「リモートワークの達人」書評

リモートワークの達人は2014年に書かれたものをリモートワークの急速な広がりを受けて改題したものです。


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内容としては、昨今のリモートワークに関する言説を冷静にまとめなおしたらこんな感じになるだろうな、といった感じでした。

上のように言うとわざわざお金を出して買うような本には思えないかもしれませんが、確かに読む価値のある本だと思います。

リモートワークに関する記事はたくさんありますが、そのほとんどが一つの利点や一つの欠点にフォーカスしテレワークを称賛したり不要と断じたりしているように思われます。そのなかで多くの利点や欠点を冷静に並べて総合的に論じている本書を読む価値はあります。また、本書執筆時点で既に20年のリモートワーク歴のある筆者の言葉は、多くがテレワーク歴数か月のネット記事に比べて読む価値があります。

本書内にもテレワークを試すなら少なくとも3か月はやるべきと書いています。そういった意味では非常事態宣言が明けて出勤に戻った企業が多かったことは残念です。

本書の著者が企業の経営者であることに加えてテレワークを導入するにあたって意思決定をするのが経営者であることから、本書の内容はほとんどが経営者の視線で書かれています。その中で末端の人材にも強く関係すると思ったのはコミュニケーションに関する箇所と、孤独に関する箇所です。

コミュニケーションに関する箇所には、リモートワークでのコミュニケーションには文章力が求められるということが書かれています。自分自身がリモートで研修を受けた経験から言っても、文章で相手のタイミングを気にせずに質問を送れる半面、質問を明瞭な文章にするスキルが求められていると感じました。対面での質問に比べて内容を補足をするのにかかる手間が多いので最初から過不足の無い文章を書く必要があります。

もう一つは孤独に関する内容です。リモートワークだと当然人と話す機会は減ります。特に一人暮らしだと顕著です。業後の雑談から抜けてスピーカーを切ったときに急に静かになるのは心に来るものがありました。長期的にリモートワークで働くとなったときは意識してリアルのコミュニティを維持する必要があるとの本書の主張には強く同意します。

リモートワークの達人はリモートワークを取り入れた経営者、管理職、従業員だけでなく、リモートワークを取り入れようと思っていない経営者、管理職、従業員にも当たり前のオフィス環境を見直す機会としてよいのではないかと思いました。

リモートワークの達人

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