切断島の殺戮理論(レビュー/読書感想文)
切断島の殺戮理論(森晶麿)
を読みました。新刊です。
黒猫シリーズの作者という認識はありましたが、実際に森さんの作品を読むのは初めてです。
ケレン味の効いた一人称の文章が心地よく、読み進めること自体が楽しかったです。少し種類は違いますが西尾維新さんの文体を連想しました。
さて、内容ですがネタバレせずに感想をまとめるのが非常に難しい作品です。孤島を舞台にしたコード型の本格ミステリかと思いきや、コンパクトなボリュームにも関わらずこれでもかと多彩なモチーフや仕掛けがさながらキメラのように詰め込まれていました。
・キレイはきたない、きたないはキレイ
・見えない人
・すべては操られていたのだ
・多重解決
・アンチ(メタ)ミステリー
…etc
本作を表す言葉たちです。
ミステリの内と外の境界線上を綱渡りしつつ、最後の最後に内も外も十把一絡げに爆破したような作品です。でも残った残骸には他ならぬミステリの薫りが強く漂っている。そんな感想を持ちました。
図らずも本作のテーマのひとつと近似するのですが、「異形であること」と「異形であることに自覚的であること」は本格ミステリーの作風として一線を画するというのがジャンル愛好者としての私の考えです。
これは私見であり、また、作風に優劣を付ける意図など無いことは言うまでもないのですが、特殊設定ミステリーがメジャーになることによって、自覚的(メタとも言う)に異形なミステリ作品が減ってきているように感じています。本作は紛れもなく自覚的な異形であり、そういう意味で個人的にはどこか懐かしさをも感じさせられた作品でした。
黒猫シリーズも読んでみようかと思いました。
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