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押し花にせしあの花の雨の夜

その夜、瑞月みづきは自室にいた。
窓には雨音が聞こえている。
明日は晴れてくれるといいのだけれど……

たった今、父と母に挨拶を終えたばかり。
笑顔の母に比べて父は……泣いていたのだろうか。
「いい人と出会えたな」と言ったきり俯いてしまった。

瑞月は机の引き出しから宝箱を取り出した。
数年ぶりに蓋を開く。
中には――桜の花の押し花。

あの日のことを昨日のように思い出す。
自身六歳、保育園卒園間近のある日。
自宅の庭に生えていたつくしを摘んで、「彼氏」と呼んでいた慎太郎君にプレゼントした。
数日後、彼から「お返し」と言ってくれたのがこの二枚の花びら。

「江戸川の土手で拾ったんだ」
「私にくれるの?」
「パパがミヅキちゃんにもあげたらって……」

雨に濡れないよう、折り紙に挟んで大切に持ち帰った思い出。
「彼は覚えてるかしら?」
ふと、いたずら心が芽生えてくる。
瑞月は蓋を閉じると、明日持っていく指輪の横にその箱を並べた。


(おしばなにせしあのはなのあめのよる)

季語(晩春): 花の雨、花時の雨



※日記からだいぶ妄想炸裂させて小説 にしました。そろそろ治療休暇が必要かもしれません。。。__🖋


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