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出版社の回し者ムーブ

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本の紹介や読書のよさなど、出版社に利する記事のまとまり。
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記事一覧

読書感想文「工作艦明石の孤独」

林譲治先生の書く小説の政治体制や軍隊組織が主役かのように振る舞うスタイルが好きなので工作艦明石の孤独が出たときに購入するのは既定路線だった。

そして実際読んでみて最初に感じたのが「これは相当な意欲作だな」という点である。

僕は星系出雲兵站以降のSFシリーズしか読んでいないのだが、今回の工作艦明石の孤独はこれまでの作品よりギミックの作り込みが相当張り切っていた。

ワープひとつとってみても星系出

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大日本帝国の銀河2感想(ネタバレなし)

大日本帝国の銀河2感想(ネタバレなし)

大日本帝国の銀河2(林譲治著)を読んだ。シリーズ前作から引き続いてこのシリーズというかこの作者の魅力は宇宙人の精神性である。
今回のシリーズは、見た目が地球人と同じで同じ言葉を喋るが故に感じる差にフォーカスしている点がとても良い。

しかし大日本帝国の銀河2はそんな宇宙人と地球人の差異の問題からは一旦距離を置いていたように感じる。

どんなふうに距離を置いていたかというと、サイエンスフィクションと

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経済学を活かせば良くなると分かってはいる

経済学を活かせば良くなると分かってはいる

ぼく自身は経済学を学んでいたわけでは無いので、ここでは以前読んだ「幼児教育の経済学」という本と、「学力の経済学」という本の紹介を通じて主張を行なっていこうと思う。

この2冊はタイトルで解るように教育と経済学について論じられています。
両方とも教育的なトピックを経済学的な知見で論じる、つまりはどのような介入を行えば生涯収入がどの程度向上するか、と言う議論を行っている。

とても有意義な議論だと思う

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電子書籍派が考える紙の本の良さ

電子書籍派が考える紙の本の良さ

僕自身は普段、kindleを中心にオーディオブックなどを交えて読書をしています。

kindleもオーディオブックも便利なのですが、この前電子版が出ていない本を読むために紙の本を手に取ったので改めて紙の本の良さについて考えてみようと思います。

本の要素を書いてある内容と物質的な面で分けると内容面で電子版と紙版は完全に同一です。
しかし、紙の本の読書体験は電子版のそれとは異なります。つまり書いてあ

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SFの魅力

SFの魅力

sfの魅力はどこにあるのでしょうか?

ここでは敢えてsfと言う言葉が何の略かは明確にせずにおこうと思います。
あなたにとってのsfがサイエンスフィクションかもしれないし、スコシフシギ、スバラシクフシギかもしれません。

そして、あなたが思い浮かべているsfがどれであろうとも言える魅力は「自由」だと思います。

sfがどんなsfであっても、その作品がsfであると主張する要件は驚くほど少ないです。

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大日本帝国の銀河(ネタバレなし感想)

大日本帝国の銀河(ネタバレなし感想)

今回は大日本帝国の銀河(林譲治著)の紹介をしていきます。

林譲治さんの作品を読むのは星系出雲の兵站シリーズ、星系出雲の兵站-遠征-シリーズについで3シリーズ目ですがこの人の作品の魅力は独特な着眼点にあります。

星系出雲の兵站では宇宙人との戦いを物資輸送や生産拠点確保などの兵站を中心に描いていました。そしてその独自の着眼点は大日本帝国の銀河では「宇宙に進出してない人類にとって宇宙人はどう見えるの

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家康、江戸を建てる(ネタバレなし感想)

家康、江戸を建てる(ネタバレなし感想)

そもそも何を持ってネタバレとするのか曖昧なジャンルの小説ですが、第155回直木賞受賞作でドラマ化もされた歴史小説「家康、江戸を建てる」門井慶喜著の感想を書いていこうと思います。

この作品を読んだきっかけは、audibleで作品を物色していたときに見かけて「江戸時代の歴史小説はあまり読んだことがないな」と思ったのがきっかけでした。

個人的にaudibleは小説と相性がそこまで良くないと思っていま

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星系出雲の兵站 -遠征-5 感想

星系出雲の兵站 -遠征-5 感想

星系出雲の兵站 遠征 5を読みました。これにてシリーズも完結したのでシリーズ全体の総括と布教をしていこうと思います。

ハリウッドのファーストコンタクトもの(インディペンデンスデイとかロサンゼルス決戦とかETでも良いです)を見たときに、この武器はどうやって調達したんだろう?補給はどうなってるんだろう?と疑問に思ったことがある方。

星系出雲の兵站を読んでください!

絶対に面白いです。宇宙人と戦う

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病の皇帝 「がん」に挑む を読んで

病の皇帝 「がん」に挑む を読んで

シッダールタ•ムカジー著、病の皇帝「がん」に挑む、を読んだ。

読み始める前の感想は「NHKスペシャル」みたいなタイトルだな。
読み終わったときの感想は「全て日本人が読むべき本だ」だった。

全ての日本人というと大袈裟に見えるが、日本人の2人に1人が人生のどこかで退治する病についての本を全ての人に勧めるのは大袈裟なことではないと思う。

この本の構成は、史上初めてがんと思われる記録から始まり現代の

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「リモートワークの達人」書評

リモートワークの達人は2014年に書かれたものをリモートワークの急速な広がりを受けて改題したものです。

内容としては、昨今のリモートワークに関する言説を冷静にまとめなおしたらこんな感じになるだろうな、といった感じでした。

上のように言うとわざわざお金を出して買うような本には思えないかもしれませんが、確かに読む価値のある本だと思います。

リモートワークに関する記事はたくさんありますが、そのほと

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HIGH OUTPUT

HIGH OUTPUT managementという本を読みました。Intelの元CEOの書いたマネジメントに関する本です。

単なるエピソード集ではなくとても示唆に富んだ本でテレワークになってマネジメントの方法に迷いのあるマネージャーはもちろん、マネジメントを受ける側である平メンバーにとっても得るものの多い本でした。

今回は読んでいて印象に残った部分について書いてみます。

まず、本書の冒頭では

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「日和ちゃんのお願いは絶対」感想

「日和ちゃんのお願いは絶対」感想

電撃文庫、岬鷺宮先生著、「日和ちゃんのお願いは絶対」を読みました。

最近ノンフィクションを中心に読んでいたこともあり一気に読めました。

後書きにも書いてありましたが「日和ちゃんのお願いは絶対」は典型的なセカイ系を指向して作られているそうです。セカイ系は2000年代初頭に流行ったらしく、僕はリアルタイム世代ではないのですが、セカイ系の先駆けと言われる「ブギーポップは笑わない」やセカイ系の中でも大

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天冥の標4巻 機械仕掛けの子息たち 感想(まさかここまでとは思ってなかった)

天冥の標4巻 機械仕掛けの子息たち 感想(まさかここまでとは思ってなかった)

ややネタバレを含みますが、楽しめなくなるレベルでのネタバレはいれていないと思います。

10巻17冊に及ぶSF大作「天冥の標」その4巻である「機械仕掛けの子息たち」を読みました。大まかなストーリーを説明すると

元々いたコミュニティから孤立した一人の少年が旅先で出会った仲間との交流を通じて成長し、仲間のコミュニティを救うことで信頼を勝ち得てコミュニティのリーダーになる。

というありふれたお話です

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天冥の標1,2を読んでみて

天冥の標1,2を読んでみて

現在早川書房で天冥の標1「メニ―・メニー・シープ」2「救世群」の電子版無料配信を行っています。そして読んでみました。

結論を言うと、やや性的描写が多いがSFというジャンルの自由さを生かした面白い作品。だと感じました。そして「救世群」まで読んでなぜ、早川が1巻無料公開ではなく、1,2巻の無料公開を決めたのかが分かったような気がしました。1,2巻で両極端に振れる世界観と軸となる要素の片鱗を見せるため

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