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おとなの読みもの

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おとなにおすすめの本。 いつか、おとなになる子供におすすめの本。
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ナジャ

ナジャ

📙『ナジャ Nadja』
アンドレ・ブルトン
André Breton
1928

🌹
「あの人には信じられないの。私たちが一緒にいるのを見ると落着かないのよ。それほど、あなたや私の目の中にある焰は珍しいの」

☕️
街の書店で買物をしたあと、オペラ座の方角に向かってぶらぶら歩いてゆく途中、一人のみすぼらしい身なりをした、金髪の若い女とすれちがう。「私」は、こんな眼はこれまで見たことがないと思

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悲しみよ こんにちは

悲しみよ こんにちは

📒『悲しみよこんにちは』
(Bonjour tristesse)
1954
フランソワーズ・サガン
(Françoise Sagan)

・・・
「アンヌ、行かないで。間違いだったのよ。私のせいなの。あなたに説明するから」
「あなたには誰も必要じゃないわ。あなたにもあの人々も…」

🖊️
主人公のセシルは十七歳の娘、十五年来やもめ暮しをしている遊び好きのダンディな若い父とパリで陽気な生活を送っ

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土を喰らう十二ヶ月

土を喰らう十二ヶ月

📗【土を喰らう十二ヶ月】
中江裕司 2022

🌾
淘米調菜等
自手親見
精勤誠心而作
不町一念疎怠機慢
🌾

・・・「山の中で畑を作って、旬のおいしいものを食べて、好き勝手に生きるのって素敵じゃない!」ここは妻の本家なのだ。廃村になって誰も住まなくなった茅葺きの古民家を安く譲り受けた。・・・家も整い、畑ができて、これからという時に妻は死んだ。山の生活を楽しみにしていた妻は亡く、私とさんしょ

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昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年

昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年

📚【昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年】
阿古真里 2013

阿古真里さん、食文化を中心に暮らしの来歴や生活誌を研究している作家さんです。
2017「料理は女の義務ですか」
2021「日本外食全史」
2023「おいしい食の流行史」
2024「日本の台所とキッチン一〇〇年物語」
令和の現在も書籍の発行は進んでいますが、今回は「2013年」の書籍。こちら、上野千鶴子さんがエッセイの中で取

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私の好きな名人たち

私の好きな名人たち

📕『私の好きな名人たち』
三宅菊子 1979

「名人・達人を訪ねて」と題して「家庭画報」などに連載していた人物ルポ。滅びゆく仕事の職人たちに、愛情を傾けて取材している。
・・・
八十五歳の自転車乗り・ムツゴロー釣り四十年・巨大な磨崖仏に挑む老石工・大川(隅田川)川並衆の長老格・鳶職、梯子乗り・打ち上げ花火一筋・法隆寺大工・初節句を祝うブカ凧づくり・夫婦で掘り続けた三千体の仏像・女文楽の座長・船

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半月

半月

🌓『KUROSOLO壱番「半月」』
黒谷都 1995 発表
演劇(ソロ)

・・・
黒いベールをかぶった女が、薄い布を一枚一枚とりだして、ていねいに並べ、並べかえ、結び合わせ、包み、抱き、立たせ、人形に着せ付ける。薄暗い世界に幼い赤ずきんが誕生する。女は人形に与えた「生」を言葉でなく動きで語る。人形たちの運命を背負い、ときに人形と向き合ってきた女の存在自体がこの物語となり、人形と人形遣いは「生」

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古代ワインの謎を追う

古代ワインの謎を追う

📕『古代ワインの謎を追う』
ケヴィン・べゴス 2022

著者べゴス氏は2008年の春、ヨルダンの首都アンマンのホテルで、ある「客室備え付けのワイン」に出会う。その赤ワインの「文字も絵も古風な見慣れないラベル」にはこう書かれていた。〈製造・瓶詰め クレミザン・セラーズ/聖地-ベツレヘム〉。どのワイン事典にも掲載されていないばかりか、聖地一帯の葡萄畑は途絶えていると書かれている。カルベネ、シャルド

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風立ちぬ

風立ちぬ

📘『風立ちぬ』
堀辰雄 1938刊行

「私、なんだか急に生きたくなったのね……」 それから彼女は聞えるか聞えない位の小声で言い足した。「あなたのお蔭で……」

高原の風景の中で、病に冒されている婚約者に付き添う「私」。やがて来る愛する者の死を覚悟し、二人の限られた日々を描いた物語。

堀辰雄(1904~1953)
東京都生まれ。府立三中から第一高等学校へ入学。入学とともに神西清と知り合い、終生

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ピアニストを撃て

ピアニストを撃て

🎬『ピアニストを撃て』(Tirez sur le pianiste)

1960年 フランス映画
監督:フランソワ・トリュフォー
原作:デイヴィット・グーディス
出演:アズナヴール、デュボワ、レミー

🎹
パリのカフェでピアノ弾きとして生計を立てているシャルリ(アズナヴール)は、実はかつて有名なコンサートピアニストだった。愛する妻が自分の仕事のために不貞を重ねたことを許せず、そのせいで彼女が

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花物語

花物語

📚『花物語』
吉屋信子

🎀
第一話「鈴蘭」の初出は「少女画報」大正5年(1916)、以後断続的に大正13年(1924)年に至るまでに、現在確認されている限りで全52話が書き継がれた。(掲載された最後の2作である「薊の花」「からたちの花」が含まれていないため)。初版は「花物語」大正9年。少女たちの愛や友情、憧れなどを抒情的な筆致でとらえ、当時の少女読者たちを魅了した。
🎀
初夏の夕べ、七人の

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骨董夜話

骨董夜話

📚【骨董夜話】
1970〜1978 月刊「太陽」に連載
1975年に連載分をまとめた単行本が出版。

「螺鈿の皿」
長径が僅かに一二・五センチ、短径九・一センチ。
「琺瑯彩」
直径十四・五センチ

製作者の意図が初めから「美」を造り出すことにあたって、その全能を傾けて出来上がったものが工芸品であると。これに対し、民芸品は、日用雑貨を作るうちに、偶然に修練によって美的作品となったものである。(細川

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知々夫紀行

知々夫紀行

📘『知々夫紀行』
幸田露伴

1899(明治32)年2月

我邦には獅子虎の如きものなければ、獣には先ず狼熊を最も猛しとす。されば狼を恐れて大神とするも然るべきことにて、熊野は神野の義、神稲をくましねと訓むたぐいを思うに、熊をくまと訓むはあるいは神の義なるや知るべからず。(或曰、くまは韓語、或曰、くまは暈にて月の輪のくま也。)ただ狼という文字は悪きかたにのみ用いらるるならいにて、豺狼、虎狼、狼声

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居酒屋兆治

居酒屋兆治

居酒屋兆治
山口瞳 1979

東京郊外の小さな町にある「居酒屋兆治」。店主の本名は藤野伝吉だが、客は皆彼を兆治と呼ぶ。彼は若い頃はプロの野球選手になることを期待される程の腕を持っていた。しかし、倒我によりその夢を諦め、サラリーマンとして生きてきた。上司とのトラブルに悩んだ彼は、職を辞し、幼い頃から住む町にカウンターだけの小さな店「兆治」を始める。そこに集まる客は、昔からこの町に住む顔なじみばかり

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オリエント急行殺人事件

オリエント急行殺人事件

📓『オリエント急行殺人事件』
アガサクリスティ 1934

「警察だったら使えるような操作手段が我々にはひとつもないということです。推理に頼るしかありません。」

シリアでの仕事を終え、イスタンブールに滞在していたポワロに、至急ロンドンに戻れという電報が届いた。ところが不思議なことに、オリエント急行の一等寝台は、この冬の季節には異例の満員である。ポワロは、知り合いの国際寝台会社の重役に頼み込み、

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