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彼、もしくは彼女について

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うつくしく、たくましいひとびと
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#エッセイ

黒いラブラドール・レトリバー

黒いラブラドール・レトリバー

一昨日の朝6時過ぎ、バイトへ出かけていくとき、犬と散歩している男のひとを見かけた。

犬は普段からよく見かけるけれども、その日見た犬は黒いラブラドール・レトリバーだったから、犬と男のひとの横を通り過ぎるときに思わずじいっと見入ってしまった。

すると真っ黒な犬も、てくてく歩きながらじいっと私を見てきた。私たちは初対面なのに互いをじろじろ眺める、不思議な人間と犬だったと思う。けれどあの子が私の方を見

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胸元に咲いた、その赤い花を

胸元に咲いた、その赤い花を

3月を迎え、風が春色になる季節になるとふわりと思い出すことがある。私が中学生のとき好きだったひとのことだ。そのひとは同じ吹奏楽部の先輩で、私よりひとつ年上だった。

彼を好きになったのは、彼が私の楽器を運んでくれたのがきっかけだった。

私が担当している楽器はコントラバスだった。

コントラバスは152cmの私の身長よりも大きな弦楽器。そのほとんどが木でできており、しかも中は空洞なのでさほど重たい

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中学のときの同級生の話

中学のときの同級生の話

もう昨年のことになってしまったけど、中学のとき同級生だった男の子が入籍したという話を友人との電話で聞いた。

私がちゃんとかかわったことがある同級生の中で結婚した人物は彼が初めてだから、友達から話を聞いたときはすごく驚いた。

「ええっ、結婚したんだ!」
と思いつつ、おめでたいことだと素直に思えたのは、私がまだ若くて何も焦っていないということ、さらに同級生の彼がそう思わせるような人柄を持っていたと

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すてきなさんにんぐみ

すてきなさんにんぐみ

3人組というのは奇数だから難しいとはよく聞くけれど、私は完璧な組み合わせの3人組に所属している。

そのメンバーのひとりは私の後輩の女の子で、中学生のときに出会った。

吹奏楽部の低音パートとして日々を共有し、そこから親睦を深めてきた、もろくて強い彼女。手がきれいで今では煙草を吸う、1歳年下の彼女。

noteにも彼女のことを書いたことがある。

そしてもうひとりは、保育園から高校までずっと一緒だ

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恋とか愛とか

恋とか愛とか

中学生のころからの友だちに、恋人がすぐ変わる女の子がいる。

彼女がときどき連絡をくれるときは大抵恋愛の話があるときで、しかも毎回恋人が変わっている可能性があるので、私は彼女が「彼氏がさ…」と話し始めたら、まず最初に「どの彼氏?」と確認する必要がある。

この夏、彼女は私の実家でやっている俳句展に恋人とふたりでやってきた。私は初めてまともに彼女の恋人を紹介され、3人で楽しくおしゃべりしたりもした。

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10時間もぐっすり眠るほどに

10時間もぐっすり眠るほどに

9月のはじめごろ、帰省していたお友だちと春ぶりに再会した。ちょっと時間が空いてしまったけど、そのときのことを書きとめておこうと思う。

彼女は初夏生まれらしい、瑞々しい若葉がすくすくと伸びていくような様子を連想させる名を持つ女の子だ。瞳がきらきらしていて屈託なく笑う。

私たちは中学生1年生のときに同級生として出会った。けれど当時はそれほどなかよしというわけでもなく、行動していたグループは別だった

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カッターシャツの彼2

カッターシャツの彼2

少し前に、私は「カッターシャツの彼」というタイトルをつけて、いつもスーツ姿で登校している大学の同級生についてnoteを書いた。

以前書いたnoteのリンクを貼り付けておいたので(この機能に密かに憧れていたので初めて使ってみた)、もしよろしければ、暇つぶしのような軽い気持ちで読んでください。

そしてまさか再び彼のことを書く気になり、実際に書くとは夢にも思わなかったのだけど、ここから本題に入ってゆ

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カッターシャツの彼

カッターシャツの彼

大学に、いつもスーツ姿で授業を受けにきている男の子がいる。彼はいつもカッターシャツを着てキュッとネクタイを締め、肩掛けバッグに革靴という格好をしている。最近は肌寒くなってきたのでベストを着たり、その上からスーツのジャケットに袖を通したりしている。

私は彼がジーンズを履いているのは見たことないし、パーカーも同様だ。そして他にそのような服装の男の子はいないので、彼はとても目につく。

彼の着ているカ

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