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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2022年5月の記事一覧

ひま

ひま

 

高校時分、テスト監督をしている先生が羨ましくてならなかった。不勉強を悔いながら出来の悪い頭を必死に働かせて問題を解いているのに、いかにも暇そうに窓の外を眺めたり、椅子に腰掛けてぼんやりしていたり、中には野球の投球フォームをしてバランスを崩してひっくり返ったりする先生もいたが、いずれにしても、どの先生ものんびりと心地よく自由時間を楽しんでいるように見えた。
あんなご身分になってみたいと夢のよ

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女子という言葉

女子という言葉

最近テレビなどで結構いい大人が「女子」という言葉を使っているのを耳にすることが多く、気になる。

僕のイメージの中の「女子」は、例えば学校で使われる言葉で、対象としても、その年代の女の子を指すという漠然とした感じ。

ただ、例えば『日本国語大辞典』を引いてみると、
①おんなのこ。むすめ。にょし。
②おんな。婦人。婦女。女性。
とあって、確かに「女の子」だけの意味ではないことが分かる。

そう思って

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豚は武器を持たない

豚は武器を持たない

土日は部活(テニス)のインターハイの県予選だった。

土曜は雨の中、びしゃびしゃになりながらの試合。10時過ぎに土砂降りになり1時間弱の中断。ごった返しの会場では避難場所もなく、傘をさして立ったまま待機。これって「確実に密」って感じである。

やっと再開した試合の最中に再び土砂降りの雨で再中断。靴の中はぐちょぐちょ。それでも一回戦だけは何としても終えたいという主催者の意向で、30分ほどして再開。で

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空気

空気

随分昔の話であるが、僕らが結婚した当初、僕らにはテレビがなかった。正確に言うとテレビはあったのだが、何の理由かそのテレビが映らなかった。それでつれづれな夜はラジオを聞いて過ごしていたのだが、これが意外になかなか楽しい日々だった。

今思い出せるのは太川陽介と榊原郁恵がやっていた音楽番組と一週間か二週間の長さで毎晩語られる連続物語である。いくつかを毎晩楽しみに聞いていたのだが、今となっては覚えて

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逆上がりができない生徒の気持ち

逆上がりができない生徒の気持ち

平成10年10月10日。10のいっぱい並んだなかなか味な日だったが、実はこの日は僕が自分のバイクを手に入れた記念日。

もっとも、カミさんと職場に20万円ずつ借金したのであって、以降僕は月々の小遣いから1万円を職場に返し、かつ20万円を貯めてカミさんに返さなければならないという地獄に陥った悪夢のような日でもあったが。

早速、丹沢まで出掛け秋の空気を吸い込んで来た。憧れのバイク。風を直接体に受け

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第47話:親という夫婦

第47話:親という夫婦

オヤジとオフクロは詰まらぬことでよくケンカをしていて、正月に帰省するたびに、それぞれがそれぞれの愚痴を僕らにのたまった。

聞いている僕らにとってそれは結構に辛辣な言葉として響く種類の「お言葉」なのだが、当の本人達は極めてあけすけに、何の陰気さもなく、お互いに聞こえようが聞こえまいが構わずに言いのけている。

息子たちやその嫁たちを媒介にして夫婦喧嘩などしなくてもよいとは思うのだが、そういう大人げ

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禁煙

禁煙

煙草を吸い始めたのは21歳の時だから、煙草との付き合いは長い。日にコンスタントに一箱を吸う一応の愛煙家である。ここ数年で日本は急速に嫌煙時代を迎えつつあり、それらが年々その市民権を拡大させ愛煙家の立場は非常に苦しいものになって来ている。

昔は職場でも平気で机で吸っていて、妊婦だっていたのだが、職員室は煙が層をなしてたなびいていた。今から考えてみれば、恐ろしい時代であったのかもしれない。

自主

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多様性について考えてみたこと②

多様性について考えてみたこと②


ただ、僕は、そうした考え方の広まりや営みを画期的な革新と思いながら、一方で、この「多様性」という言葉に「ひっかかり」を感じてもいる。

それは、簡潔に言えば「多様性」という言葉が聖域化して、犯してはならない禁忌のようなスローガンになりつつあるように感じられることへの生理的な抵抗感かもしれない。


具体的に言えば、ひとつには、多様性ということがどこまで広がり得るのかということへの疑問である。

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多様性について考えてみたこと①

多様性について考えてみたこと①


LGBTの問題は僕の勤務する田舎の学校にも波紋をもたらすようになってきていて、数年前に「女性の身体を持つが心は男性である」生徒を迎え入れることになった。

学校というところは、最も若い世代が住む空間であるが、世相への対応は概して遅いと言えるかもしれない。一般企業の実情を知っているわけではないが、社会の最後尾を歩いている感じがしないでもない。

保守的と言えばそうも言える。好意的に言えば、それは

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やる気のないゆるさが大好きでした

やる気のないゆるさが大好きでした

退職前に新聞部の生徒から「教員人生を振り返って!」と言われたので、自分の過去を振り返ってみた。

子供時分から、成績も悪く、いたって不器用。だから高校時分も、つまづかなくていいことにもつまづき、人間について考えたいと文学部に進んだ。

教員になったのも、カッコよく社会の歯車になりたくなかったと言ってみたいが、そうはなれなかったというのが実際のところ。

勤めてからも大概はつまづいていて、普通高校2

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