榎本櫻湖

榎本櫻湖 a.k.a. 豚ばら肉エリカです。

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記事一覧

第55回新潮新人賞について

 このほど第55回新潮新人賞を受賞した伊良刹那というひとのインタビューをたまたま読んで、とある発言が気にかかってしかたがない。作品を読んでもいないのだからなにもい…

榎本櫻湖
7か月前
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光沢があり、そして臆病で、逃げ足が速く、ときおり飛びもする、卑しい生き物、いや、私たちから忌み嫌われる哀れな生き物、につ…

榎本 今日は家庭でよくおみかけする、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリのみなさんにお越しいただきました。いやあ、見ていられないですね、気持ちが悪くて…

榎本櫻湖
10か月前
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「痴漢」だったわたしについて

 もう十年以上もまえのことだが、もはや老舗だという一点でのみその名が知れ渡っている「歴程」という詩誌に掲載されたとある記事のなかで、わたしがその記事の作者の詩人…

榎本櫻湖
1年前
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ある離人感、シスジェンダー・ヘテロセクシュアル男性優位社会の延命装置としての戦争とは無縁の場所で……、

 生きているのか、死んでいるのかもわからない。二〇一九年末から、新型コロナ・ウィルスによる感染症が世界的に猛威を奮いいまだ終熄の兆しも見えないなか、二〇二二年二…

榎本櫻湖
1年前
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マツコ・デラックスになりたかった

 傍からすればすでにフェミニストだと認識されているようだが、そう自称できずにいる。別段それで困ることもなければ、得をすることもないのだが、しかし自身について話す…

榎本櫻湖
1年前
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FIPに罹患したコシカのこの1ヶ月について

 8月24日に投薬を開始してから1ヶ月が経ちました。ワクチンのついでにおこなった血液検査でFIPだと判明したため、目だった症状もなく、小さくて大人しい性格なのだと思…

榎本櫻湖
1年前
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1歳4ヶ月の保護猫コシカを猫伝染性腹膜炎(FIP)から救いたいです!

 埼玉県狭山市に引っ越してきて、5年が経ちます。最初はひとり暮らしでしたが、2019年9月、前橋からひきとったキジトラのシャト(女の子・当時生後1ヶ月半ほど)との生活…

榎本櫻湖
1年前
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タケミツ・メモリアル (没後二十年武満徹オーケストラ・コンサート)

 たしかに音楽の授業で《ノヴェンバー・ステップス》くらいは聴かされるかもしれないが、それで武満徹の名前を憶え、ましてや興味を持ったものなど、どれくらいいるのかは…

榎本櫻湖
1年前
1

21世紀の音楽カタログ

 2008年に音楽之友社から発刊された『現代音楽を読み解く88のキーワード』(ジャン=イヴ・ボスール著/栗原詩子訳)の巻末には1908年から2006年までに発表された重要度の…

榎本櫻湖
1年前
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停止まで

An den Wassern zu Babel saßen wir und weinten...  なにかの象徴なのではないオルガンのある一音がかすかに聴こえている。どこかの廃教会か忘れさられた巨大な空洞の…

榎本櫻湖
2年前
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笙野頼子さん、いったいわたしの性別はなんですか?

 十代の終わりに地元中野区内の書店で、ミルキィ・イソベ氏によるきらびやかな装幀のその本に惹かれて手にとり、頁をひらけば文字の大きさが自由自在に変化し、それ以上に…

榎本櫻湖
2年前
300

《都市叙景断章》

わたしたちはもう、都市を失ってしまって――、 どこにもない街を、どこにもない風景の胃液が溶かしこんでいくそれらの、鎮静剤の効かない街路をすべるありきたりな恋愛映…

榎本櫻湖
3年前
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《都市叙景断章》についてのあれこれ

 ほんらいならこんな馬鹿げたことはすべきではないし、すでに書き終えたこと以上につけたすことばなどないはずなのだけれども、相変わらず馬鹿ばかりがのさばるこの世界で…

榎本櫻湖
3年前
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@Arisa_Iwakawaさんに嚙みついてみた

 いまになって怒りがこみあげてきたので書いておく。昨日、@Arisa_Iwakawa氏の「私は「クィア文学」という言葉をよく使うが〜」というツイートにクソリプを送りつけたわけ…

榎本櫻湖
3年前
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レビュー論争についてあれこれ

 今回のレビュー論争(というか「キャットファイト」)において大人げないのはむしろ伊藤比呂美のほうで、10000を超えるフォロワーの援護射撃を利用してまで山下晴代を攻…

榎本櫻湖
4年前
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フリージア

夢のなかで 四〇〇人の男のペニスを ずっとフェラチオしていた オーラル・セックスには抵抗がない というよりも好きなほうだし 朝から晩まで口のなかを圧迫されていたいと…

榎本櫻湖
4年前
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第55回新潮新人賞について

 このほど第55回新潮新人賞を受賞した伊良刹那というひとのインタビューをたまたま読んで、とある発言が気にかかってしかたがない。作品を読んでもいないのだからなにもいう資格はないのかもしれないが、「高校2年生の美貌の青年・北條司と、彼にひかれる同級生の速水圭一らが織りなす群像劇」とのことで、あわい同性愛があつかわれているらしいことがここからも窺える。
 問題の発言は「美しい人物と、その美にひかれる(…

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光沢があり、そして臆病で、逃げ足が速く、ときおり飛びもする、卑しい生き物、いや、私たちから忌み嫌われる哀れな生き物、について

榎本 今日は家庭でよくおみかけする、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリのみなさんにお越しいただきました。いやあ、見ていられないですね、気持ちが悪くて。今回はどうして気持ち悪いと思ってしまうのか、検証してみたいと思います。まず、私が思うのは、その光沢なんですよね、なんなんですか。

クロゴキブリ ただいまご紹介にあずかりました、クロゴキブリです。この光沢は、主に脂質なのですが、簡単にいえ

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「痴漢」だったわたしについて

 もう十年以上もまえのことだが、もはや老舗だという一点でのみその名が知れ渡っている「歴程」という詩誌に掲載されたとある記事のなかで、わたしがその記事の作者の詩人(以下某氏)にたいして痴漢を働いたと書かれたことがある。

 当時、某氏の作品を愛読していて影響もうけていたから、作者と実際に対面できてただただ感動していたことはたしかだ。詩歌の同人誌の即売会に出店していた某氏と歓談し、会場をまわるうちに何

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ある離人感、シスジェンダー・ヘテロセクシュアル男性優位社会の延命装置としての戦争とは無縁の場所で……、

 生きているのか、死んでいるのかもわからない。二〇一九年末から、新型コロナ・ウィルスによる感染症が世界的に猛威を奮いいまだ終熄の兆しも見えないなか、二〇二二年二月二四日には、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまって、人類史上稀にみる大混乱に地球規模で見舞われているらしいということを、掌中のスマートフォンを通して窺い知ることはなんとかできてはいるのだが、もう長くテレビのない生活を送っていると、なんとな

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マツコ・デラックスになりたかった

 傍からすればすでにフェミニストだと認識されているようだが、そう自称できずにいる。別段それで困ることもなければ、得をすることもないのだが、しかし自身について話すときなどに、多少の居処のなさのようなものを感じることがある。トランスジェンダー当事者として発言する場合にかぎってのことではあるが、対話の相手にとってどのように映っているのか、わたしは敵なのか味方なのかを、どうやらうかがってしまっている自分を

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FIPに罹患したコシカのこの1ヶ月について

FIPに罹患したコシカのこの1ヶ月について

 8月24日に投薬を開始してから1ヶ月が経ちました。ワクチンのついでにおこなった血液検査でFIPだと判明したため、目だった症状もなく、小さくて大人しい性格なのだと思いこんでいたコシカでしたが、しかし薬を飲みはじめてからの短い期間で、どうやらそれもFIPの症状だったのではないか、といまにしてみればそのようにも思うのです。

 8月24日に動物病院で計測したときには3.25キロだった体重が、2週間後に

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1歳4ヶ月の保護猫コシカを猫伝染性腹膜炎(FIP)から救いたいです!

1歳4ヶ月の保護猫コシカを猫伝染性腹膜炎(FIP)から救いたいです!

 埼玉県狭山市に引っ越してきて、5年が経ちます。最初はひとり暮らしでしたが、2019年9月、前橋からひきとったキジトラのシャト(女の子・当時生後1ヶ月半ほど)との生活がはじまりました。お迎えした日こそベッドの下に隠れていましたが、次の日の朝、目が覚めると、枕もとで丸くなって睡る姿をみて、はじめての猫との暮らしへの不安感が吹き飛びました。

 それから1年半が経った2021年5月初旬のある日の夕方、

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タケミツ・メモリアル (没後二十年武満徹オーケストラ・コンサート)

 たしかに音楽の授業で《ノヴェンバー・ステップス》くらいは聴かされるかもしれないが、それで武満徹の名前を憶え、ましてや興味を持ったものなど、どれくらいいるのかは推して知るべしといったところで、大抵はその名を記憶することもくちにすることもないまま、人生を送ってしまっているひとがほとんどなのだとおもう。それでも二〇一六年十月十三日、東京オペラシティで没後二十年を追悼するために開かれたコンサート(オリヴ

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21世紀の音楽カタログ

 2008年に音楽之友社から発刊された『現代音楽を読み解く88のキーワード』(ジャン=イヴ・ボスール著/栗原詩子訳)の巻末には1908年から2006年までに発表された重要度の高い作品や出来事を年表式に列挙したリストが収録されている。300を超える項目には、ドビュッシーやストラヴィンスキー、バルトークやショスタコーヴィチといった既に古典になりつつある作曲家らの諸作品が並んでいたり、ケージ、シュトック

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停止まで

An den Wassern zu Babel saßen wir und weinten...

 なにかの象徴なのではないオルガンのある一音がかすかに聴こえている。どこかの廃教会か忘れさられた巨大な空洞の奥から、弱い風の薄い表面に載せられて、それはやってきている。それ以外にはなにも、風の音すらも届かない砂利に覆われた大地に腹ばって。

 雀の眼ほどの大きさのカメラのレンズを通して、いくつもの無

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笙野頼子さん、いったいわたしの性別はなんですか?

 十代の終わりに地元中野区内の書店で、ミルキィ・イソベ氏によるきらびやかな装幀のその本に惹かれて手にとり、頁をひらけば文字の大きさが自由自在に変化し、それ以上に紙面を縦横無尽に飛びまわることばに一瞬で恋に落ちてすぐさまレジへとむかい、純文学こそが目指すべき言語芸術のありかたなのだと蒙を啓かれてから、笙野頼子は唯一無二の憧れの存在であった。『タイムスリップ・コンビナート』を読んで沢野千本が辿った通り

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《都市叙景断章》

わたしたちはもう、都市を失ってしまって――、

どこにもない街を、どこにもない風景の胃液が溶かしこんでいくそれらの、鎮静剤の効かない街路をすべるありきたりな恋愛映画の断片が、無惨に、というよりも、紙幣に集られた踝にうちこまれた高層ビル群の、たとえばその表情が、代替可能な無数の窓ガラスに反射しようとして、拒まれている、劣化した接着剤には少しの澱粉も浚われてはいないし、だからわたしは容易にすりぬけるこ

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《都市叙景断章》についてのあれこれ

 ほんらいならこんな馬鹿げたことはすべきではないし、すでに書き終えたこと以上につけたすことばなどないはずなのだけれども、相変わらず馬鹿ばかりがのさばるこの世界で、せめてあの当時書いてしまったものらが、もう少しまっとうにうけいれられるためには、となにかをいわずにはいられなくなってきたので、わたしが書いてきたものが詩かどうかの判断をくだすのはひとまずさき延ばしにするとしても、なぜそのように書いてしまっ

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@Arisa_Iwakawaさんに嚙みついてみた

 いまになって怒りがこみあげてきたので書いておく。昨日、@Arisa_Iwakawa氏の「私は「クィア文学」という言葉をよく使うが〜」というツイートにクソリプを送りつけたわけだが、わたしの主張としては「「クィア文学」なる呼称は不要なラベリングにすぎない」というもので、それについてのツイートの応酬がつづいた。
 そのなかでわたしは「早稲田文学女性号」でレズビアンもトランスジェンダーもあつかわれてはい

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レビュー論争についてあれこれ

 今回のレビュー論争(というか「キャットファイト」)において大人げないのはむしろ伊藤比呂美のほうで、10000を超えるフォロワーの援護射撃を利用してまで山下晴代を攻撃するほどのことだったのか、ましてAmazonレビューを削除させることだったのか、皆目わからない。もちろん山下の、ほとんど文章の体をなしているとはいえない、これで文芸誌に4作も小説が掲載されたとはおもえないほどはなはだ不可解な(ブログに

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フリージア

夢のなかで
四〇〇人の男のペニスを
ずっとフェラチオしていた
オーラル・セックスには抵抗がない
というよりも好きなほうだし
朝から晩まで口のなかを圧迫されていたいとおもう

目が覚めると
四本のペニスが
うようようねっていた
勃起したそれぞれには怒張した血管が巻きついていて
とても肉感的でおもわずそのうちのひとつを両掌で
つかんだ
さきっぽから我慢汁が溢れて
舌をはわせる
愛おしい

果実がみのる

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