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原書のすゝめ

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語学は楽しい♪ +読書は楽しい♪ =原書は楽しい♪♪ をコンセプトに記事を書いてみました。Let’s enjoy reading in the original language…
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#エッセイ

原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

クマのぬいぐるみは、子供たちの人気者である。たぶん。

子供の頃、私が大切に持っていたのはパンダのぬいぐるみだったと思うが、パンダは中国語で「熊猫」と書くから、まあ同じようなものである。

1957年のクリスマスのこと。当時、BBCでカメラマンとして働いていたマイケル・ボンドは、妻へのクリスマスプレゼントに小さなクマのぬいぐるみを買う。そして、このぬいぐるみにパディントンという名前をつけた。その翌

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原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

1915年5月7日、アイルランド沖を航行中のイギリスの大型客船ルシタニア号が、ドイツの潜水艦によって撃沈された。Uボートから無警告で魚雷が発射され、ルシタニア号は20分足らずで沈没、乗員乗客1198名が死亡した。このうち128名がアメリカ合衆国の民間人であったことから、国内で一気に反ドイツ感情が高まる。ところが、同国は依然として中立を維持、その後、ドイツが再び無制限潜水艦作戦を開始したため、191

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原書のすゝめ:#21 Les scrupules de Maigret

原書のすゝめ:#21 Les scrupules de Maigret

メグレ警視の捜査法は独特である。

犯行現場へ赴くと、状況を観察し、どのようにして犯罪が起こったのか、どのような人物が犯人たり得るのか、なぜ犯行に至ったのか、など人間や物を観察しながら事件を解明していく。

次々に事件を解決するメグレの名声は次第に高まり、のちにこれが「メグレ式捜査法」などと呼ばれることになる。

そして、ロンドン警視庁から「メグレ式捜査法」の「見学」にやって来る警部までいるのだ。

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原書のすゝめ:#17 SHIBUMI

原書のすゝめ:#17 SHIBUMI

私は、読書において道草食子である。

本を読んでいる時、ちょっとした言葉や表現に遭遇すると、それが引き金となって本筋から逸れて他のことを考えてしまう。

そうなると、本の続きを中断して頭の中では別の旅に出ずにはいられなくなるのだ。そしておそらく、私のような道草食子さんや横道逸男くんは案外おられるのではないか、と密かに思っている。

そんなわけで、本を読んでいてもなかなか先に読み進まないということが

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原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince  part.2

原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince part.2

<はじめに>
今回の作品は、原書ではなく、創作です。
前回のお話はこちらです。↓

* * *

Le conte du petit prince Part 2

« Ton avion te ne dit pas lesquelles lui manquent ?, dit le petit prince.
— Non, il ne dit rien.
— Alors, ton avion e

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原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince  part.1

原書のすゝめ:#特別企画 Le conte du petit prince part.1

<はじめに>
今回の作品は、原書ではなく、私の創作です。

第16話で『Le petit prince 』を取り上げた際に、吉穂みらいさんより拙訳による翻訳をご所望いただきました。私は単なる語学学習者であって翻訳者ではないので、到底お受けすることはできないと思いながらも、せっかくのご提案に知らぬ顔をするというのも味気ない話です。

そこで、さっそく本屋に出向いて現在邦訳されている『Le petit

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原書のすゝめ:#10 La fille de Brooklyn

原書のすゝめ:#10 La fille de Brooklyn

Antibes, mercredi 31 août 2016.
À trois semaines de notre mariage, ce long week-end s’annonçait comme une parenthèse précieuse, un moment d’intimité retrouvée sous le soreil de fin d’été de la Côte d’

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原書のすゝめ:#8 Le Noël de Nicolas

原書のすゝめ:#8 Le Noël de Nicolas

フランス語を原書で読もう!

というテーマがあると、十中八九『星の王子さま』がベスト1に上がるのではないかと思う。
サン=テグジュペリの子どもが描いたようなデッサンと一見平易に見えるフランス語に、誰もが初心者でも読めそうな錯覚を覚えてしまうのではないか。

たしかに、フランス語自体はそれほど難しくはないかもしれないが、それでも中級者以上向けではないかと個人的には思っている。ついでに、この作品は語学

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原書のすゝめ:#7 Harry Potter and the Philosopher’s Stone

原書のすゝめ:#7 Harry Potter and the Philosopher’s Stone

読書は、想像力を掻き立てるものである。
とはいえ、大人の想像力に限界を感じることもありはしないだろうか。

世界で爆発的な人気を博したハリーポッター。
児童書にととまらず、大人をも虜にした魔法の書物である。

邦訳で読む場合には、おそらく何の障害もなくファンタジー感を存分に満喫できると思われる。
ところが、原書で読むとなると、これが案外手ごわくなるのである。

例えば次の文。

He (=Albu

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原書のすゝめ:#6 The Mysterious Affair at Styles

原書のすゝめ:#6 The Mysterious Affair at Styles

インターネットでも本屋でも、本を検索すると何人かの翻訳者によって訳されている本が見つかることがある。当然、どの邦訳にしようかと迷うところである。表紙のデザインか、出版社か、あるいは翻訳者か。

選んだ選択肢が翻訳者である場合、読みやすい文章か、それとも文体が自分の好みにあっているか、あるいはその翻訳者が好きだからか、とその理由は人によってさまざまであると思う。

私は名前を覚えるのが得意ではないか

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原書のすゝめ:#5 Ashenden

原書のすゝめ:#5 Ashenden

同じ本が手元に2冊ある。
何故こんなことになったのだろう。

事の始まりは、本を買うのにネットショッピングを頼るようになったことにある。現物主義の私は、日々の購買活動において基本的に現物確認を行う。しかし、物が洋書となると本屋で買いたくても目当ての本がなかったり、そもそも品数が少ないため偶然の出会いというのもあまり望めない。

ところが、インターネットだと販売環境が逆転する。圧倒的な数の出会いが用

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原書のすゝめ:#4 THIS IS NOT MY HAT

原書のすゝめ:#4 THIS IS NOT MY HAT

Jon Klassenの絵本を最初に発見したのは、京都のジュンク堂だった。

私は地元にいても旅先でも、必ず本屋を徘徊する。とくに何かを探しているというわけではなく、ただ回遊魚のようにふらふらと書店の中を泳いで回る。そうすると、突然面白いものが目に飛び込んでくることがある。この絵本もその一つだった。

絵本コーナーの棚でたまたま目に入り、その絵の可愛さに惹かれて思わず手にとってみた。1ページ開いた

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原書のすゝめ:#3 Roseanna

原書のすゝめ:#3 Roseanna

今回は、Maj Sjöwall & Per Wahlööの『Roseanna』を取り上げる。スウェーデンの作家だが、原書が手に入らかなったので、今回は英語で読んでみる。

マイ・シューヴァルとペール・ヴァールーの二人は、刑事マルティン・ベックシリーズを共作で発表したスウェーデンミステリー小説の草分け的な存在である。

前回取り上げた『Travail soigné』の中で、犯人が傑作ミステリーとする

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原書のすゝめ:#2 Travail soigné

原書のすゝめ:#2 Travail soigné

今回は、Pierre Lemaitre の『Travail soigné』を読んでみる。原書はフランス語である。この時点ですでに少ない読者がさらに減った気がする。

くどいようだが、原書を読むといっても語学学習が目的ではなく、原書に触れる愉しさをお伝えしたいというのが目的なので、フランス語に抵抗を示さず読んでいただければと思う。あるいは、これをきっかけにフランス語への一歩を踏みだしていただける方が

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