Katsuhisa Sakita

【 読書メモ・創作の種の保存庫 】 様々なジャンルの読み物を取り上げています。 書棚に…

Katsuhisa Sakita

【 読書メモ・創作の種の保存庫 】 様々なジャンルの読み物を取り上げています。 書棚に並ぶ背表紙のように、書き連ねています。 初めて手に取るとき、読み直すとき。読書を忘れないときのために。 (最近はInstagramの下書き)

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  • おとなの読みもの

    おとなにおすすめの本。 いつか、おとなになる子供におすすめの本。

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    こどもにおすすめの本。 かつて、こどもだった大人におすすめの本。

最近の記事

骨董夜話

📚【骨董夜話】 1970〜1978 月刊「太陽」に連載 1975年に連載分をまとめた単行本が出版。 「螺鈿の皿」 長径が僅かに一二・五センチ、短径九・一センチ。 「琺瑯彩」 直径十四・五センチ 製作者の意図が初めから「美」を造り出すことにあたって、その全能を傾けて出来上がったものが工芸品であると。これに対し、民芸品は、日用雑貨を作るうちに、偶然に修練によって美的作品となったものである。(細川護貞) 📎 骨董愛好家として知られていた日本の著名人が、自身の骨董に寄せる想いや

    • 知々夫紀行

      📘『知々夫紀行』 幸田露伴 1899(明治32)年2月 我邦には獅子虎の如きものなければ、獣には先ず狼熊を最も猛しとす。されば狼を恐れて大神とするも然るべきことにて、熊野は神野の義、神稲をくましねと訓むたぐいを思うに、熊をくまと訓むはあるいは神の義なるや知るべからず。(或曰、くまは韓語、或曰、くまは暈にて月の輪のくま也。)ただ狼という文字は悪きかたにのみ用いらるるならいにて、豺狼、虎狼、狼声、狼毒、狼狠、狼顧、中山狼、狼飡、狼貪、狼竄、狼藉、狼戻、狼狽、狼疾、狼煙など、め

      • 居酒屋兆治

        居酒屋兆治 山口瞳 1979 東京郊外の小さな町にある「居酒屋兆治」。店主の本名は藤野伝吉だが、客は皆彼を兆治と呼ぶ。彼は若い頃はプロの野球選手になることを期待される程の腕を持っていた。しかし、倒我によりその夢を諦め、サラリーマンとして生きてきた。上司とのトラブルに悩んだ彼は、職を辞し、幼い頃から住む町にカウンターだけの小さな店「兆治」を始める。そこに集まる客は、昔からこの町に住む顔なじみばかり。野球仲間、親友、そしてサラリーマン時代の同僚たち。兆治が様々な思いを秘めてカウ

        • 北国街道殺人事件

          📙『北国街道殺人事件』 内田康夫 1999 野尻湖の学術調査発掘現場から、妙な骨が出てきたという報告が、野尻駐在所にもたらされたのは、三月二十七日の午後二時頃のことである。「どうも、人間の骨みたいだし、そう古いものでもなさそうなんですがね」電話をかけてきたのは野尻湖小学校の徳武という若い教師で、いくぶん薄気味悪そうな声をしていた。 🖌️ 良寛と一茶を卒論テーマに選んだ田尻風見子と野村良樹は、出雲崎へ調査旅行へと向かう。途中、野尻湖で人骨が発見されたことを喫茶店のマスターか

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          天平の甍

          📓『天平の甍』 井上靖 1957 🖌️ 奈良時代の一級史料 『唐大和上東征伝』(鑑真の伝記) 779年 記「淡海三船」722〜785 に史実に即しながら鑑真来朝の経緯を主軸に据えた歴史小説です。 ・・・ 朝廷で第九次遣唐使発遣のことが議せられたのは聖武天皇の天平四年で、その年の八月十七日に、従四位上多治比広成が大使に、従五位下中臣名代が副使に任命され、そのほか大使、副使と共に遣唐使の四官とばれている判官、録事が選出された。判官は秦朝元以下四名、録事も四名である。そして翌九月

          床下の小人たち

          📔「床下の小人たち」 メアリー・ノートン 1952 ファーバンク邸の床下にはもうひとつの家があった。狭小空間でミニチュア家具に囲まれて暮らしている小人の家。そこに住むのは、父、母、そして娘の『アリエッティ』 アリエッティは父が暮らしのルールを変えるまで、廊下より先に出たことがなかった。 桜が咲く春のこと、アリエッティが初めて床下から出ることを許された日、玄関の扉は「夢にみたおとぎの国の入り口のように」開いていた。念願の戸外へでた彼女は、陽光を浴びる、外を走る、青空を仰ぎ見

          床下の小人たち

          Edda

          エッダ Edda 成立 8-13世紀頃 アイスランドとノルウェーに伝わる神話が、ヴァイキング時代に頭韻詩にまとめ上げられたもの。最も有名な「巫女の予言」は世界の創成から滅亡、さらにその再生までを語る。いわゆる北欧神話はこれを根幹としている。 「巫女の予言」 巫女ヴォルヴァがオーディンに語りかけるという形で、世界の創造から終末の到来、世界の再生までを語る。ヴォルヴァは、彼女は自身がいかにして知識を手に入れたか、そして彼女がオーディンの全知の源泉、および他のアースガルズ(ア

          恋する女たち

          📕『恋する女たち』 氷室冴子 1981 三人の女の子が恋に悩み、成長していく姿を描いた小説。 1986年に斉藤由貴主演、大森一樹監督により映画化される。 六年間の片思いが破れた校内屈指の美貌を誇る「緑子」 学年トップの優等生でありながら大学生の彼氏がいる「汀子」 理性的だが、恋愛関係にも理屈を求めてしまい告白ができない「多佳子」 多佳子は高校2年生。大学4年の姉・比呂子と下宿生活をしている。今日は、クラスメイトの緑子の3度目の葬儀の日。緑子は不幸のたびに葬儀をあげるのだ

          恋する女たち

          土佐日記

          『土佐日記』 紀貫之 成立時期は未詳 934年後半〜935年頃 🖌️ 「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。それの年(承平四年)のしはすの二十日あまり一日の、戌の時に門出す。そのよしいさゝかものにかきつく。」 (男の人が書くという日記というものを、女である私も書いてみようと思う…。) ・・・ 有名な書き出しで始まるこの日記の作者は、実は男性でした。書いたのは紀貫之。古今和歌集の編纂にもあたった、平安時代を代表する宮廷歌人の一人です。 ・・・ 🖌️ 「

          オリエント急行殺人事件

          📓『オリエント急行殺人事件』 アガサクリスティ 1934 「警察だったら使えるような操作手段が我々にはひとつもないということです。推理に頼るしかありません。」 シリアでの仕事を終え、イスタンブールに滞在していたポワロに、至急ロンドンに戻れという電報が届いた。ところが不思議なことに、オリエント急行の一等寝台は、この冬の季節には異例の満員である。ポワロは、知り合いの国際寝台会社の重役に頼み込み、なんとか座席を確保したのだった。その翌日、食堂車でポワロは、ラチェットと名乗るアメ

          オリエント急行殺人事件

          白雪姫(ディズニー映画)

          白雪姫 SNOWWHITE AND THE SEVEN DWARVES, 1937 本作品は大きな城がゆっくりとズームアップされていくシーンで幕を開ける。城の中では邪悪な女王が魔法の鏡に向かって、不滅の名台詞を語りかけている。 「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」 この「白雪姫」で長編アニメ映画への初進出を果たしたウォルト・ディズニー社を、当時のハリウッド映画界はまるで相手にしませんでした。「一時間半もあるアニメ映画を一体誰が見るというんだ?」いうまでもなく、「白雪姫」

          白雪姫(ディズニー映画)

          『楽園のカンヴァス』

          📒『楽園のカンヴァス』 (La toile du paradis) 原田マハ 2012 ・・・ Yadwigha dans un beau rêve
S'étant endormie doucement
Entendait les sons d'une musette 甘き夢の中 ヤドヴィガは やすらかに眠りに落ちてゆく 聴こえてくるのは思慮深き蛇使いの笛の音 ・・・ 「2000年 倉敷」 大原美術館のスタッフが動揺する。ニューヨーク近代美術館(MOMA)より「アンリ・

          『楽園のカンヴァス』

          辺境の食卓 野尻湖から

          📕『辺境の食卓 野尻湖から』 太田愛人 1976 「我らの日用の糧を今日もあたえ給え。」 執筆者の太田愛人は岩手県盛岡市出身の牧師。同郷の詩人・童話作家の宮沢賢治と同じ盛岡農林専門学校を卒業。柏原信濃村伝道所に赴任していた時期、月刊通信誌「辺境通信」の発行人をつとめ、信濃村(現信濃町)での生活を誌に綴った。「辺境の食卓 野尻湖にて」は、それらを一冊の本にまとめたもの。「辺境への道案内」で始まる章で信濃町の暮らしと風景を描き、続く「辺境の食卓(香り;色;味 ほか)」の章で、

          辺境の食卓 野尻湖から

          生々流転

          📘『生々流転』 岡本かの子 1940 ・・・・・ 遁れて都を出ました。鉄道線路のガードの下を潜り橋を渡りました。わたくしは尚それまで・・・袂の端を掴む二本の重い男の腕を感じておりましたが・・・だんだん軽くなりました。代りに自分で自分の体重を支えなくてはならない妙な気怠るさを感じ出しました。これが物事に醒めるとか冷静になったとかいうことでしょうか。 ・・・・・ 🖌️ 蝶子は丘陵地にある学園に通う少女。園芸助手の葛岡や資産家の池上に慕われるが、彼らからは、それは恋というより、

          カンディード

          『カンディード、あるいは楽天主義説』(Candide, ou l'Optimisme) ヴォルテール 1759 ・・・ 1755年11月1日、ポルトガルの首都リスボンを大地震と津波が襲いました。 西ヨーロッパの広い範囲で強い揺れが起こり、ポルトガルのリスボンを中心に大きな被害を出しました。津波による死者1万人を含む、5万5,000人から6万2,000人が死亡、推定されるマグニチュードはMw8.5〜9.0の巨大地震であったと考えられています。 この未曾有の災害はポルトガルの衰運

          カンディード

          ルドルフとイッパイアッテナ

          📓『ルドルフとイッパイアッテナ』 斉藤洋 1987 ・・・ ぼくはルドルフだ。ルドルフといっても、外国人ではない。それなら日本人かといえば、そうでもない。・・・(中略)・・・ぼくは人間じゃないんだ。 ・・・ 思いもよらぬ旅の始まり。長距離トラックに乗ってしまい大きな町の「江戸川」に運ばれてしまった飼い猫の僕。途方に暮れていると大きな野良猫に出会う。その猫は虎猫で名まえを聞くと ・・・ 「ハハハ、ほんとうにへんなやつだ。おまえ、名まえはなんていうんだ。」 「ぼくはルドルフだ。

          ルドルフとイッパイアッテナ