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釣り堀のエッセイ。

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なんで釣り堀でカッコつけてんの? 誰を意識してんの? 見てるのじいさんと魚しかいないんだけど。
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鳩に棲みつかれてから追い出すまでの話

鳩に棲みつかれてから追い出すまでの話

さて、今年の春に引っ越した。

引っ越したので前の家の話をする。
1年だけ住んでいた家だ。

前の家の賃料、驚きの3.7万円。安い。
共益費5千円を合わせても4.2万円。格安。
大阪市内、御堂筋沿線、1DK、風呂トイレ別、クリーニング済、キッチンは新品。
エレベーター無しの4階だったことを考えても、好条件だ。

更に入居直後に壊れたエアコンは、大家さんのご厚意で翌日新品に取り替えられた。ちょっと怪

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裁判所で名の変更をしました

裁判所で名の変更をしました

 親との確執があり、改名に至りました。
 わたしの準備物と手続きの詳細を書きます。
 今苦しんでいる誰かの一助となりますように。

1.背景 わたしの名前は、両親が占い師に相談して決めたものだ。占い師とは母と祖母が傾倒している人だった。結婚相手を決めるのも、引っ越しするのも、学校も、会社の取引も、全部その占い師が相性を判断して決める。
 占いの内容は姓名判断と四柱推命と、そのほか独自の勘を混ぜたも

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彼氏のはなし(どうも良い人のふりを13年間続けているらしい)

彼氏は出会ってこの方ずっと良い人。
常識人という意味でも、優しいという意味でも、良い人。

それを褒めると、照れ隠しなのか、「良い人のふりやで」と言う。良い人のふりが13年も続いてるなら、正真正銘良い人に違いない。

出会って13年
付き合って10年
ずっと良い人。

今日は彼氏がどれだけ良い人か、のろけたいと思う。

たとえば。尿意爆発寸前に最寄駅でそれを在宅の彼氏に伝えると、先に玄関のドア開け

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スーパーの年末年始

近所のスーパーが3店舗とも、
三が日がお休みだった。
良いことだと思う。

少し前まで、スーパーだろうと百貨店だろうと、年末は通常通り営業して、年始も元旦から初売りをする。
そういう日常と変わりない年末年始に、十数年ほど、うんざりしていた。

年末の29日か30日は時短営業、31日は休み、年始も三が日は休みであってほしい。
そうして町中が静かになり、お寺と神社にだけ、光が灯る。
そういう田舎の年末

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良いお年を

「良いお年を」という言葉が好きだ。

「良いお年を」お迎えください。かもしれないし、
「良いお年を」お過ごしください。かもしれない。

「お迎えください」や「お過ごしください」まで言ってしまわずに、
「良いお年を」とだけ、口々に挨拶する、日本の年の暮れが好きだ。

来年のことかもしれないし、
残りわずかな今年のことかもしれない。

「かもしれない」から、
どっちのことでもあると思いたい。

来年の

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電子レンジ

去年の秋に電子レンジを買った。
いままでは中古のもらいものを使っていたのだけれど、引っ越しを機に新しいものを購入した。
それはそれは何日も悩んだ。こっちはあの機能がある、そっちはどんな値段だとたくさん検討して、今のものに落ち着いた。

新しい電子レンジなのだ。
大切に使いたいし、いつまでもキレイでいてほしい。
そう思って、こまめに掃除していた。

できるだけラップを使ったし、庫内専用マットなんかも

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エレベーターのジレンマ

エレベーターのジレンマ

マンションのエレベーターがちょっと苦手だ。
もっと言うと、マンションのエレベーターで見知らぬ人と同乗するのが苦手だ。

同じマンションに住んでいる、
すれ違えば頭を下げるぐらいはして、
だけど言葉は交わさない。

嫌われると面倒だし、
親しくなっても面倒。

そういう他人と、狭い箱で、ほんの数分を過ごす。できれば避けたい事案。

自分が乗ってるところに、ひとが入ってくる。
これは避けられない。

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わたしのヒーロー

わたしのヒーロー

わたしの初めては、小学5年生のときです。

一般的に早いぐらいだったと思います。
すでに、当時の同級生にも1人か2人経験者が居るのは知っていたけれど、悩みを打ち明けることはできませんでした。

想像以上の痛みに泣いてもがきましたが、助けはありません。
ただ、「はやく終われ」と念じるばかりでした。喜びはひとつも感じられず、ベッドのシーツを握りしめて、痛みを逃すことだけに神経を集中させていました。しか

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機械的なワークじゃなかった

機械的なワークじゃなかった

携帯会社のコールセンターに勤めていたことがある。

–––というと、「クレーマーが多いんでしょう?」「マニュアル仕事なんだってね」と返されることが多い。どうかすると、「人を騙してお金を稼ぐ仕事なんて最低」となじられることもあった。

そのどれに対しても「ちがうよ」とハッキリ否定するのだけど、あんまり信じてもらえない。

まぁ、いいか。

とそのたびに思う。

あの仕事の喜びも、怒りも、哀しみも、楽

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赤信号はちょっと注意して進め、と父に教えられた話

赤信号はちょっと注意して進め、と父に教えられた話

青は進め、
黄色も進め、
赤はちょっと注意して進め。

それが父の最初の教えだ。

1868年に世界初の信号機導入から1世紀、
1930年に日本に信号機導入から半世紀、
世界各国の交通法と教育は必ず
「青は進んでもよい、赤は止まれ」
と伝えていたことだろう。

赤で進むのは闘牛か野蛮人ぐらいのものだ。

ところが、齢5歳のわたしに父が教えたのは前述の通り、
「赤はちょっと注意して進め」だった。

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