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鳴子

📗【鳴子】(狂言の演目)
登場人物
🍶主人
🍶太郎冠者
🍶次郎冠者

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主人が多場し、田を荒らす郡鳥や獣を追うため、太郎冠者・次郎冠者の両人を呼び出し、鳴子を渡して、田へ鳥追いに行くよう命じます。田へ着いた二人は、稲を干すための稲木(ワキ柱および目付柱)に鳴子を結び付け、それを引き鳴らして鳥を追った後、庵へ入って一休みします。そこへ主人が酒を持って見舞いにやって来て、日暮れになったら帰れと言って戻ります。両人が酒を酌みかわしていると、鳥が渡ってくるので鳴子を引きながら、引く物尽くしを謡い舞います。また盃を重ねて上機嫌になり、さらに陸奥の名所尽くしを長々と謡いつつ舞いますが、終ると酔いと疲れで、二人とも寝入ってしまいます。あまり帰りが遅いので、心配して迎えに来た主人が、この様を見てあきれ、揺り起こすと、二人は鳥が渡ったと思い、それぞれ盃(葛桶の蓋)と酒樽を持って「ホウホウ」と主人を追おうとするので、主人は二人を追い込みます。逃げながら鳴子を鳴らして二人の冠者がうたう、「引くもの尽くしや 名所尽くし」の謡を聞くうちに、舞台いっぱいに実り豊かな田園風景が広がるところで終曲となります。

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鳴子を鳴らして田の鳥を追うという光景は、今ではもう見られなくなりました。本曲は、そうした農村の風物(風俗)の再現としても興味深く、二人の冠者が鳴子を引き鳴らしつ
つ、引く物尽くしや陸奥名所尽くしの小歌を謡い舞うさまが最大の見どころです。
狂言画は、二人の冠者が腰掛けて向き合っています。それぞれの髷に鳴子縄を結んでいます。この状態で引き合い、鳴子を鳴らすのでしょう。髷を結わない現代では、出来そうにない演出です。しかし、和泉流最古の天理本では、「いざ手がだるいに、この縄を頭に結い付けて、頭で引かふ」とあり、頭で鳴子縄を引く演出を記しています。天理本に次ぐ和泉家古本によれば、縄を首に掛ける場合と、頭(髷)に結び付ける場合とがあったようです。大蔵虎明本にも「たぶさ(髷)」に結い付けること」と見えており、江戸初期には、すでにこれらのような演出があり得たことになります。

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