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九月の十七音(俳句)まとめ

緒方句狂くきょう(1903-1948)を御存じでしょうか。
高浜虚子に師事した盲目の俳人です。
三十歳の頃、炭坑事故によって失明。悲嘆に暮れるさ中、俳句と出会い救われていったと聞いています。

露の身の我に俳諧なかりせば  句狂

私に俳句を「読む」機会をくれたのは、句狂の句でした。
最初は仕事として触れたんですけれども、目が見えずとも白杖をつき吟行に出かけていく姿勢に感銘を受けました。

私自身、肺を壊した当初は外出が億劫でした。
酸素カートや咳き込みへの人の目も嫌でしたし。息子との公園遊びも妻任せで、見ているだけの自分が居たたまれなかったんです。
俳句を詠むようになって、少しずつ積極的になりました。
息子が初めて経験している光景を、私も同じように感動して描写しようと思ったり……今では有難い時間です。

風花に追はるる杖の吾が歩み  同

句狂は四十五歳で癌に倒れるまで句作を続けました。
私もライフワークとして、カートと共に出歩き季節の移ろいを実感し詠んでいけたらと思っています。


[九月の俳句一覧]

句歴1年11ヶ月。今は「日常に付箋を貼る」 をテーマに詠んでいます。
日付をクリックすると、当該エピソード(400文字)が開きますので、気になるものがあれば読んでみて下さい。

1日 桐一葉荷造りの箱頂きに
2日 稲妻や背を傘にして配達夫 (☆)
5日 江の島のてつぺんの色なき風よ
5日 経を聞く五百羅漢と秋団扇
5日 折詰のサンドウヰッチや秋の雲
6日 亡き人のマイナポイントちんちろりん
7日 野分晴ソーラン節の一人練
8日 灯火親し多感の頃の日記帳
9日 父の詩と過ごす白露の忌日かな
10日 連れ合って自販機までの小望月
11日 手ブレする子の手を支え今日の月
12日 十六夜や一面に足し算の式
13日 コスモスや手を挙げ渡るカラー帽
14日 居待月妻のコロッケ揚がりけり
15日 ゴダアルを流し見てゐる寝待月
16日 更待に問ふ勝ち負けをつける理由
17日 草の花並ぶ数字の語呂合わせ
18日 ヨギボーに小さな窪み秋の昼 (★)
19日 孫へ向くオペラグラスや雁渡し
20日 呼吸合ふトランポリンの空高し
21日 ぽっこりの腹をつつかれ栗ケーキ
22日 顔見たら元気になつた青蜜柑
23日 宵闇に忘れ得ぬ名の走り書き
24日 笑声は画面の向こう秋湿り
25日 花畑ピカソタッチのママ描く
26日 ぐしょ濡れで啜るヌードル水の秋
27日 秋夕焼指まで舐めるうまい棒
28日 対敵のアンカーは友うんどうかい
29日 朝露や取り出す止めてゐた煙草
30日 流星や明日のための試し履き 

太字 は妻が選んだお気に入り三句です。
五歳息子の特選 ★は、18日 ヨギボー~ でした。
スキ数一位 ☆は、2日 配達夫の句。これは私自身なぜこんな評価されたか分からないでいます。記事?

妻 「十五夜(今日の月)の句は、読んだだけで広がる光景の多さ。声が聞こえそうなところが良かった。うんどうかいは、友がライバルという切なさもあるけど、ノスタルジックな羨ましい関係も見えたので。流星はもう私の思い入れ! 外せません。」

息子「ヨギボーにちっちゃい子が座ったのかなあと思って、それが可愛いと思った。流星もいい。明日楽しみ♪」

今月もありがとうございました。
ちなみに、こちらは先月のまとめです。

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※冒頭で触れましたが――
緒方句狂のことを舞台脚本として書かせていただきました。
『名探偵コナン』阿笠博士役などのベテラン声優&俳優、緒方賢一さん。
緒方さんの実のお父上が、句狂。
当時五歳の賢一坊やの視点から見た「家族の物語」になっています。
公演は11月。詳細を載せておきますので宜しければ。

公演情報 (kir.jp)

劇団すごろく秋公演『令和版 おゆき ~盲目の俳人緒方句狂の杖』



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