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1歳4ヶ月の保護猫コシカを猫伝染性腹膜炎(FIP)から救いたいです!

 埼玉県狭山市に引っ越してきて、5年が経ちます。最初はひとり暮らしでしたが、2019年9月、前橋からひきとったキジトラのシャト(女の子・当時生後1ヶ月半ほど)との生活がはじまりました。お迎えした日こそベッドの下に隠れていましたが、次の日の朝、目が覚めると、枕もとで丸くなって睡る姿をみて、はじめての猫との暮らしへの不安感が吹き飛びました。

 それから1年半が経った2021年5月初旬のある日の夕方、猫の額ほどのドクダミが繁った庭に、勢いよくのびた葉に隠れて丸まっている猫を発見します。よく見ると、お腹のあたりに、毛色の違う小さな猫が複数匹いるようすでした。かかりつけの動物病院に連絡し、この地域で保護猫活動をしている猫カフェやボランティアさんを紹介していただき、次の日の朝から捕獲作戦がはじまりました。
 仔猫2匹はすぐに捕まりましたが、母猫はすばしっこくて、なかなか捕らえられません。捕獲用トラップを2台しかけて、さらに次の日の朝にたしかめてみると、ちゅ〜るにつられたのか、母猫も無事に捕獲できていました。
 乳飲み児だったので、ボランティアさんと相談した結果、親子3匹を、離乳までうちで預かることになりました。先住猫のシャトは最初はおっかなびっくりで、母猫に威嚇されては部屋から逃げていきました。
 一週間が過ぎて、離乳が終わったころ、母猫の避妊手術をしたのですが、どうやら人間には馴れそうにない、根っからの野良だったようで、地域猫として面倒を見ることになりました。
 一方、双子たちは離乳食をモリモリ食べて、二階建てのケージのなかを登り降りしています。そのようすを興味津々で見守るシャトは、どこかお姉さん猫といったふうです。ためしにケージから2匹をだしてみると、部屋中を走りまわり、ケージに登ったり、シャトにお尻を嗅がれたり、そしてわたしの足もとによってきて、撫でてとせがんだりします。その姿をみて、はじめは里親を探すつもりでいましたが、このまま双子を迎える決意をします。
 どうやら先住猫とここまで相性がいいのはめずらしいことのようです。それにどちらか一方だけを里子にだすのはかわいそうにも思われて。

 ボランティアさんのお世話になりながら、2回のワクチンや避妊・去勢手術も終えます。冬になると、3匹で丸くなってソファで睡ります。愛らしくてたまりません。たしかに餌代やペットシーツや猫砂などの費用に、獣医にかかる費用は増えましたが、この子たちが幸せそうにじゃれまわったり、睡ったりしているようすを見ると、そんなことはいっさい気にならなくなります。

 そして今年8月6日、双子の3回目のワクチンを打ちに、かかりつけの動物病院へ、まずは白黒柄のコシカをつれていきました。キャリーバッグもひとつしかなく、車もないので、2匹を一度につれていくことはできなかったので。
 コシカ(男の子)はもともとおとなしく、日に日に片割れのカッツェ(女の子)との体格差が目だってきていました。それでも猫のからだの大きさには個体差があるからと、心配ながらもそこまで深く考えずにいました。でも、腰骨や肋骨も浮きでているし、ごはんをよく食べるわりには、瘦せているのではないか……。
 ワクチンを打つついでに血液検査をしてもらうと、総蛋白(TP)という数値が異常に高井ことがわかりました。猫エイズや猫白血病の恐れがあるとのことで、ひきとってすぐ、検査をし、陰性だったのですが、再度検査することになりました。20分くらいして、どちらも陰性であることがわかります。
 診察室に呼ばれ、獣医師の話を聞くと、脱水やほかの疾患を疑う兆候はないので、もしかしたら猫伝染性腹膜炎(FIP)に罹っている可能性がある、とのことでした。けれど下痢や嘔吐、食欲不振などの症状もなかったので、原因となるコロナウィルスのキャリアではあるが、発症はしていないかもしれないとのこと。そこでウィルスの抗体価を調べる検査をうけることになりました。
 結果の報せが届いたのが8月9日、感染の可能性はあるが、症状はでていないので、発症しているかはまだわからないとのこと。
 翌週にはカッツェのワクチンと血液検査もおこないましたが、こちらはいたって健康そのものという結果でした。
 ただ、8月14日の深夜に、水を飲もうとキッチンへとやってきたコシカの顔の片側がひき攣り、まるで操り人形が糸をひかれるようにして、左前肢を肩の高さよりも高く持ちあげているのです。すぐに抱きあげると、今度は反対側の前肢を持ちあげます。コシカ本人も戸惑っているのか、不思議そうな表情をしています。すぐに症状は治りましたが、翌朝獣医へ連絡すると、てんかんの持病があるのかもしれないとのこと。FIPとは関係はないと思うが、頻発するようなら薬を飲まなければならないともつづけます。
 そして8月22日、お腹を撫でていると、いつもより膨れて硬くなっているように感じて、もしやと思い、次の日獣医のもとを訪れると、腹水が溜まっているとのことで、すぐに抜きとる処置をしました。すべて抜き終えると、総量170cc、しかもFIPに特有の、粘稠性があって少し緑がかった黄金色をしていました。まるでジャスミン茶やお出汁のような……。
「半年、もたせましょう」
 獣医師はそう言います。
 猫伝染性腹膜炎(FIP)は発症すると数週間から数ヶ月で命を落とす、致死率ほぼ100パーセントの恐ろしい病気です。弱毒性の猫コロナウィルスを消化管に保有している猫は多く存在すると聞きます。それが運悪く、不治の病をひき起こすウィルスに突然変異することがあるのです。現在、有効な治療法はなく、対症療法で延命を計る以外にはないとのこと。コシカはめぼしい症状もあらわれてはいないので、早期発見ができっと獣医師はいいます。それでも、日に日に弱っていき、壮絶な最期を迎えるのです。
 その日は腹水を抑える薬をもらって動物病院をあとにしました。
 そうしたことを保護猫ボランティアのみなさんにおしらせすると、日本未承認の新薬を投薬すると、じつに9割以上の罹患した猫が元気に恢復し、完治あるいは寛解させられる治療をおこなっている病院があると教えてくれました。しかしなにより薬代が非常に高価で、100万円もかかるそうです。
 その日の夜、ふたりのボランティアさんが我が家を訪れてくれました。
 どうにかしてこの病と闘っていこう、そう協力を申し出てくださいます。
 都内でそのあたらしい治療をおこなっている病院を紹介してくださったので、次の日(24日)の朝に電話をかけると、担当者が不在なので、おりかえしの連絡を待つことになりました。
 夕方、もう今日は連絡はないかもしれないと諦めていたところに、その病院から電話がかかってきました。
「いまからでも診察できます」
 急いでボランティアさんの車に乗りこみ、練馬区内にある動物病院へとむかいました。19時を過ぎたころに到着し、さっそく体重測定や体温測定、採血がおこなわれ、薬剤の注射もしました。
 体重3.35キログラム(同腹のカッツェは4.1キログラムあります)、体温40.1度(猫の平熱は38度台)。超音波検査もおこなうと、前日抜いたのにもかかわらず、すでに腹水が滲みでていました。
 何日かまえにてんかんのような症状が一瞬だけあらわれたことを話すと、腎臓にも特有の症状がでていたことから、FIPの混合タイプだと判明しました。
 FIPには腹水や胸水が溜まり、食欲不振や発熱、下痢などの症状があらわれるウェットタイプと、腹水や胸水は溜まらないが、腎臓や肝臓に肉芽腫を形成し、黄疸や神経症状などがあらわれるドライタイプ、そしてその両方の症状があらわれる混合タイプがあります。
 猫コロナウィルスがなぜ突然変異を起こすのか、またFIPに罹患する原因などは不明らしく、ストレスや免疫力低下などが考えられるそうです。
 コシカの進行度は中期から後期とされ、だいたい2ヶ月前に発症したのではないか、とその病院の獣医師はいいます。
 混合タイプの治療にはウェットタイプより多い量の薬の投薬が必要で、そのぶん高価になります。いただいた資料によると、毎日同時刻投薬せねばならず、前後1時間は禁食です。投薬から30分以内に嘔吐した場合は全量を再投薬、1時間以内であれば半量を再投薬しなければなりません。投薬の前後2時間はほかの薬もあたえられません。
 2週間ごとの血液検査と毎日の体重測定も欠かせません。体重が増えると、そのぶん投薬量も増えるのです。

「確実に治ります」
 その動物病院の代表はおっしゃいます。
 そのことばを信じて、いまはとにかくこの新薬に頼るしかない。インターネットで調べたところ、従来使用されてきたムティアンよりも、今回投薬を開始するCFNのほうが効果が高いというデータもあります。
 もう、迷っている暇はありません。

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