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新しい小説を書きたい。シーンを作りたい。仲間が欲しい。

昨日のの記事↓↓の補足記事です。

昨日は
「私の愛する純文学が、インターネット時代において廃れかけていることが悲しい。でも、インターネット時代の今、早くて分かりやすいコンテンツが好まれるのは、時代の潮流だから仕方ない。だから「ネット時代にも読んでもらえる純文学」を作るしかないよ」という話を書きました。

昨日の記事は本当に、私の2018年の目標でありここ最近のnoteの集大成だし、リスクもとった文章を書いたので、ぜひ読んでいただきたいのですが、

昨日書き足りなかったこととして、

いや、ゆうても、純文学が読まれなくなったのは純文学側の責任もあるよ」ってことがあります。

■「良いものを作ればみんな受け入れてくれる」ほど、みんな暇じゃないよ。

第一に、コンテンツ品質以外の部分の問題。

純文学に携わる人(プロもアマも)と話す機会は私もほんのちょっとはあるのですが、
「良いものを作ればみんな受け入れてくれる」と素朴に信じてる(だけで動かない)人って、いっぱいいるんだよね

(ゆうて私も半分くらいは信じてるんですけどね……)


オペラ業界についての山野 靖博さんのnoteもほんっと同じ事が書いてあった。
https://note.mu/yamanononote/n/n44c74c7e226a

クラシック音楽がオペラの会場にきてくれる人を、たくさんふやしたいわけだけれど、どうしたらいいんだろうと話をしているとたまに「オペラは素晴らしいんだから、残って当然なんだ」とか「いちど触れてもらえればクラシック音楽の価値は理解してもらえる」とか「わたしはあの前奏曲を聴くとワクワクしてきて、身体にエネルギーが満ち溢れる。音楽には力がある(だからたくさんの人もその魅力に気づいてくれるはずだ)」みたいなことを言う人がいる。

まさにこれ、純文学も……!

たとえ小説自体のクオリティが素晴らしくても、

作家・編集者・出版社がSNSをやってないorやってても下手/装丁がダサい/タイトルがダサい/Amazonの在庫がすぐ切れる…… 

など、コンテンツの品質以外の部分での工夫を怠れば、そりゃ当然、時代に取り残されるわ。

もう一つは、コンテンツそのものの問題。

■どんなに文章が巧くても、古臭い小説家は、デビューする意味ないんじゃないか。

これは、意見が分かれるところだけど、私の意見は
(少なくとも文学は)「新しくなければ/時代性を汲んでいなければ、わざわざメジャーデビューする意味は無い」というものです。

コンテンツの量なんかもうとっくに飽和してて、青空文庫に入ってる名作を読むだけでタダで一生潰せるくらいの小説が溢れてるのに、わざわざ2018年の文壇に新規メンバーを入れるとしたら、やっぱり「新しい小説を書く人間」「2018年にしか書けない小説を書く人間」のみなのではないか。

バンドとか演劇はいいんだよ、別に。

ビートルズはもういないから、ビートルズの生演奏はもう永遠に聞けないんだから、ビートルズそっくりのバンドが2018年に出て来てライヴをじゃんじゃんしたって、別にいいと思う(売れるかは知らないが)。
演劇も同様。シェイクスピアと、シェイクスピアを当時から演じる劇団はもうとっくに無くなってるから、2018年にシェイクスピアを演じる劇団があったって、全然いいと思うんだ。

でも、小説は違う。小説は、作家が生きてようが生きてまいが関係ないメディア。要は、今生きてる作家にとって、全ての死んだ作家がライバルだ。「今、生きてる」だけでは、アドバンテージたりえない。

太宰治の小説が、1mmも劣化せずに、完全状態で2018年に保存されているというのに、太宰そっくりの小説を書いて2018年の文壇にデビューしようと思ってる若者は、一体何を考えてるのか(注:こういうことやってる小説家ワナビーは死ぬほどいます!!)

あのね、わたしはね、あんたの小説じゃなくて、太宰読むよ。

だって、太宰を読めるんだもん。タダで。青空文庫で。

……そういう奴って、ちょっとスマホ出したりSNSで承認欲求とか自意識のこと書いて、「現代の若者心理」書いた気になってるけど、その程度じゃ全然ダメだから。そのテーマも手垢がついてるから。

そういう奴って、不思議なことに、文章はめちゃめちゃうまいんですよ。でも、上質なコピーも所詮コピー。

私は
「うまくて古い小説書き」より
「へたくそで新しい小説書き」に高い価値を置きます。
そして私自身も後者です。

そして、純文学というフォーマットの上で「新しさ」を常に更新していかないと、当然、時代は、純文学というフォーマットを見捨てて行くのではないか?

■今の文壇は、新しいものを受け入れる体力はあるのか?

しかし、ぶっちゃけ、えてして、文壇って、「へたくそで新しい小説書き」じゃなくて「うまくて古い小説書き」を迎え入れるんです。それは、純文学界が本当に体力がなくなってきて、新陳代謝を恐れてるのかもしれません。安全牌で「分かりやすい、評価の安定した、売りやすいもの」に冠を与えようとしてて、問題作、売れるかよくわかんないもの、ちょっとブロウクンすぎるものには、冠を与えない傾向にあるように思う。(あるいは単に私が現在の文壇の評価基準を呑み込めていないだけかもしれない。分からないが。)


……ここまでをまとめると、『純文学が下火なのは純文学側にも落ち度がある。それは「1コンテンツをとりまく環境が古い」「2コンテンツそのものが古い」「3純文学界隈が新しさを恐れている」の3点だ』という話でした。

ここからは、「じゃあ、これらを解決するために、どうやって新しい純文学をつくればいい?」という話を書きます。

■新しいものを書くにはどうしたらいい?

数年前に文藝賞を受賞した今村友紀(本名の石井大地で起業家としても活動中)が、

「『小説をかくために小説をかく』のがいちばん無意味なはずなのに、そうしている小説家志望が多すぎる。
AするためにAするのはおかしい。AするためにBするべき」
と話していた。

つまり、小説を書くために何か別なことをしろ、ということだ。
別にBに当てはまるものは「バックパッカーで一人旅」とか「壮絶な虐待」とかじゃなくていい。別にヤバい体験してなくても小説家になれるに決まってる。

「今の自分」と「今の時代」を見つめられる行動なら何でもいい。少なくともも若者は生きてるだけで新しいもの書けるチャンスが老人より圧倒的にデカい。

ちなみに、私にとっては、ネットに文章を書きまくることや、ライヴをして言葉を投げることが、Bだった。

■新しい小説って、どんなの?

新しさって、別になんでもいい。大きいところでも、小さなところでも、一個新しければ、もう十分それでいい。

お題でもいい。
(愛と死と性を書くのが純文学の定番だけど、「お金(と宗教)」をテーマに持ってきた「おしかくさま」はもうそれだけで新鮮だったよね)

文体でもいい(町屋良平さん、プロット的には超平凡な恋愛小説なんだけど本当に文体は個性が爆発している)

時代性でもいい(津村記久子さんは今働いてる人の日常を本当に面白く書いてて、派遣小説とか仕事小説って言われてるよね)

これまでにない魅力的なキャラが出てくるでもいい(「こちらあみ子」のあみ子の唯一無二性って何なんだろうね)。

町屋良平さんや今村夏子さんに関しては、私は「唯一無二の個性をもった書き手だ」と思ってるけど、それは私が単に勉強不足なだけで、元ネタがあるのかもしれない。でも私にとっては新鮮だった。

とにかく、私自身が超飽き性だから、読んだことないものが読みたいんだ。

そして、書きたい。

■一緒にシーンを作ろうぜ!!!!

さて、ここまで読んだ小説書きのみなさんは、ワクワクしてるんじゃありませんか。あるいは、ちょっとムカついたり、猛烈な反発心を感じたり、落ち込んだり、死にたくなったりしてるかもしれないね。

そして、小説を書かない皆さんも、渋澤を応援したいと思ったり、一緒に何かやりたいと思ったり、あるいはこいつウゼえなとか口ばっかりで小説は下手だよなとか何を分かった気で言ってるんだとか思ってくれたら嬉しいです。文章で他人の感情を動かせるって本当に尊いことです。


……わたし、創作に年齢はあんまり関係ないと思ってるんだけど、どんなジャンルであれ「新しいことをやりたいと思ってる≒精神が若い」人が好きです。変化を恐れた瞬間から老人です。

というわけで、精神が「若手」の人、もはや小説家でもそうじゃなくてもライターでも編集者でもどんなジャンルの芸術家でも批評家でも応援者でもイベンターでもこれらすべてのワナビーでも何でもよい、というか、むしろ他ジャンルの人に関わってもらった方が強い、と思うので、なんか、「せっかくここまで読んでくれた人と、気軽に関われるようにしたいな~」って思ってます。

何か思うことがあった人は、この記事にコメントか、info@rayshibusawa.her.jp にメールとかしてくれると嬉しいです。


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