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大日本帝国の銀河(ネタバレなし感想)


今回は大日本帝国の銀河(林譲治著)の紹介をしていきます。

林譲治さんの作品を読むのは星系出雲の兵站シリーズ、星系出雲の兵站-遠征-シリーズについで3シリーズ目ですがこの人の作品の魅力は独特な着眼点にあります。

星系出雲の兵站では宇宙人との戦いを物資輸送や生産拠点確保などの兵站を中心に描いていました。そしてその独自の着眼点は大日本帝国の銀河では「宇宙に進出してない人類にとって宇宙人はどう見えるのか?」という問いを生み出しています。(大日本帝国の銀河後書きより意訳)

その答えを第二次世界大戦初期、太平洋戦争前夜というべき時期に突如現れた謎の4発爆撃機という表現から始めています。

これ以上書くとネタバレになりそうなので、ここからは作品の魅力を語っていこうと思います。

魅力その1「史実とのリンク」
作中には実際に当時存在した兵器や軍事が出てきます。架空の人物であってもストーリー上の支障はないのでしょうが、特撮作品がそうであるように虚構以外の部分を極力リアルにすることで虚構が際立つ効果が出ていると思います。

魅力その2「政治」
星系出雲の兵站シリーズでもそうでしたが、著者の描く政治は面白いです。宇宙人がやってきたのですから当然政治問題になるだろうと思いきや、政治は宇宙も外国も見ずに国内の敵対勢力を見ているあたりが妙にリアルに感じました。
次巻以降も政治には期待したいと思います。

魅力その3「軍人の理論」
普通、ファーストコンタクトものの作品内で意思決定を担うのは科学者です。著者の前作である星系出雲兵站でもそうでした。(烏丸少将カッコいい!!)
今回の大日本帝国の銀河でも天文学者が出てきますが、それだけです。他は主に軍人が意思決定を行い主人公格の天文学者は意思決定に関われません。
そして、科学者が蚊帳の外に置かれた状態で軍人や官僚が地球内の尺度で軍人の理論でもって宇宙人を理解しようとする描写。これがとても面白かったです。
確かに一つ一つの論理展開はまともなのですが、SF小説に慣れた読者からすると妙な可笑しさのあるシーンです。


上記の魅力以外にもオリオン太郎の宇宙人らしからぬ精神性や時代背景を反映した単語の選び方など沢山の魅力がありますが、キリがいいのでこのくらいにします。

大日本帝国の銀河、読んでみませんか?


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