フリージア

夢のなかで
四〇〇人の男のペニスを
ずっとフェラチオしていた
オーラル・セックスには抵抗がない
というよりも好きなほうだし
朝から晩まで口のなかを圧迫されていたいとおもう

目が覚めると
四本のペニスが
うようようねっていた
勃起したそれぞれには怒張した血管が巻きついていて
とても肉感的でおもわずそのうちのひとつを両掌で
つかんだ
さきっぽから我慢汁が溢れて
舌をはわせる
愛おしい

果実がみのることはないが
幹の根元にはふたつのしわしわの椰子の実が
ときおり蠢いて
ココナッツ・ミルクを爆発させる
化学反応の妙

火口
溶岩流
それらが肉体を襲うとき
とりこまれるであろう
すべてが優しくいたわり
肉体の一部になって空を飛ぶカモメ

テントを支えるクジラの肋骨
フェルトのような肌触りもここちよく
撫でる手つきもどこかせつなげで
甘い香りがあたりをただよう
そしてこぼれる

溺れていった男たちはみな
濁流のさなかで手と手をとりあって
砂漠に辿りつくまえに
貪りあってしまっていて
栄養のぜんぶを大地に還すこともなく巡る潮のながれ
庭をおおった雑草にまぎれて
莟がほころぶ
悦びをどれだけ共有しようと
たったひとりの胃の腑のうちで
ふたたび夢みる
ウロボロス

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