『肉体と精神を癒して染める、発酵由来のエリクサー』_SHIP
酒、コーヒー、ジュース。
疲労を吹き飛ばしてくれるドリンクは、往々にして強い刺激を伴う。
その刺激が身体に合っているなら、きっと爆発的な回復力を得られるだろう。
けれど、そうでない人も世の中にはいるはずだ。
人間の身体は60%が水分でできている、というのは聞き覚えのある話。
摂取する水分のすべてを何か一色に染めるとなると難しいが、癒されたいと意識して飲むものくらいは自分の意思で決められる。
癒されたい。
休息に何を選ぶかは、一つの立派な自己表現。
着る服を選ぶように、何を飲むかについても選べばいい。
踏み込んでみれば、さまざまな選択肢があるのだと驚かされるはず。
『_SHIP』が提供する「コンブチャ」も、まだまだ世に知られていないドリンクの一つ。
発酵によって生み出された、やわらかな酸味と爽快な後味。
頬を撫でる風のように心地よい刺激は、体と心を同時に駆け抜けていく。
ジャンルは「発酵スパークリングティー」。
お茶をベースに糖類を加え、菌の力を借りて発酵させた微炭酸飲料。
噛み砕いていえば、お茶を発酵させて作るお酒のような飲み物がコンブチャだ。
もちろんアルコールは含まれていないが、口当たりはスパークリングワインに近い。
いうなれば「発酵スパークリングティー」。
製造管理を担う門田 元さんは、コンブチャをそう説明する。
「『_SHIP』は日本で唯一、非加熱でコンブチャを醸造しています。ブランド名はフレンドシップやリレーションシップといった接尾語の「-ship」由来ですね。既存の飲み物が人と人のコミュニケーションを促すように、『_SHIP』でいろんなものを繋げる。そうした想いを込めてコンブチャを造っています」
コンブチャを製造するブルワリーは、埼玉県川口市の工業地帯にある。
何を隠そう『_SHIP』を立ち上げた大泉工場も、元は鋳物業を主体としていた。
時代の変化を受けて鋳物から撤退。経営を引き継いだ現在の社長は、残された工場の敷地を使って食品事業を展開するに至る。
「ファンフード、というのが大泉工場における食品事業の特徴ですね。ビジネスの種を探して社長がアメリカを旅しているとき、最初に見つけたのがポップコーン。街中で見る「ポップコーンを歩きながら食べる」というのは、大泉工場が日本に持ってきた食文化なんですよ」
銃声のかわりにポップコーンの弾ける音がする。
食を通じて平和を作り、みんなが笑顔になる環境を構築する。
そんな心意気から、社長は児童養護施設でポップコーン作りのイベントを開く。
しかし、ポップコーンに手を伸ばさない子どもがいたという。
「理由を聞くと「アレルギーで食べられない」と。アレルギーがどうして発症するのか原因を調べるうちに、日々口にする食べ物がとても大事だと気づきました。そこからオーガニックやプラントベースが会社のミッションと重なっていくわけです」
そのころ、アメリカではコンブチャがスーパーの棚に並び始める。
年月を経るにつれ、アメリカ国内でのコンブチャ需要は拡大していく。
身体に優しい新たな飲み物、コンブチャ。
日本でも取り扱おうと社長は動くが、発酵に使われる菌の関係から規制が厳しく、並行輸入を受け持ってくれる工場は見つからなかった。
小さく始めて、後に拡大。
それができるのは自社製造しかないと判断し、ポップコーン製造機の工場を改装してブルワリーを設営した。
「最初は小さいタンクだけで、引っ越して間もない時期はスカスカでした。卸先が増えて機械も増えたので、今はかなり設備が整いましたね。今後も事業として成長させながら、日本のコンブチャブランドとして個性を際立たせていきたいと思います」
海外では2000以上あるコンブチャブランドだが、日本では両手で数えられる程度しかない。それだけ参入障壁が高いのである。
日本にコンブチャを広めるため、そして笑顔と健康で人々を繋ぐため、『_SHIP』の挑戦は続く。
菌が相方。
コンブチャの製造はブルワリーの中ですべて完結する。
茶葉からお茶を抽出し、糖類とフレーバー、酢酸菌と酵母から作られる物質「SCOBY(スコビー)」を加えて発酵。飲める基準の清涼化を行って瓶に詰め、最後に瓶にチェックを付ける。
これらの実作業を担っているのが門田さんだ。
元から大泉工場の社員だったわけではなく、コンブチャ事業がきっかけとなって入社した。
「元々は関西で藍染をしてまして。コンブチャをボトルで売るにあたって人手が足りなかったところに僕が応募した形です。入社が決まるまでコンブチャは飲んだことがなかったので、実際に飲んで好きな味で良かったです(笑)」
染物職人としてのキャリアを過ごしていた門田さん。
無縁だったコンブチャ事業に転職した理由には、「発酵」が関係していた。
「染物で使われる染色液は、発酵で醸された液体を使っているんです。それで布を染めて、その布を使って服を仕立てていく。けど、もどかしさもありましたね。他の職域を介在させずに、自分が発酵させたものをそのまま売りたい思いがあったというか」
染色液の発酵過程では、五感を使って発酵の度合いを確認する。
目で見て鼻で嗅ぎ、舌で舐めて変化を把握する。
飲料とその感覚が結びついたのは、あるエピソードから。
日本酒の地酒を扱う酒問屋の息子が親に藍染を贈るため、工房を訪れた。
門田さんを真似て染色液を口に含んだ彼は、「意外と美味しい」と呟いた。
飲料の方が、自分のやっていることにまっすぐ向き合えるのではないか。
しかし、酒はそれほど強くない。
悩む中で出会ったのがコンブチャだった。
「染物は水の世界で、お酒が飲めなかったら技術的にも向上しない、みたいな考え方もありました。でも自分は明日のパフォーマンスを考えて動きたいタイプで、健康志向のコンブチャと世界観が合致しましたね。ここならやってきたことも活かせるし、自分みたいにお酒が飲めなくて悩んでいる人の解決策を創り出せるかなと」
業種が変わっても、発酵とともにある生活は変わらない。
場を整えたら、あとは菌にお任せ。
菌を相方に、コンブチャを造り出す。
「頑張る」に選択肢を。
多様なフレーバーを揃え、『_SHIP』はコンブチャを提供している。
ブルワリーからボトルで出荷されるため、1本単位で気軽に購入可能だ。
基本となるフレーバーは全4種。
・ORIGINAL
白ぶどうや洋梨を思わせるフルーティな風味。これがすべてのコンブチャのベース。
・YUZU
徳島県産木頭柚子を漬け込んだコンブチャ。清涼な柚子の香りが特徴。
・SHISO
赤紫蘇から抽出された赤いコンブチャ。優雅な刺激に浸れる。
・HOP BREEZE
様々な柑橘を組み合わせ、ホップの良さを引き出したコンブチャ。ビールの代わりに親しまれることも。
コンブチャとして日本初のオーガニック認証を『_SHIP』は持つ。
身体の内側からの環境美化を目指す『_SHIP』にとって、健康は重要なテーマだ。
そうした「健康的に暮らしたい人」と同じくらいコンブチャを飲んでほしいのが、「頑張りたい人」だという。
「頑張りたいにも種類があると思うんです。「24時間働けますか」みたいな頑張り方じゃなく、命を削らない範囲で頑張りたい人もいる。そういう人の背中を押していきたい。気分を変えたいときのドリンクとして、自然な味わいで癒されるという選択肢があってもいいですよね」
休息に何を選ぶかは、一つの立派な自己表現。もし新しい刺激を選びたいなら、『_SHIP』のボトルを手に取ってほしい。あなたの取った選択によって、未来は描かれていく。
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執筆者:廣瀬慎
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