厨よりうどんの匂ひ春の風邪
どこからか懐かしい匂いが漂ってくる。
青年はベッドの上で目を覚ました。
朦朧としたまま自分の額に手をやる。
どうやらピークは越えたよう。
……大事な日の前にはいつも熱を出す。
独り言ちながら、ふと、ある記憶を思い出した。
自身六歳。保育園生活も残りわずかとなった日。
園で三十八度の熱を出し、母が慌てて迎えに来てくれた。
そこから二日間「保育園行きたい」と泣きながら訴えた思い出。
熱よりも最後に皆と会えないことの方が辛かった。
何も食べないと駄々をこね、父が作ってくれたうどんにも手を付けなかったっけ。
「ごはん食べれそう?」
母の声が聞こえ現実に戻る。
そう、昨日から実家に戻って来ていた。
「お父さんがうどん作ったの。シンが熱の時はこれだって」
思い出と重なり苦笑いする。
と、リビングから父の声がした。
「おーい無理するな。なんなら明日、俺が代わりに出るから」
青年は母と目を合わせ、
「ミヅキは僕と結婚するんだよ」
と叫んで、ベッドを飛び出した。
(くりやよりうどんのにおいはるのかぜ)
※日記から妄想炸裂の小説 に変換しました。__🖋
にしても、良かった。息子は今朝より登園可能になりました。
今日明日と最後の二日間。楽しんできて欲しいな。
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