私は、国家関係というよりも、人間個人の心理において、戦争

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手話を使う俳優

手話を使う俳優

興味のない人には全く目にも留っていないだろうとは思うが、SNSの一部で、猛烈なバッシングが起こっている。
 
ろう者でない人がろう者を演じるドラマがあったときに、ろう者がそれをよろしくないと発言したのだ。これに対して、聴者たちが、それはおかしい、と一斉砲撃を始めたのである。病人の役を病人が演じないといけないのか。ゲイでなければゲイの役をしてはいけないのか。つまり、すべての役柄が、その該当者でなけれ

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熊本地震から6年

熊本地震から6年

4月は、いくつか思い起こさねばならないことがある。たとえば、25日の、尼崎列車事故と、この熊本地震である。6年という月日は、そう遠くない過去なのだが、さて、一般の認識は、かなり遠い過去ではないかと案じられる。
 
震度7を3日のうちに2度経験するというのは、記録上ないと言われている。実際の被害もさることながら、心理的な影響はただならぬものと思われる。というのは、京都で味わった阪神淡路大震災の揺れは

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この日

この日

一年前の日のことは、忘れるわけにはゆかないし、忘れることができない。それはとてもナーバスなことなので、逐一ここで明らかにするつもりもない。ただ、リスペクトは精一杯したいので、こうして謎めいた書き方をするという、わがままを致す。
 
日付は容赦なくやってくるし、日付を思うと、あの時にたちまち戻る。忘れたい時に忘れられるなら、人間はどんなに心が楽になるだろう。忘れたいがために仕事に没頭もするし、気晴ら

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