石神マリエ@ご自愛エッセイ

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石神マリエ@ご自愛エッセイ

根暗で有名です。火曜、金曜に更新しています。    あなたの心を突き刺し、抱きしめる言葉たち。     https://www.instagram.com/gamiyoga.0

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さようなら、お花のお家

私、生まれてから今まで10回ほど引っ越したことがある。本当に幼かった頃の記憶にある「初めての家」は、3才から6才くらいまでの幼少期に住んだ、田舎でも都会でも無い街の…

SNS行方不明事件について

これまた小さな事件が起きた。 私の大好きなバンド、KEYTALKのフロントマンが体調不良となり、一定期間の休養に入ると発表されたのだ。それは突然のことのようで、実は大…

ルーツ トゥ ルーツ

「この世の全ては、大したことないのよ。」 と、83歳の祖母が言った。 祖母は私と同じ、魚座のAB型。一言で言えば最強に献身的な、自由人である。今は普通のおばぁちゃ…

memo1〜3

1. 寝ている間さえも痛みを感じているような、とてつもない夜が私にはあった。朝になると汗や涙で枕が濡れていて、自分の泣き声で目が覚めた。隣で眠る物体には何も感じな…

マイブーム

一日に一つずつ 恐れていることにチャレンジする。 これが最近のマイブームだ。 たとえば、行ったことのない焼肉屋でいちばん高いメニューを食べてみるとか(3秒ロースと…

カラフル

「うちの家族はみんな変わっているよなぁ」 そう兄が呟いた。彼はぼぅっと台所に立ち、麦茶を飲みながらこちらに話しかけてきた。 少し考えて「そうね。確かにね。」と私…

正解はない

私には5歳の息子がいる。 名前はレイ。 夕方、レイが小さな事件を起こした。 彼はよく絵を描いているのだが、今日はダイニングテーブルにカラフルなペンを並べ、大きな画…

雲が進む

それはもう本当にゆっくりと、雲が進む。 のろまな雲と私の間には静かな風が通ったり、緑がさわさわと音を立てて揺らいだり、部屋のカーテンには木漏れ日が写り不規則に靡…

褒めてもらうこと

当たり前の仕事や 当たり前の家事や 当たり前の育児の中には どのくらいの細々とした苦労が詰まっていたのだろうね。それはたとえば、土砂降りの中のゴミ捨てとか、50分立…

優しさの味を知る

昨日、熱を出した。(私が) 朝からなんだか身体が動かず横になると、みるみるうちに体温が上がり、こりゃ参ったぞ。と慌てて午後の仕事をお休みした。身体は震え上がると…

ぼぅっとしてちゃ、ダメなんだ。

たとえば、大地震の予兆を感じて犬や、猫や、鳥なんかがその日、その時だけ普段と違う素振りを見せていた。なんてことはよく聞くよね。それは「本能」のような「勘が鋭い」…

生死

君は毎朝、毎晩、死んでいいんだ 谷川俊太郎の「詩の本」を読んでいて 革新的な一行に出会った。 この一行をどう頂くか。 私の中で浮き上がった答えは一つ、 「死」とは「…

小さな事件

今日は、母の誕生日だった。 私のお母さんはめちゃくちゃファンシーである。というのも普段はお花の先生でありつつ、趣味ではベリーダンスを儚く踊り、なおかつラジオのパ…

みーちゃん

些細な痛みでも 参ってしまう日があるように。 人間の体は嫌なほど正直にできている。 心は元気なふりをして嘘ばかりついてヘラヘラしていても。やっぱり痛いことや、怖…

おかあさん

「おかあさん」というのはとてもじゃないけど不自由だ。それは「おかあさん」という名の強力な価値観が社会にあって。「おかあさん」という存在を知らない人なんていないか…

正解の少し先へ

ゴミを捨てた、捨てない 電気を消した、消さない 言った言わない、違う違わない そういうちっぽけなことで傷つけあったり、大切な者を失ったりするのが人間だ。 まぁるい…

さようなら、お花のお家

さようなら、お花のお家

私、生まれてから今まで10回ほど引っ越したことがある。本当に幼かった頃の記憶にある「初めての家」は、3才から6才くらいまでの幼少期に住んだ、田舎でも都会でも無い街の住宅街。小さな平屋の賃貸だった。私はそこで父と母と、五個上の兄と4人で暮らしていた。そこは賃貸にしては立派な庭が付いていて、いつも庭中綺麗に花が咲いていたのをよく覚えている。というのも、父はとにかくマメで、庭いじりが趣味だった。春になる

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SNS行方不明事件について

SNS行方不明事件について

これまた小さな事件が起きた。

私の大好きなバンド、KEYTALKのフロントマンが体調不良となり、一定期間の休養に入ると発表されたのだ。それは突然のことのようで、実は大きな前振りがあった。

というのも、その発表の少し前にコトは起きていた。当人はこの時代へ「衝撃」とも呼べる形で行動に出ていた。なんとある晩突然、当人の全SNSがおもむろに削除されてしまったのだ。フォロワーが数十万人いた筈のInsta

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ルーツ トゥ ルーツ

ルーツ トゥ ルーツ

「この世の全ては、大したことないのよ。」

と、83歳の祖母が言った。
祖母は私と同じ、魚座のAB型。一言で言えば最強に献身的な、自由人である。今は普通のおばぁちゃんとしてひっそり暮らす彼女だが、過去には倒産しトンズラした旦那の代わりに借金2000万を返済してきた。かなりパンチの効いた女である。そんな祖母と話しているといつも「私のルーツはここから来てるんじゃないかなぁ」と思う。そんな祖母とした今日

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memo1〜3

memo1〜3

1.
寝ている間さえも痛みを感じているような、とてつもない夜が私にはあった。朝になると汗や涙で枕が濡れていて、自分の泣き声で目が覚めた。隣で眠る物体には何も感じなかった。朝が来てしまったことや、今日が始まるということの事実を受け入れ絶望することから始めた。そんな過去には戻れないし、戻らなくていいと思えるようになった。

色々なものとサヨナラをして私はようやく大人になった。今思えば、人に必要なのは「

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マイブーム

マイブーム

一日に一つずつ
恐れていることにチャレンジする。

これが最近のマイブームだ。

たとえば、行ったことのない焼肉屋でいちばん高いメニューを食べてみるとか(3秒ロースという名前の生肉だった)知らない道を運転してみるとか、面倒な人をフルシカトしてみるとか、子供を預けて出掛けてみるとか。それからSNSから数日間消えてみたり、保護者会の隣の席の人にボールペンを借りたり。

些細なことから、大それたことまで

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カラフル

カラフル

「うちの家族はみんな変わっているよなぁ」

そう兄が呟いた。彼はぼぅっと台所に立ち、麦茶を飲みながらこちらに話しかけてきた。
少し考えて「そうね。確かにね。」と私もぼそり。そういやうちの母はこのエッセイにも度々登場してきたが、いつ会っても全身花柄のピンクちゃんだ。趣味でベリーダンスを踊る永遠のハタチ(60歳)。はたまたお堅いサラリーマンだった父は、定年退職後Instagramにハマってなにやら農家

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正解はない

正解はない

私には5歳の息子がいる。
名前はレイ。
夕方、レイが小さな事件を起こした。

彼はよく絵を描いているのだが、今日はダイニングテーブルにカラフルなペンを並べ、大きな画用紙を持ってきてお絵かきを始めた。ここまではいつも通り。普段と違うことといえば、自分の席ではなくパパが座る席に腰掛けていたことくらい。せっせと何かを描く、集中した様は彼の長所でもある。
そんな彼を横目に私はいつものことだと、何事もなく洗

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雲が進む

雲が進む

それはもう本当にゆっくりと、雲が進む。
のろまな雲と私の間には静かな風が通ったり、緑がさわさわと音を立てて揺らいだり、部屋のカーテンには木漏れ日が写り不規則に靡いていたりする。その様子を眺めている私はいつもよりもロクデナシっぽい感じ。脳みそが物事を感じる速度は緩やかになって、心にはモラルがなくなって、何もかもどうでもいい感じ。そうしているうちにただぼぅっと窓の外を眺めていたあの頃を思い出す。
そう

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褒めてもらうこと

褒めてもらうこと

当たり前の仕事や
当たり前の家事や
当たり前の育児の中には
どのくらいの細々とした苦労が詰まっていたのだろうね。それはたとえば、土砂降りの中のゴミ捨てとか、50分立ちっぱなしの満員電車とか、なかなか帰れない終業後の先輩のトークとか。はたまた泣きながら抱っこをせがむ幼い息子と、スーパーの床で泣き出す幼い娘を連れての買い物とか、全てに反抗してくる娘の反抗期とか。

泣きたくなっちゃうような、そんな細々

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優しさの味を知る

優しさの味を知る

昨日、熱を出した。(私が)
朝からなんだか身体が動かず横になると、みるみるうちに体温が上がり、こりゃ参ったぞ。と慌てて午後の仕事をお休みした。身体は震え上がるとともに、身体の中にはごぉーっと音を立て毒が移動していくのが分かった。節々がミシミシとひび割れていくようで、首や肘や、指はあまりの痛みに声が漏れた。必死でポカリを三本飲み切っても汗が出ず、毛布に包まるも足先はキンキンに冷たくて。身体は何時間も

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ぼぅっとしてちゃ、ダメなんだ。

ぼぅっとしてちゃ、ダメなんだ。

たとえば、大地震の予兆を感じて犬や、猫や、鳥なんかがその日、その時だけ普段と違う素振りを見せていた。なんてことはよく聞くよね。それは「本能」のような「勘が鋭い」などのイメージがあると思うのだけど。私はそれが、少し違うと思うんだ。

動物たちの勘が鋭いのではなく、人間側がただただ衰えてしまっただけではないか?

というのもあの、
「虫の知らせ」や「第六感」などという言葉は、まだこの社会にも残っている

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生死

生死

君は毎朝、毎晩、死んでいいんだ

谷川俊太郎の「詩の本」を読んでいて
革新的な一行に出会った。
この一行をどう頂くか。
私の中で浮き上がった答えは一つ、
「死」とは「味方」のようだなと。

あなたはこの一行に何をもらう?

私にとってこの世界は、とても不確かだという感覚がいつもついて回っていた。それは、「昨日まで信じていたことが一変する。」なんてことがいくらでもあるからだ。「僕は、ポリシーを持たな

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小さな事件

小さな事件

今日は、母の誕生日だった。
私のお母さんはめちゃくちゃファンシーである。というのも普段はお花の先生でありつつ、趣味ではベリーダンスを儚く踊り、なおかつラジオのパーソナリティもこなすミラクルお調子者。そうかと思えば実は裏側で介護のようなことをしている。癌や精神病である身内の看病をせっせとこなしながら生きているのだ。さわやかな風が吹く中にも、どこかドシッとした幹があるような、へこたれないお母さん。

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みーちゃん

みーちゃん

些細な痛みでも
参ってしまう日があるように。

人間の体は嫌なほど正直にできている。

心は元気なふりをして嘘ばかりついてヘラヘラしていても。やっぱり痛いことや、怖いことや、楽しくないことばかりの毎日を歩いていたら、病気になるようにできているんだ。それをわたしは、神様の優しさだと思う。

神様は言った。「この世界には辛いことが沢山あるから。」って。人間が我慢しすぎないように、前を向いて生きていける

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おかあさん

おかあさん

「おかあさん」というのはとてもじゃないけど不自由だ。それは「おかあさん」という名の強力な価値観が社会にあって。「おかあさん」という存在を知らない人なんていないからなのかも。

「おかあさん」は一つのモラルや、ルールに近いのかもしれないね。たとえば「お母さんが料理を作る」とかってガチガチのルールがあるみたいで。そこからはみ出した人は少し「出来損ないのおかあさん」みたいになる。モラルな世界。それはやっ

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正解の少し先へ

正解の少し先へ

ゴミを捨てた、捨てない
電気を消した、消さない
言った言わない、違う違わない

そういうちっぽけなことで傷つけあったり、大切な者を失ったりするのが人間だ。
まぁるいものをすぐに、二つに割りたがる。

それは私たちは常に自分が一番で、相手が二番にあるからだろう。そしてそれをみんなの心や身体はよく知っているのに、自分だけが知らないふりをして偽善ぶっているんだろう。
都合のいいもんだ。

いつだって、自

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