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キョウコのことは忘れない……
運動会閉会の挨拶。
五歳息子が一節を担当することになった。
上手くやれるかの緊張と、指名された嬉しさが同居する。
「僕のが一番長いんだよ」
――やってみて。
「今日のことを忘れずに、これからも頑張ります!」
気を付けの姿勢で声を張り上げる。……ん? 待って。
「今日のこと」が「キョウコのこと」になってる。
指摘するとツボったのか、ケタケタ笑いだす息子。
やり直すもまた出る「キョウコ」。居なくなってくれたのは四回目。
「どうしよう、本番でキョウコが出てきたら」
――いいじゃん。会場にいるキョウコさんは嬉しいと思う。
息子の成功より、ハプニングを求めるいけない父親。
妻が「変なこと言わないで」と私を睨む。
「だいたいキョウコって誰よ?」
変な方向へ向かったので閑話休題。
妻が保育園連絡帳の続きを読み上げる。
「今日子どもたちが感じたことを……」
直筆で読み辛かったか。
区切りを間違えてまたも「キョウコ」の呪いが。
息子の笑いは止まらないケタケタケタ……
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宵闇に忘れ得ぬ名の走り書き
(よいやみにわすれえぬなのはしりがき)
季語(仲秋): 宵闇
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