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小説_聖徳をまとう

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ミステリー風味のオリジナル連載小説です。 タイトル/ 聖徳をまとう あらすじ/ 出来心から娼婦ユミの跡をつけた私だったが、不注意がきっかけでそのストーカーじみた行為はユミ本人に知…
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記事一覧

聖徳をまとう_八/縁は導く(2)

 前話はこちら   ◇  正面から大股で歩き迫るのは紛れもなく因縁の男だった。  まるで…

シュシュ
1日前
4

聖徳をまとう_八/縁は導く(1)

 前話はこちら   ◇ 「なんであんなこと言うたんや?」  見送りに出てくれていた平塚母…

シュシュ
1か月前
4

聖徳をまとう_七/愛は多面的に

 前話はこちら   ◇  平塚もえぎは滔々と語り始めた――。   ◇  ありきたりなこと…

シュシュ
1か月前
5

聖徳をまとう_六/笛と電話

 前話はこちら  ◇ 「三十一のリコーダーアンサンブルや!」  担任の島脇先生が黒板の前…

シュシュ
2か月前
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聖徳をまとう_五/女王の墓

 前話はこちら   ◇ 「六角堂?」  肇が唐突に私に問いかけてきたのは石段を降り始めて…

シュシュ
3か月前
7

聖徳をまとう_四/いもこさん(2)

 前話はこちら   ◇  小野妹子は聖徳太子と同じ飛鳥時代を生きた官人である。推古天皇の…

シュシュ
4か月前
1

聖徳をまとう_四/いもこさん(1)

 前話はこちら   ◇  音の無い漆黒の世界。海の底で深海魚を見上げる夢を見た。身をくねらせて泳ぐうつぼのような生物の腹をじっと見ている。私の目には僅かな光源を増幅させる反射板が入っているのだろう。  文字どおり、三日三晩はアパートで何もせず横になって過ごした。たまの水分補給を除けば、ろくに食さず、一言も発さず、入眠と覚醒をただ繰り返すだけ。日ごと、すえた匂いが部屋中に充満していく。  人間の生命力あるいは活力の源はカロリーや栄養といった生物学的な要素を別にすれば最も

聖徳をまとう_三/地を這う(2)

 前話はこちら   ◇  交わした約束はまもなく果たされた。  カウンセリングの二日後、…

シュシュ
4か月前
2

聖徳をまとう_三/地を這う(1)

 前話はこちら   ◇  四肢の関節の痛みに耐えかねて目が覚めた。頭上から差し込む薄明か…

シュシュ
4か月前
3

聖徳をまとう_二/故郷にて(4)

 前話はこちら   ◇  太子町に飲食店は少ない。叡福寺で私をピックアップした横谷姉弟は…

シュシュ
5か月前
3

聖徳をまとう_二/故郷にて(3)

 前話はこちら   ◇  叡福寺は、推古天皇の時代、聖徳太子の母である間人大后の御廟に太…

シュシュ
6か月前
1

聖徳をまとう_二/故郷にて(2)

 前話はこちら   ◇  矢も楯もたまらず、惹かれるように向かった先は八城邸だった。イン…

シュシュ
5か月前
1

聖徳をまとう_二/故郷にて(1)

 前話はこちら   ◇  好奇心は猫をも殺すというが、まずもって、好奇心は時に人を動かす…

シュシュ
6か月前
1

聖徳をまとう_一/ストーカー(3)

 前話はこちら   ◇  地元で顔の広い、旧友と呼べる存在は田辺雄平だけだった。帰郷しても連絡を寄越していなかった不義理を詫びつつ、さっそく旧交を温める場を持つことを提案すると、「サシでやろう」と彼らしい言葉が返ってきた。  翌日、淀屋橋の商社勤めだという雄平の仕事上がりの時間に合わせて、天王寺で待ち合わせた。 「おーう! よう連絡くれたなぁー」  現れるなりそう言いながら雄平は赤銅色に焼けた太い腕を私の肩にまわしてくる。 「ちょっと痩せたか?」  白いワイシャ