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こどもの読みもの

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こどもにおすすめの本。 かつて、こどもだった大人におすすめの本。
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#読書メモ

白雪姫

白雪姫

グリム童話集(1812)にはメルヒェン201話と子供聖者伝説10話の計211話が収められているが、151番が重複して2話入っているので、正確には全210話となる。そのなかで「魔女」が登場するのは20話、「男の魔女」の話は5話あり、それを入れると魔女が登場するのは25話になる。男の魔女という表現は奇妙であるが、現実の魔女裁判では男にも子供にも「魔女罪」が適用されており、男の魔女、子供の魔女の存在が確

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家守綺譚

家守綺譚

梨木香歩 2004

・・・学士「綿貫征四郎」の著述せしもの。・・・

一軒家で生活を始めた。私の学生時代の親友「高堂」の実家である。高堂はボート部に所属していた。山一つ越えたところにある湖でボートを漕いでいる最中に行方不明になった。高堂の父親から隠居するので家の守をしてくれないか、と持ちかけられたのだ。ある風雨の日、ガラス戸がガタガタカタカタと激しい音がする。庭のサルスベリが顔を押し付けるように

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耳

『 耳 』

ジャン・コクトー
堀口大学 訳

私の耳は貝のから
海の響をなつかしむ

ジャン・コクトーは二十世紀の初頭から半世紀以上にわたって、
芸術のあらゆる分野で前衛的な活動をした人です。
その活動の根底には、いつも「詩」がありました。

この作品は
『Poesies 1917-1920』
“Cannes”と題して収められた六つの短章の五番目のものです。

富豪の子であったコクトー

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龍の子太郎

龍の子太郎

松谷みよ子 1960

山間の貧しい村にお婆さんと「太郎」と呼ばれる子供が住んでいました。山の動物や笛吹きの上手な女の子「あや」と遊んでばかりいる怠け者でした。ある日、寝込んだお婆さんが太郎に母親の話をします。樵だった父親は太郎の生まれる前に死んでしまったこと、母親の「たつ」は村の当番で山に行ったまま「龍」になり、たつが産んだ子供が太郎であること。そして「強く賢い子になって会いにきてほしい」と言い

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サロメ

サロメ

オスカー・ワイルド
1891年にフランス語で書かれる。1893年にパリで出版。

その夜はユダヤ王「ヘロデ」の宮殿で宴会が催されていた。
この様子を露台にもたれ掛かって見ていた兵士達は、王女「サロメ」の美しさ、「死んだ女」の面影にそっくりの月、宮殿の外の騒がしさなどから、今宵は不吉なことが起こるのでは、と不安を抱いていた。

そこへ、義父「ヘロデ」を避けた「サロメ」が宴席を抜け出してきた。
ユダヤ

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シンデレラ迷宮

シンデレラ迷宮

「シンデレラ迷宮」

1983年6月 集英社文庫 コバルトシリーズ
(続編「シンデレラミステリー」1984年3月)

氷室冴子

今日は、何か重要なことがあるはずだわ。
誰かが起こしに来たら、どうするのよ。
あら、やだ。ほら、誰かが肩を揺すってる。
「ったく、ぐーすかぐーすかと、いつまで寝呆けてるのよ、このガキは!
とっとと起きなってんだ。おら、聞こえてんの⁉︎」
誰かが、起こしに来たんだわ。起き

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「猫檀家」 日本の民話

「猫檀家」 日本の民話

昔あるところに、寂れた山寺がありました。山寺の和尚さんは、年老いたトラ猫と居眠りばかりして暮らしていました。ある日のこと、トラ猫がいきなり人間の言葉で「お礼をしたい」と言いだしました。「もうすぐ長者の一人娘が亡くなる。」しばらくするとトラ猫の言った通り、長者の一人娘が死んでしまいました。悲しむ長者が葬式をあげていると、式の途中で棺桶が空中に浮き上がりました。どんなに騒いでも、僧侶達が拝んでも棺桶は

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オズの魔法使い

オズの魔法使い

The Wizard of Oz
ライマン・フランク・ボーム 1900年

少女ドロシーが住むカンザスは「灰色の大草原」。畑も灰色なら、家もペンキが色褪せて灰色。そこへある時、空がいつもよりもっと灰色になり竜巻が襲ってきて、ドロシーと飼い犬トトは家ごと、素晴らしく美しい真っ青な国へ飛ばされてしまう。そこはオズ王国の中の、小さい人マンチキンの国でみんなが青色の服を着ている。落ちた家はマンチキンたちを

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ヴァージニアウルフなんかこわくない

ヴァージニアウルフなんかこわくない

Who’s Afraid of Virginia Woolf ?
エドワード・オールビー 1928〜2016
1962年 ブロードウェイにて初演

ニューイングランドの小さな大学の構内にある家の居間にて、日曜日の朝から、悲喜劇が始まる。登場人物は四人。
マーサ…52歳。大柄ではしゃぎ回る女性。若く見える。
ジョージ…46歳。マーサの夫。痩せていて髪は白髪混じり

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卒塔婆小町

卒塔婆小町

観阿弥・世阿弥

(能・四番目物)
シテ・小野小町
ワキ・高野山僧
ワキツレ・従僧

身はうきくさ(憂・浮草)を誘ふ水  身をうき草を誘ふ水
なきこそ悲しかりけれ

高野山の旅僧二人。道端の朽ち木に腰を掛ける老女と出会う。よく見れば朽ち木ではない。「町卒塔婆」という弘法大師ゆかりの高野山への里程を示す道標が朽ち倒れたもの。僧は教化の為、言葉を掛けるが、老女の反論にたじたじとなる。この老女こそ才色兼

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牛の嫁入り

牛の嫁入り

昔、沖縄の首里という所に、とても美しいつる子という娘と母親が住んでいました。
母親は、つる子の幸せを願い、神社へのお参りを続けていました。ある日、村の意地悪息子はこの事を知り、つる子の母親の先回りをして神殿に隠れ「帰り道に出会った男とつる子を結婚させるがよい」と言いました。母親は神様のお告げを喜びましたが、帰り道に出会ったのは意地悪息子でした。つる子は「神のお告げなら仕方がありません」と、嫁に行く

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屋根の上のバイオリン弾き

屋根の上のバイオリン弾き

1964年初演
原作 ショーレム・アレイヘム
脚本 ジョセフ・スタイン

帝政時代のロシア・ウクライナ地方の寒村で牛乳屋を営むユダヤ人一家の物語。

七人家族の
父親「テヴィエ」
テヴィエの妻「ゴールデ」
長女「ツァイテル」
次女「ホーデル」
三女「チャバ」
四女「シュプリンシェ」
五女「ビルケ」

信心深く、善良で働き者のテヴィエは、妻と五人の娘達と貧しいながらも幸せに暮らしていた。上の三人は、

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さびしき野辺

さびしき野辺

さびしき野辺

立原道造 1914〜1939

いま だれかが 私に花の名を ささやいて行つた
私の耳に 風が それを告げた追憶の日のやうに

いま だれかが しづかに
身をおこす 私のそばに
もつれ飛ぶ ちひさい蝶らに
手をさしのべるやうに

ああ しかし と
なぜ私は いふのだらう
そのひとは 
だれでもいい と
いま だれかが とほく
私の名を 呼んでゐる……ああ しかし

私は答へない お

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後巷説百物語

後巷説百物語

京極夏彦 季刊妖怪マガジン「怪」掲載2001〜

江戸時代末期。晴らせぬ恨みや困難な問題を解決する「御行の又市」を中心とした小悪党達がいた。掲載1997〜「巷説百物語」「続巷説百物語」では、偶然彼らに関わった戯作者志望の若者「山岡百介」が中心に据えられ、小悪党達が「妖怪」の仕業に仕立てて物事を解決する様が描かれている。そして、この「後巷説百物語」(のちのこうせつひゃくものがたり)は、まだ江戸の風が

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