シュシュ

ミステリを中心に読書の記録や感想など投稿します。たまにミステリ風味のオリジナル小説も投…

シュシュ

ミステリを中心に読書の記録や感想など投稿します。たまにミステリ風味のオリジナル小説も投稿します。2024年1月から開始。

マガジン

  • 主に読書の記録

    読書の記録や感想をまとめています。本格ミステリが多いと思います。

  • 大阪彩ふ文芸部

    • 26本

    書くのは、楽しい。 あなたも何か書いてみませんか? 2024年1月より、彩ふ読書会は文芸部活動を行います。 大阪会場の読書会に過去一回以上参加経験のある方でしたらどなたでも部員になれます。入部・退部は自由です。 入部お待ちしております!

  • 小説_聖徳をまとう

    ミステリー風味のオリジナル連載小説です。 タイトル/ 聖徳をまとう あらすじ/ 出来心から娼婦ユミの跡をつけた私だったが、不注意がきっかけでそのストーカーじみた行為はユミ本人に知られるところとなる。ユミは自殺するが、やがて彼女と私の同窓生・美月とが同一人物であることを示す情報を得て、私は困惑する。何故なら美月は一年以上前に事故死していたから。ユミは「身バレ」を苦に自殺したのか。先に事故死していた美月との関係は。そして、聖徳太子伝説の眠る地で新たな殺人が。見え隠れする「歯」にまつわる縁起。聖徳太子の歯は何故盗まれたのか。

  • 雑記

    あれこれ思ったことを記します。

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  ◇  仕事をやめて地元に帰ることにした。  早朝、引っ越し業者に少ない荷物を預け、地下鉄で名古屋駅へ向かった。懐が寒いので新幹線は使わない。名鉄百貨店前のナ…

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スイス時計の謎(レビュー/読書感想文)

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冬期限定ボンボンショコラ事件(レビュー/読書感想文)

 冬期限定ボンボンショコラ事件(米澤穂信) を読みました。新刊です。  米澤穂信さんの小市民シリーズの最新作にして完結編(?)です。  米澤穂信さんは、2022年の…

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さよならドビュッシー(レビュー/読書感想文)

 さよならドビュッシー(中山七里)  を読みました。2011年の作。  中山七里さんのデビュー作です。中山七里さんの作品はいくつか読んでいますが、本作に関しては、 ・…

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異世界との繋がりかた〜ある短編映画プロジェクトの話

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読書感想文ってなんだっけ

2024年の年頭からこのnoteを始めてもうすぐ5月です。時が経つのは早いです。 もっぱら私の投稿は、 ・読書感想文 ・オリジナル小説 ・雑記 で構成されているのですが、最…

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戻り川心中(連城三紀彦) を読みました。 1979年の作。ミステリ好きであれば押さえておくべき超有名作なのですが、実は未読だったのです。 レビューでは新刊読書に紛れて…

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月の珊瑚(奈須きのこ) を読みました。2011年の作。 声優・坂本真綾さんの朗読CD付きのパッケージですが、この感想文では奈須きのこさんの小説についてのみ書くことにし…

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1か月前
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切断島の殺戮理論(レビュー/読書感想文)

切断島の殺戮理論(森晶麿) を読みました。新刊です。 黒猫シリーズの作者という認識はありましたが、実際に森さんの作品を読むのは初めてです。 ケレン味の効いた一人…

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永劫館超連続殺人事件〜魔女はXと死ぬことにした(レビュー/読書感想文)

永劫館超連続殺人事件〜魔女はXと死ぬことにした(南海遊) を読みました。 新刊です。初読みの作家さん。 中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしたミステリーなのですが、ひ…

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涜神館殺人事件(手代木正太郎) を読みました。 2023年刊。初読みの作家さん。 昨年の刊行時、気になりつつも読み逃していた作品です。 物々しいタイトルです。表紙もお…

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ロシア幽霊軍艦事件(レビュー/読書感想文)

 ロシア幽霊軍艦事件(島田荘司)  を読みました。  20年以上ぶりの再読です。以前読んでいたのは作者のファンムックに収録されていた初稿バージョンでした。一冊にま…

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聖徳をまとう_一/ストーカー(1)

聖徳をまとう_一/ストーカー(1)

  ◇

 仕事をやめて地元に帰ることにした。

 早朝、引っ越し業者に少ない荷物を預け、地下鉄で名古屋駅へ向かった。懐が寒いので新幹線は使わない。名鉄百貨店前のナナちゃん人形に横目で別れを告げつつ近鉄特急の乗り場を目指す。およそ二時間電車に揺られ、十年ぶりの大阪に降り立った。

 アパートは既に契約していたが実際に目にするのは初めてだ。大阪南東部に位置する富田林市、その北の玄関口にあたる貴志駅至

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老虎残夢(レビュー/読書感想文)

老虎残夢(レビュー/読書感想文)

 老虎残夢(桃野雑派)
 を読みました。第67回江戸川乱歩賞受賞作。2021年の作品です。桃野さんのデビュー作。

 舞台は13世紀の中国。超常的な能力を有する武術家が集うなか、ひとりの達人が湖に浮かぶ楼閣内で殺害されます。事件発覚時、船は楼閣側にあったため犯人がそれを使って陸には戻れなかったはずという不可解な状況が示されるというものです。

 えーと。江戸川乱歩賞作品ってこんな自由でしたっけ――

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聖徳をまとう_五/女王の墓

聖徳をまとう_五/女王の墓

  ◇

「六角堂?」

 肇が唐突に私に問いかけてきたのは石段を降り始めて奇しくも六段目に足を掛けた瞬間だった。

「はい、六角堂です。秀太さんは知りませんか?」

「聞いたことはないな」

「京都の六角堂です」

 平坦な声でそう繰り返す肇を見返しながら、私の脳内ではその名のとおり六角柱の時代がかった御堂の姿が像を結んでいた。

「寡聞にして僕はそれを知らないけど、どうして今それを?」

「今

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スイス時計の謎(レビュー/読書感想文)

スイス時計の謎(レビュー/読書感想文)

 スイス時計の謎(有栖川有栖)
 を読みました。

 有栖川さんは説明不要の人気作家です。
 私自身、ミステリにハマり始めた学生時代からその作品は旧作・新作問わず多数愛読しています。

 が、「スイス時計の謎」はたまたま未読でした。ということで、私的「読んでいなかった名作を今さらながら読んでいこう」の一環で手に取ったという次第です。

 本作で探偵役をつとめるのは、有栖川さんの看板名探偵・火村英生

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冬期限定ボンボンショコラ事件(レビュー/読書感想文)

冬期限定ボンボンショコラ事件(レビュー/読書感想文)

 冬期限定ボンボンショコラ事件(米澤穂信)
を読みました。新刊です。

 米澤穂信さんの小市民シリーズの最新作にして完結編(?)です。

 米澤穂信さんは、2022年の「黒牢城」で直木三十五賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞しています。一般読者の認知も十全な人気ぶりでありつつ、私のようなミステリ好きにとっても目が離せない名実兼ね備えた作家さんです。

 ハイクオリティな作品を量産するイメージですが、

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さよならドビュッシー(レビュー/読書感想文)

さよならドビュッシー(レビュー/読書感想文)

 さよならドビュッシー(中山七里)
 を読みました。2011年の作。

 中山七里さんのデビュー作です。中山七里さんの作品はいくつか読んでいますが、本作に関しては、
・氏のデビュー作であるということ
 それと、
・岬洋介という人物がいわゆる探偵役であるシリーズの第一作
 ということだけを予備知識に私は読み始めました。

 とても面白くて一気読みでした。先が気になって仕方がない。そんな読書体験でした

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異世界との繋がりかた〜ある短編映画プロジェクトの話

異世界との繋がりかた〜ある短編映画プロジェクトの話

 2024年ゴールデンウィークの前半戦、私は京都に行ってきました。目的は観光――ではなく、とある映画の上映会に参加することでした。

 さかのぼること昨年の夏。ひょんなことがきっかけで私はひとつのクラウドファンディングを支援することを決めました。

 それは、風来漢あきさん(以下、あきさん)という映像作家による短編映画の自主制作プロジェクトでした。

 映画の原作は、私も大好きな作家さんの短編集の

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読書感想文ってなんだっけ

読書感想文ってなんだっけ

2024年の年頭からこのnoteを始めてもうすぐ5月です。時が経つのは早いです。

もっぱら私の投稿は、
・読書感想文
・オリジナル小説
・雑記
で構成されているのですが、最も本数が多いのは読書感想文です。

なのですが、読書感想文を投稿するたび、時折頭を抱えることがあって、「一度落ち着いて言語化してみよう」と思いつつも先送りしていたテーマがまさにこの投稿のタイトル「読書感想文ってなんだっけ」です

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戻り川心中(レビュー/読書感想文)

戻り川心中(レビュー/読書感想文)

戻り川心中(連城三紀彦)
を読みました。
1979年の作。ミステリ好きであれば押さえておくべき超有名作なのですが、実は未読だったのです。

レビューでは新刊読書に紛れて、時々、「読んでいなかった超有名作を今更だけど読んでみた」みたいなものも混じってきますが「今更かよ!」と言わずにお付き合いください。

花にまつわる短編集と紹介にあります。読み通してみると、植物の花はもちろんですが、他にも色街・娼妓

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聖徳をまとう_四/いもこさん(2)

聖徳をまとう_四/いもこさん(2)

  ◇

 小野妹子は聖徳太子と同じ飛鳥時代を生きた官人である。推古天皇の時代、大使に選ばれ、当時、中国大陸にあった大国「隋」に派遣された人物として後世に知られる。また、妹子は華道家元である池坊の元祖としても仰がれている。妹子が聖徳太子の守り本尊の如意輪観音の守護を託され、坊を建て、朝夕に仏前に花を供えたのが流派の起こりになったとされている。

 その小野妹子の墓と古くから伝わる小さな塚がある。大

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月の珊瑚(レビュー/読書感想文)

月の珊瑚(レビュー/読書感想文)

月の珊瑚(奈須きのこ)
を読みました。2011年の作。

声優・坂本真綾さんの朗読CD付きのパッケージですが、この感想文では奈須きのこさんの小説についてのみ書くことにします。

さて。
日頃、本をよく読む皆さんの中には、きっと「私は、この作家さんの書く文章が好き」という意見を持っている人も少なくないと思います。

その点、私は、奈須きのこさんの書く「文章」が好きなのです。「物語」が好きというのとも

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切断島の殺戮理論(レビュー/読書感想文)

切断島の殺戮理論(レビュー/読書感想文)

切断島の殺戮理論(森晶麿)
を読みました。新刊です。

黒猫シリーズの作者という認識はありましたが、実際に森さんの作品を読むのは初めてです。

ケレン味の効いた一人称の文章が心地よく、読み進めること自体が楽しかったです。少し種類は違いますが西尾維新さんの文体を連想しました。

さて、内容ですがネタバレせずに感想をまとめるのが非常に難しい作品です。孤島を舞台にしたコード型の本格ミステリかと思いきや、

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聖徳をまとう_四/いもこさん(1)

聖徳をまとう_四/いもこさん(1)

  ◇

 音の無い漆黒の世界。海の底で深海魚を見上げる夢を見た。身をくねらせて泳ぐうつぼのような生物の腹をじっと見ている。私の目には僅かな光源を増幅させる反射板が入っているのだろう。

 文字どおり、三日三晩はアパートで何もせず横になって過ごした。たまの水分補給を除けば、ろくに食さず、一言も発さず、入眠と覚醒をただ繰り返すだけ。日ごと、すえた匂いが部屋中に充満していく。

 人間の生命力あるいは

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永劫館超連続殺人事件〜魔女はXと死ぬことにした(レビュー/読書感想文)

永劫館超連続殺人事件〜魔女はXと死ぬことにした(レビュー/読書感想文)

永劫館超連続殺人事件〜魔女はXと死ぬことにした(南海遊)
を読みました。
新刊です。初読みの作家さん。

中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしたミステリーなのですが、ひとつ強烈な特殊設定が持ち込まれることで異彩を放ちます。

「死に戻り」という魔女の能力です。魔女は絶命すると24時間前の世界に記憶を引き継いで戻ります。更にこの能力は「道連れ」効果が備わっており、魔女が絶命する前、最後に両目で見つめ合っ

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涜神館殺人事件(レビュー/読書感想文)

涜神館殺人事件(レビュー/読書感想文)

涜神館殺人事件(手代木正太郎)
を読みました。
2023年刊。初読みの作家さん。
昨年の刊行時、気になりつつも読み逃していた作品です。

物々しいタイトルです。表紙もおどろおどろしく、タイトルとカバーデザインだけで本格ファンの掴みはOKですね。

本作は、流行りの特殊設定ミステリーです。

個人的には特殊設定ミステリーはやや胸焼け気味であまり得意ではないのです。が、そもそも本格ミステリー自体が様々

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ロシア幽霊軍艦事件(レビュー/読書感想文)

ロシア幽霊軍艦事件(レビュー/読書感想文)

 ロシア幽霊軍艦事件(島田荘司)
 を読みました。

 20年以上ぶりの再読です。以前読んでいたのは作者のファンムックに収録されていた初稿バージョンでした。一冊にまとまった完全版(単行本)はそう言えば読んでいなかったと思いたち、読み直したという次第です。

 年初にこのnoteを始めたとき、再読はレビューにあげない自分ルールを決めていたのですが、本作は、初読みの時以上に面白く読めたのでやっばり書い

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