かなつん __ʃ⌒ʅ__🖋
日常に付箋を貼ろう、と毎日400文字の日記と俳句(十七音)を作っています。
朗読好きの妻が、自作及びnoteクリエイターの作品を朗読しています。
#ショートショートnote杯 に応募~入賞したのをきっかけに、410文字以内の短編を書き始めました。その自作品をまとめたものです。
2017年に指定難病「皮膚筋炎」翌年「間質性肺炎」と連続して発病し3年間入退院を繰り返してきました。気持ちの整理がついた今、入院中にしたためていた日記を再構成して文章にしていこうと思います。 ※プライバシーに配慮し自分のこと以外はフィクション化しています。
日記を書き出したのは五年前。入院中の病床でした。 就寝前に「一日の感謝」を考え、朝起きて「思い」を吐き出すと前向きになれると聞いて、実践したんです。 それが「400文字と十七音」に繋がる原点。 今月は五日ほど空白がありました。正月を除けば初めて。 「もうやーめた」って一瞬思ったり。 「何のために続けてんだ?」って気持ちにもなったりして。 五歳息子が「しまじろうのタブレット学習」をする姿が目に入りました。彼はこの三月から一日も欠かさず続けています。 「すごいね」と言っても、
暑さが落ち着いた午後。 「ツクツクボーシ」と夏の終わりの蝉が鳴く。 ちなみに私はこの後続く「イーヨ、イーヨ、イーヨ」の余韻が好き。分かります? 妻がおさんじにハーゲンダッツを買ってきた。 「期間限定でこんなの出てたよ」 ピスタチオ&ミルク ――食べたかったやつ! 夫婦共に一番の「ほうじ茶ラテ」を超えるか期待が高まる。 一口……超えた。美味すぎ! 私史上№1アイスを思い出す。GROM(グロム)のピスタチオジェラート。新宿三丁目にあった店。高かったなあ。一個700円位したっけ
近隣に出来たと聞いて一人訪れた。 我が青春の味「天下一品」。 最後に食べたのは、演劇サークルの同窓会に出た十年前。 仲間たちと「こってりは重いかな」と言いつつ完食した。 今回はどうだろう? 言わずと知れたドロドロスープ。 苦手な人は駄目らしいが、私はこれが大好き。 演劇学生の頃に出会い、虜になった。 「劇団はラーメン屋。当たり障りのない味で世に出れようか」 世の中を知らず、我こそ演劇界の「天下一品」とイキっていた時代……恥。 よく見ると、思い出とは違う店内。 家族連れも
妻と晩酌。あてに枝豆。 普段は地元産「湯あがり娘」推しの私たち。 今夜はデパ地下で安売りしていた群馬産「天狗印」。 これが殊更に美味しかった。 「冒険してみるもんだね」 食に関して保守的な妻もご満悦。 ――ならば、と。赤ワインに移行した彼女に最近知ったレシピを教えた。 「カクテルみたい」とほろ酔いの増す妻。 くいくい飲んでおかわりまで。 ノンアルで付き合う私もマイブームのドリンクに切り替える。 昔、ドリンクバーで「コーラ + 烏龍茶」を発見し、多くの知人に紹介した思い出
休み明け、保育園に行きたくない五歳息子が愚図る。 ――ほら、靴履いて。パパもごみ捨てに行くから。 急かすように促し、先に玄関を出た。 朝から蒸し暑い。 蝉の声が「カナカナ」に変わったのがせめてもの救い。 「ちゃんと歩いて。ママ怒るよ」 ママが先を行っても、ギアは上がらない。 とぼとぼ牛歩の息子。 私はごみを捨て、マンションを出た道路で待った。 彼を励ます声掛けの言葉を探す。 と、「いってらっしゃい」の声。 振り返ると、マンションの二階に住むご婦人。 ベランダにたくさんの
休み前に妻が社販で買ってきた桃。 デパートのだけあって色も形も完璧。 なにより匂い。持ち帰った瞬間から魅惑を放った。 男軍団(私と五歳息子)はたまらず「食べたい!」 妻は「まだ固いから」と棚に。ぐぬぬ。 お預けは二日続いた。 「そろそろどう?」 朝食後に満を持して切り出す。もう我慢ならん。 妻は「あ、忘れてた」と言い(マジかっ?)、 「じゃあ冷やして夜のお楽しみ」と嘯く。 ぬぬう。まだ焦らすかお主。 冷蔵庫を開けるたびに漂う甘さ。 息子は意味なく開閉し「これだけでも幸せ」
妻の母方のお墓参りへ。 この数年、私は病もあって行けてなかった。 逆に五歳息子はママの墓参り好きに付き合ってきて、勝手知ったる道。 うろ覚えの私を案内してくれる。 台風一過。 午前中も既に日差しはギラギラ。 日よけのない墓地は歩くだけで体力を奪われる。 手桶の水を汲んで往復するだけでヘトヘト。 息子が墓洗いを率先してやってくれた。 ママはお墓にいる先祖の説明を。 「大じいじ、大ばあば、二人の長男で五歳で亡くなった子だよ」 同い年というのが気になったのか。 息子は線香をあ
昨年九月八日に父は亡くなった。 新盆。ただ一周忌が近いこともあり帰省はしなかった。 父は寂しかったかな? 「気配は感じない。どこか遊びに行ってんじゃないかしら」 スピーカホンの母が言う。「大雨なのにね」 母は仏壇に好物のコーヒーと甘納豆を供えて待っていたという。 父はどこに行ってんだろうか。 趣味だったカラオケ。父の歌声の入ったテープも流していたそう。 「前にかけたやつ?」 五歳息子が反応する。葬式の時を覚えているみたい。 父も思い出して、久しぶりに歌いに行ったかな?
五歳息子との悲願、かつ丼を食べること。 赤ん坊時のアレルギー検査で「卵」に強めの陽性が出た彼。 克服すべく提案されたのが経口免疫療法。 耳かき一杯ほどの黄身から少しずつ食べる量を増やしていく。 妻と息子の闘いは離乳食が始まるや毎日続いた。 三歳、初めてゆで卵を丸々一個食べられた時の妻の喜び。 四歳、保育園で皆と同じパンになった時の息子の喜び。 ――パパはな、いつかお前とかつ丼が食べたいんだ。 先日の検査で見事「陰性」となった。もう恐れることはない。 今宵、地元のとんかつ
「お風呂に入れて良かったね」 「あたち、二年ぶりでちゅ」 洗面所にぬるま湯を溜め、おしゃれ着洗剤を二滴。 ぬいぐるみを入れてやさしく押し洗い。 顔の部分を水面より上に出すのは、声担当の私に情が移っているから。 「気持ちいいでちゅ」 洗わなきゃと思っていた。 特に五歳息子が妹のように接している「はなちゃん」は汚れが目立つ。 先日、息子のアレルギー反応検査で「ハウスダスト」が陽性となってハッとした。 「あたちのせいかしら……」 物干しに、はなちゃんを吊るす。 時折、強い風が
「猛暑と酷暑って違うんだよ」 五歳息子が話している。 ママが「同じでしょ?」と言っても「違うよ」 助けを求め私に振った。 「俳句に詳しいパパは知ってる?」 逃げ場を失う。普段から「季語、季語じゃない」と知った風の私。 「分からない」は存在意義の全否定← 「酷暑の方が……より過ごしづらい時に使うね」 「違うよ」と息子に即否定されカーッとなる。何が違うの? 「えっとね……」言い淀んでいる隙にスマホ検索。 冒頭記事を読み流すと「どっちも同じ」とある。なんだよ。 「温度が……
草稿、初稿、改訂稿と書いてきた台本。 ついに「決定稿」となり脱稿した。 私の仕事はここまで。 今秋公演予定の小劇場の台本。 フォルダにある草稿の日付は、20年6月とある。 ずっと取り掛かっていたわけではないけれど、二年以上かけた計算。 延期延期が重なりそうなった。 With なんたらでも経済やエンタメを回したい。 一方で持病を考えると、自分はそこから取りこぼされてる感も。 今や打ち合わせは全てがリモート。 「モノ言う作家」として稽古場でウザがられていたのが懐かしい。 現場
180㎝、80㎏が保育園では小さくなって歩く。 未だに酸素カートをコンプレックスに感じでいる私。 昨夕のお迎え時。 玄関の隅でタイヤを拭いてると、三歳位の坊やが近寄ってきた。 「ニイちゃん、かっこいいねえ」 耳を疑うおっさん口調。 「俺もいずれ、そういうの持ちたいって思っとんよ」 ――お、おう。病気のやつだけどな。 完全に飲まれていた。利いた返しも出来ない。 「ごめんなさい、こういう子で」 母親が駆け寄って男の子をたしなめる。 「ちょっと持たせてや、ニイちゃん」 教室までカ
観覧席が賑わう。 多くは母親。時折家族連れ。中にはじいじ。 発表会ではない。スイミングスクール初日の朝。 私も最前列を確保し、五歳息子の登場を待つ。 直前でママに半べそをかいたそう。「帰りたい」って。大丈夫かな? レッスンスタート。 私の位置とは反対側のプール。えー全然見えない。 一番後ろで話を聞いてる……あれが息子? 別れ際、不安がる彼と二人だけのハンドサインを決めた。 「もうやだ、助けてパパと思ったら人差し指を立てろ」と。 指なんかまるで見えない。 目のいい妻が「笑っ
瞬間、声が消えてゆく。 情報が遮断され目の前の光景のみに集中する。 そんな、音のないシーンが美しかった。 今年のアカデミー賞作品賞。アマプラで配信中と知り視聴した。 噂にたがわず三回は落涙したかな。 大事な場面こそ台詞を喋らせない徹底ぶり。テーマである「聞こえない」「理解しづらい」演出が効く。 主人公が先生に「歌っているときどう感じている?」と問われ答える場面。 父が劇場で娘の歌の実力を、聴衆たちの表情から知ろうとする場面。 娘の歌(&心の声)を喉に、体に手を触れて聞こう
もう会わないと思っていた。 今年は住む場所を変えたのではと。 なのに…… 酷暑和らぐ一日となった夕方。 妻と懸念だった庭の草むしりをした。 抜き終えた草を袋に入れようとして気付く。 妻の腕に……あっ 言うが早いか私の手が反応。ペシ! 命中。 潰れ落ちる残骸。血は吸われてない様子。 ヒーロー気取りで妻を見やると、果たして間男を庇うような顔で言った。 「駄目なんだよ、途中で殺しちゃ」 耳を疑う。……なんで? 「なんか……今の時代は」 理不尽に傷ついて草むしりを終えた。 リ