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落ちる瞬間

夕方、宅配業者が集荷に来た。
実家に送る一周忌の礼服や革靴等。
家族三人分でかなり嵩張っている。

――結構大きいですよ。
台車もなくやってきたお兄さんに伝える。
「あはは。いやあ大丈夫です」と余裕。
鍛えた筋肉がユニフォームの下でぴくっと動いた。

いや、心配なのは雨の方。
ビニールで覆わないと段ボールが……
――かなり降ってますけど?
やんわりと再確認する。
「あはは。いやあ大丈夫です」
その圧倒的な自信はどこから?

「ではお預かりします」
体育男子は私の目をまっすぐ見て言うと、体全身で荷物を包み込むように運んで行った。
マンションの玄関まで追いかける。
――よろしくお願いします。
大きな背中に声を掛けると雨中振り返って会釈……なんて律儀な人。
トラックまでの間、彼を見つめた。すると――

ビカッと雷光!

劇画的な光景に思わず身震いする。
激しさ増す雨音と重なってなんだろう、私は久しくなかった感情と出会った。ゴロゴロドーン。
……おっさんだけど。


稲妻や背を傘にして配達夫

(いなづまやせをかさにしてはいたつふ)

季語(初秋): 稲妻、稲光、稲つるび


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