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ロシア幽霊軍艦事件(レビュー/読書感想文)

ロシア幽霊軍艦事件(島田荘司)
を読みました。

20年以上ぶりの再読です。以前読んでいたのは作者のファンムックに収録されていた初稿バージョンでした。一冊にまとまった完全版(単行本)はそう言えば読んでいなかったと思いたち、読み直したという次第です。

年初にこのnoteを始めたとき、再読はレビューにあげない自分ルールを決めていたのですが、本作は、初読みの時以上に面白く読めたのでやっばり書いてしまいます。

湖から一夜で消えた軍艦。秘されたロマノフ朝の謎。
箱根、富士屋ホテルに飾られていた一枚の写真。そこには1919年夏に突如芦ノ湖に現れた帝政ロシアの軍艦が写っていた。四方を山に囲まれた軍艦はしかし、一夜にして姿を消す。巨大軍艦はいかにして“密室”から脱したのか。その消失の裏にはロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシアと日本を巡る壮大な謎が隠されていた――。御手洗潔が解き明かす、時空を超えた世紀のミステリー。

新潮社「ロシア幽霊軍艦事件」紹介ページより(上記リンク)

私は歴史ミステリーが好きです。
学校ではこう習ったけれども実はこの歴史の裏側にはこんな真実があったかもしれない、とか、その傍証とも取れるこんな情報がここにあるんです、とか。
ワクワクしませんか?

私は歴史学者でも教育者でもありませんし、唯一無二の歴史的事実を求めるわけではなく、無責任な立場で、ただ無邪気に、「ああ、確かに!ここだけ見ればそういう解釈も出来るかも!」と想像力を巡らせるのが楽しいのです。

THE 歴史ロマンです!

内田康夫さんの浅見光彦シリーズは学生時代にたくさん読みましたし、高田崇史さんのQEDシリーズは全作読んでいます。どっちも日本史メインですね。

本作「ロシア幽霊軍艦事件」は、帝政ロシアの皇女アナスタシアがテーマです。ロシア革命下、ニコライ二世ら家族とともに革命軍に処刑されたアナスタシアが実は生き長らえていたのではとされる、歴史ミステリーとしてはある種定番の説のひとつなのですが、島田荘司が圧倒的な筆力と奇想で極上の物語に仕立てています。

アナスタシアを自称するアナ・アンダーソンというアメリカ人女性の謎。四方を山林に囲まれた芦ノ湖に突如現れたロシア軍艦の謎。いったいどこまでがノンフィクション(史実)で、どこからが作者によるフィクション(空想)なのか、その融合具合が巧み過ぎて読書中は作中世界にどんどん引き込まれていきます。

史実と空想の境界がファジーであることが、すなわち読者がそれらを意識することのないくらい自然に接続・融合されていることが、「物語」として優れた歴史ミステリー作品のひとつの姿なのかもしれないと改めて思いました。

作中、御手洗潔は「歴史は真実で出来上がっていない」と言い切ります。そうでなくても、歴史書にはそれを書き残した人物や組織の恣意的な意向が込められるともよく言われますよね。

学校で習った歴史が必ずしも真実とは限らない。おおらかな気持ちでそう決めてかかったほうが良いくらい、歴史というものは本来もっと自由に余白(想像)を楽しむべき題材なのかもしれません。幸い無責任な立場でいられる私はそう思います。


手すさび程度で時折noteに投稿している自作小説もスパイスに歴史ミステリーの要素を盛り込んでいたりします。(ちょっとだけ宣伝)



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