それ、お隣さんちの!
「奇麗!」
最初に声を上げたのは五歳息子。
「すごいね」と妻が続く。
カメラを取りに行った私は遅れてベランダに。
中秋の名月。
雲なき空にぽっかりと。いや美しい。
息をのみ、しばし立ち尽くした。
「写真撮らないの?」 息子に言われハッ。
モニターに月を捉えてズームアップする。
高性能レンズはその美しさをより鮮明に見せてくれた。カシャ。
「僕もやりたい」
カメラを息子に渡しコツを伝授。
――先ず引いて月に合わせてからアップね。
しかし途中で手がブレて月を逃してしまう。
三脚なしでは難しいかな?
何度かチャレンジして……カシャ。
「パパ、見て」
撮れたか! ……ん? これ、お隣さんの玄関ライトだ。
指摘にケラケラ笑いだす息子。
一緒に撮ろうと手を支えたが、もはや体が揺れまくって駄目。
「二人で楽しそうね」
お団子を取りに行ってた妻が顔を出す。
「ママ、見て。僕が撮ったよ」
カメラを差し出す。
ママは反射的に「うわあ、素敵」と言ってしまった。
手ブレする子の手を支え今日の月
(てぶれするこのてをささえきょうのつき)
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