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【読書感想】ポラリスが降り注ぐ夜
一年ほど前の話になるが、李琴峰著の『ポラリスが降り注ぐ夜』を初めて読んで、これは色んな意味で面白く興味深い小説だと私は思わず唸った。今回はその『ポラリスが降り注ぐ夜』について書いてみようと思う。
この本は、新宿二丁目に店を構える女性のためのバー「ポラリス」を軸に、多様な性と生を描いた短編集。ここにおさめられている七つの物語は、さながら北極星を中心に天空を回る北斗七星のようである。(この北極星と七
最期の音 ――たとえ意識がなくなろうとも
先日の朝、この時期に珍しく鶯が鳴いていた。
随分近くから聞こえるので驚いていたら、庭師さんが落ち葉掃除をしながら鶯の鳴き声に呼応するようにホーホケキョと口笛で真似る。すると鶯は、更に鳴き返してきた。そのやり取りの応酬が何度か続き、庭師さんの口笛の上手くなさがこれまた絶妙だったのも相まって、大変に微笑ましい光景だった。(下手なわけでもないが本当に絶妙に上手くなかったのだ)
この体験をした日、敬愛
その歌声はどこから来るもの
私は話す時と歌う時で、全く別人の声が出る。
普段生活していて、声を出しても女性として疑問に思われたことは一度もない。それが「歌」になると一変し、性別不明になる。しかも声域は男性なのだ。昔ボイストレーナーの下に通ったことがあるのだが、彼もその様子に息を飲み「歌い出した瞬間、鳥肌が立った。さっきまでの君が消えて、性別も誰なのかさえも何も分からなくなった」と言った。海外から通いに来る弟子もいるほど数多
山城の春に思いを寄せて
過去から現在に至るまでをどう振り返っても接点が見つからないのに、なぜか不思議な縁を感じる場所というのは、大なり小なり人それぞれあるのではないだろうか。
私にはいくつかそのような場所がある。
その中でも一番そういった「度合い」が強いのは、ある山城の城跡だ。
そこを初めて訪れた時の私は、その場所の歴史がどのようなものかも、城主が誰だったのかも、何も知らない状態だった。いつもひと気のない鬱蒼とした曰
大切な思い出の行く末
せっかくクリスマスなので…と思ってツイートした、こちら。
今では焼失してしまったノートルダム大聖堂。かつて12月のパリで、夜のノートルダムへ訪れたことを思い出していた。昼とは違う聖堂内の雰囲気と、ノエルの空気感が醸し出す特別さが印象深く残っている。
そのパリ滞在の際、蚤の市を一人でブラブラしたことがあった。その時の話を今、ここに改めて残しておきたい思う。
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通りは雑多なモノ・モ