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わらしべ長者 観測報告 ~2時間でチュッパチャプス1本が何になったか~

令和が始まり、早くも2ヶ月が経過しました。令和直前に行った平成最後の日 観測報告では、令和になったからといって自分の生活は変わらないと確信する人々の姿を確認しました。時代は元号ではなく自分たちが築いていくのだと、改めて思い直すことができる観測結果となりました。

では、元号が変わっても変わらず生きていく現代の私たちの社会において、人はどのような価値観を持って生きているのでしょうか。たとえば、モノの価値はいったいどうなっているのでしょう。

たとえば、価値を図る物差しの1つとして「お金」があります。お金は、まったく異なるモノやコトを含めたあらゆる事物を交換していくための価値交換装置として社会に存在します。ただ、現代という価値観が高度に多様化・細分化した時代において、個人が大好きな物や体験が必ずしも高額とは限りません。それ無しでは生きていけない位大好きなのにも関わらず、少額の金額で購買可能な場合もあるかもしれません。お金という物差しだけで、価値の大きさを測ることの難しさを感じます。

では、「お金」を介さない形で直接モノとモノの価値を比べてみるとどのようなるでしょうか。物差しの無い状態で異なるモノ同士を比べることは困難さを伴いますが、「交換」が成立するかどうかは端的に等価の目安を示してくれそうです。

「交換」の基本は、「等価交換」です。しかし、一本のワラから物々交換を繰り返し、大金持ちになったという童話「わらしべ長者」を理解するには、モノ同士の等価交換という枠組みだけでは成立しないようにも思えます。

■パターン1:付加価値がつく場合
モノとモノとの交換に「付加価値」がつく交換がなされる場合。何か特別な体験などの付加価値をつけることで価値がプラスされ、モノ自体の価値が上積みされた状態で交換してもらうことができます。

■パターン2:giveをもらう場合
交換相手がgive精神を持っている場合。相手が提供してくれるモノを価値を割り引いた状態で交換してもらうことができます。

あくまで金銭を介さないモノとモノの価値交換においては、すべての価値が流動的ではありつつ、それぞれが認める価値提供に「付加価値」と「give」の要素が介在しながら価値交換されていくだろうことは推察されます。

はたして「わらしべ長者」というドリームは、現代でも成立するのでしょうか。たとえば、1本のチュッパチャプスが交換されるとき、人は何を想い、何と交換してくれるのでしょうか。

「これは実際に試してみなければ!」ということで、元YouTuberで動画クリエイター/プランナー保田 淑希(やすだ よしき)さんに現代のわらしべ長者に挑戦いただき、その様子を観測することにしました。

人気YouTuberユニットに所属していた保田さんですが、結婚を期に新たな道を模索してユニットを卒業。

これから、家族を養うためにも様々なチャレンジをしていくとのことで、「家族を養うためにもわらしべ活動で、裕福になりましょう!」という軽率な呼びかけに応じていただきました。

保田さんも大好きなチュッパチャプス。果たして、物々交換を繰り返す先に何が待っているのでしょうか。

観測の実施日は、6月2日の日曜日。週末の賑いを見せる渋谷にて、2時間のわらしべ活動の観測として行っております。

■1交換目

■1交換目:
チュッパチャプス ⇒ ポケットティッシュ(キャラクター入り)

交換できるものを探してもらった結果、出してもらったのが「ポケットティッシュ」。子どもに人気のキャラクターが入っていて楽し気です。

「チュッパチャプスと交換してよい程度のもの」を探してもらった中で、こちらを交換してもらうこととなりました。

■2交換目

■2交換目:
ポケットティッシュ(キャラクター入り) ⇒ ボディコロン(使いかけ)

企画を面白がっていただき、カバンや財布のような「金額的価値が高価すぎないものの中でもっともよい「ボディコロン(使いかけ)」をポケットティッシュと交換していただくことができました。

保田さんのテンションがあがっています。

■3交換目

■3交換目:
ボディコロン(使いかけ) ⇒ マッキー(8色)

学生の男子グループに声をかけたところ、快く応じていただき、「マッキー(8色)」をボディコロン(使いかけ)と交換してもらうことができました。

ボディコロンもよいものなのですが、8色のマッキーは「色々描けて楽しそう」とのことで、保田さんは喜んでいました。また、交換いただいた方も「使います!」と宣言いただき、とてもハピネス溢れる交換の場となりました。

■4交換目

4番目の方は女性2人組。YouTuber時代の保田さんを知っていたこともあり、カバンの隅々まで探してくれました。

■4交換目:
マッキー(8色) ⇒ ハンディ扇風機

探していただいた結果、「スマホは無理」という前置きがありつつ、「ハンディ扇風機」をマッキーと交換してもらうことができました。ここに来て、これからの時期にぴったりのアイテムを提供いただきました。

このハンディ扇風機、ライトがつくという仕様も備えており、「夜に使ったら楽しそう」と期待感あるアイテムでしたが、次のわらしべ活動で交換されてしまい、残念ながら夜にライトのついたハンディ扇風機を試すことはできなくなってしまいました。

交換というものは何かを得て、何かを失うということなのだと、すぐに痛感することになります。

■5交換目

広島出身の学生の方が、リュックの中身を奥の奥まで確認してくれました。

■5交換目:
ハンディ扇風機 ⇒ ジャージパンツ

探してもらった結果、「サイズが小さくなってしまったジャージであれば是非」とのことで、コンバースの「ジャージ」をハンディ扇風機と交換することができました。

保田さんのサイズにもぴったりとのことで、「自宅で履ける!」と意気込みを見せてくれていました。

この時点で残り15分。その後もわらしべ活動で声がけをしましたが、「サイズ」が合わなかったり、「使用済」かつ「男性用の衣服」というアイテムの特性が女性からの敬遠を受けたりしたことを理由に、交渉は成立しないまま15分という時間が経過していきました。

そして、2時間のわらしべ活動は経過し、本観測は終了となりました。

■総括

■1交換目:
チュッパチャプス ⇒ ポケットティッシュ(キャラクター入り)
■2交換目:
ポケットティッシュ(キャラクター入り) ⇒ ボディコロン(使いかけ)
■3交換目:
ボディコロン(使いかけ) ⇒ マッキー(8色)
■4交換目:
マッキー(8色) ⇒  ハンディ扇風機
■5交換目:
ハンディ扇風機 ⇒ ジャージパンツ

結果だけを見ると、2時間で「チュッパチャプス」が、「ジャージパンツ」になったことになります。

それぞれの交換における絶対的条件である自分が現在持っているものしか提供できないという制約の中で交換が行われた結果となります。

交換ごとの評価を行う際、価値があがったのか、下がったのか。それはどの程度か。交換する人の視点によって、まったく違ったものになりそうな印象があります。

「ボディコロン⇔マッキー」の交換も人によって価値がまったく違うものになりそうですし、「ジャージパンツ」はおそらく定価での金額価値ではもっとも高い金額になりそうな反面、「他人が履いていた衣服」であることの価値の減損を大きく捉え、交換しづらいと感じる人も多くいることが推察されます。

「価値」というものが決して絶対的ではなく、人と人、状況によって定まっていくものであるということが、改めて実感を持った形で確認できたのは、本観測における一番大きな収穫といえるかもしれません。

時間帯、場所、誰がやるかによって、この交換されていく質感はおそらく変わっていくことが推察されます。追加調査が可能となった際には、またご報告をさせていただきます。

また、当日の模様は下記の動画でも観ることが可能なので、お時間のある方はぜひご覧ください。

何かしら皆さんの世の中の考察の参考になれば嬉しく思います!
ご意見、ご感想、諸々のお誘いなどもお待ちしています!


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トライバルメディアハウスという会社でコミュニケーションデザインのお仕事をしています。リアルな街や、Twitter・InstagramなどのSNSなどの観察を通じ、人間と文化の研究を進めていきます。
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