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月は自分が「欠けている」とは思ってないわけで……

夜の十時半。
ベランダで月写真を撮る。
満月から五日。だいぶ欠けた月は「更待月ふけまちづき」と呼ばれる。

「僕も見る」 
寝室から五歳息子が起きてきてしまった。
「早く戻ってね」 妻からはチクり。
そう、息子は明日、運動会の予行演習がある。

「全然、まん丸じゃないね」
――俳句の人はこれが好きなんだよ。
男二人、座ってしばしの月鑑賞。
妻が気になり「そろそろ」と促す。

と、息子が「運動会嫌いなんだ」とポツリ。
なんで? 「リレーをするから」
年長組のメインじゃないか。「勝ち負けが嫌いなんだよ」
練習でも負けると泣く人が出るらしい。それが堪らないんだとか。

月を仰ぎ見た。
根源的な問い。なぜ人は勝敗をつけるのか。
一方で、並んでゴールする徒競走の味気なさも頭をよぎる。

「だからねパパ……僕は将棋が嫌い」
唐突さに戸惑う。そこに着地する?
確かにいつも断られてるけれども。
「おやすみ」と帰っていく息子。

私は何も言えず……負けた気分で立ち尽くした。


更待に問ふ勝ち負けをつける理由

(ふけまちにとうかちまけをつけるわけ)

季語(仲秋): 更待月、更待、二十日月 ……旧暦八月二十日の月。夜が更ける頃まで待つ月の意。


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