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エッセー
一匹狼について

 「一匹狼」という言葉がある。狼は普通家族で行動するが、成熟した子供はオスもメスも家族から離れ、パートナーを見つけるまで一匹狼となって荒野をうろつく。一匹で獲物を仕留めるのは大変で、その時期は餓死する危険も高いという。もっとも、いずれはパートナーを見つけて子供を授かり、集団生活に戻るわけだから、その孤独は一時的なものとなる。しかし、飢えた狼は常に追い詰められた状態で、この時期はサバイバーとしての力を身に着ける貴重な時間ともいえる。

 この「一匹狼」を人間に当てはめた場合、自然の中でサバイバーとして生きていく人を見つけようと思ったら、横井庄一やランボー、自衛隊の特殊訓練、南米ジャングルのサバイバル体験ツアーぐらいなものだ。彼らは単独で水や食い物を見つけて生き抜く必要があるが、祖先帰りしただけの話だろう。近頃遭遇する飢えた熊さんたちも、同じサバイバー仲間だ。ところが、文明にどっぷり浸かり、長年社会生活を営んできた人間だって、無理やりサバイバーにされちまうときがある。例えば、街を破壊され、食糧の搬入を断たれたパレスチナ市民は、一人一人がサバイバーと化し、一匹狼として食糧を求めてうろつく。もちろん、日本人にだってサバイバーや一匹狼はいる。重篤な病気に罹り、生き延びている人々をそう表現することがあるが、その代表的な病気は癌だろう。

 癌細胞は、取り切れずに血液やリンパに入り込んだ時点で、その人は近いうちにサバイバーとなり、同時に一匹狼にもなることを覚悟しなければならない。これらの細胞が抗癌剤や免疫力で消滅しなかった場合、どこかの組織に転移する可能性が高く、しかもスピーディに増え続けるから、色々な臓器に広がっていったりする。そうなってしまったら完治は望み薄で、いずれは死ぬことになり、医者は積極的な治療を諦めて延命治療に方向転換する。この時点で、患者はどれだけ生き抜けるかという癌サバイバーとなり、同時に消極的になった医者の様子を見て、自分が一匹狼になったことを実感する。医者すら諦めれば、他の誰も助けてはくれない。あとは宣告された余命期間、自分の運と体力で付きまとう死神と対峙し、互いに丁重に、引導を渡されたり返したりの押し合いになる。

 人はそんな状況に陥ったとき、宇宙の中で一人切りになった自分を見詰め、人生結局は一人で生きてきたんだなあと悟ることになる。医者の努力も、周りの憐れみも、妻や子供の愛も、自分の運命を変える力はない。その患者は人生の中で初めて、集団的感性の高揚から離脱し、冷厳な一匹狼の哲学を知ることになるのだ。いままで自分は、いろいろな土俵の中で意識を高揚させてきた。家族の団らんや家族旅行、友人たちとの楽しい語らい、会社の同僚たちとの上昇へのスクラム、スポーツ観戦や芸術鑑賞、お祭り騒ぎ、等々……。これらの土俵の中には多くの仲間たちが蠢いているが、彼は土俵の外に出されたことを実感し、足を震わせる。そこに居るのは呼出(よびだし)たる死神一人だ。死神は寄ってきて、「あなたはすでに死に体ですよ。花道を飾ってください」と唆す。

 しかし彼が宗教者なら、世話役の神様が出てきて死神を追い払ってくれるかも知れない。神様は、「君は功徳を積んできたのだから、ストレートに天国に行けるよ」と喜ばせてくれるだろう。これは恐らく死ではなく、上下移行だ。ひょっとしたらこのとき初めて、教祖やら支部長やらのうざったい介在なく、神様と相対で語り合えるときかも知れないし、それが悟りの境地なら、心もきっと鎮まるだろう。このように、信心深い宗教者は神を信じ、頼れる相棒は神で、奇跡も天国もあると思うかもしれない。

 しかし、真正の一匹狼は宗教を信じない。頼れる相手は自分だけだ。巷で比喩として話される「一匹狼」のプロトタイプは、生まれつきのサバイバーと言っていいだろう。相互依存の社会で、彼は神も人も頼りにしない。基本自分以外を信じず、自らの意志を大切に、自発的に単独行動する人だ。当然、自分と他人や集団との距離は離れ、仕事上も生活上も、常に自らの意志で物事を勝手に進めていく。報・連・相がないわけだ。これは仲間外れにされる「独りぼっち」とは正反対の立ち位置で、自らが仲間から離れ、人に頼らずに人生を切り開いていこうとする「独立自尊」の基本的な精神と言っていいだろう。

 一匹狼は、それが仕事や人生に連関しない限り、社会や世間の動向を気にしない。例えば、テーブルの上に食品が100点置かれているとする。飢えた人に、その中から好きなものを10点あげると言った場合、普通の人はきっといま食べたいと思った物を選ぼうとはしないだろう。まずは価値の基準となる「値段」を考え、次はウナギがあれば中国産よりは国産ウナギ、ステーキがあれば神戸牛、その他食べたこともないキャビアやフォアグラ、ワインがあればロマネ・コンティやコンクールで金賞を獲ったお墨付き等々、世間的に価値があると思われている品目を選ぶだろう。彼らは社会的評価を常に気にして生きている連中だから、普段金持ちしか食えない物に興味があり、持ち帰ったときに仲間内での鼻高々を夢想する。

 ところがプロトタイプの一匹狼はその会場に、時代遅れの、しかしこだわりのある個性的な服を着て、颯爽と登場する。周りの人の目なんざ気にしない。流行だとか、世間体だとか、人々の賞賛などには無頓着で、高級品には目もくれず、とりあえずいま自分が食いたい物をどんどん選んでいく。彼(彼女)は、基本的に子供の頃から、人の言や社会的基準を信用せず、自分の考えに適合できる物だけを受け入れてきた。だから、100点ある食品から、過去において自分が美味いと思った物から10点をチョイスするわけだ。それは確かな選択で、失敗はない。食ったこともないキャビアやフォアグラを選んで、こんなものかとがっかりすることもないだろう。人の考えに左右されてチョイスした場合、期待外れだった場合はダメージが大きいが、自分が選んだものが期待外れでも、自分が選んだのだから諦めも付き、さほどのダメージを受けない。当然、推薦した人を恨むこともないはずだ。一匹狼は、自分で選択した行動の結果は、すべて自分の責任だと知っている。他の連中は推薦人のせいだと思うから、トラブルが起こったり、逆恨みしたりする。

 その典型的な例が、敗戦後の日本国民の感情で、ほぼ全員が政府に騙されたと思った。戦争に負けたのはもちろん、戦争に突入したことも、政府が国民を騙したのだと思ったわけだ。彼らの誰もが、その責任を政府に押し付け、自分の責任だとは思わなかった。僕は当時幼少だったが、親や近所の大人たちの話を記憶している。彼らはすべてなんとか生き延びた被害者で、加害者意識はなかった。しかし、暴走する政府を応援したのは被害者たる彼らなのだ。真珠湾攻撃成功と熱狂し、国の旗をはち切れんばかりに振ったのも彼らだ。顔を上にあげて唾を吐き、そいつが自分の顔に戻ってきただけの話だ。

 それではなぜ、騙されたと思ったのか。それは日本人が羊の群れのように、牧人たる政府を崇めていたからだ。政府役人を様付け呼ばわりしていたからだ。牧人に従っていれば豊かな牧草地に辿り着けると思っていたからだ。それに反して一匹狼たちは多勢に無勢で、畜群の流れに飲み込まれて踏み付けにされ、少なからず官憲に捉えられて牢獄にぶち込まれてしまった。右に倣えの社会では、一匹狼が生きていくスペースはないだろう。当時の日本は軍部独裁国家だったが、ほぼ全国民が彼らに賛同し、旗を振って万歳を唱え、息子たちを戦地に送り出していった。そして町内会・部落会は官主導で隣組を作り、互いに監視し合うことで、人付き合いや右に倣えを嫌う一匹狼たちを官憲に報告した。しかし最後の最後は焼夷弾ですべて焼き尽くされ、生き残った市民は一匹狼と化し、食い物を探して焼け跡をうろつくことになった。 

 町内会はいまでも日本に残っていて、田舎へ行くほど住民間の関係は濃密になっている。それは町内会費の額を見れば明らかで、それらは定期的に開く飲み会に使われるらしい。近所付き合いの好きな都会の家族が親密なコミュニティを求めて、そうした田舎に引っ越しをするらしいが、一匹狼的な感性の持ち主は皆無に違いない。多数の意見や感性に迎合することに耐えられない人間が、一匹狼になるのだから……。一匹狼の基本姿勢は、ひとまず人の意見を気かずに和を乱し、自分で考え、決めて行動すること。だから異なる意見に出会った場合は吞み込まれず、妥協が必要なら納得するまでディベートすることになる。それでも納得できないなら、「馬鹿どもめ!」と呟きながら、その場を去ることになるのだ。だから間々、良好な人間関係の構築には失敗する。

 多数の感性は「コモン・センス」と言われ、世の中の常識・良識(人々が共通に有する判断の感覚)ということになるが、これらは時代や地域、宗教によって異なってくる。コモン・センスは大体、その国を牛耳る勢力の考えだ。コモン・センスは、主流勢力の考えと、それに迎合する村社会的・町社会的国民の感性で形成される。民主主義国のそれと権威主義国のそれは違うし、イスラム主義国のそれとキリスト教国のそれも違う。当然ヨーロピアンのそれと大和民族のそれも違う。それらの国々の国民は、各自のコモン・センスで一応纏まり、政府は国内外の政治を動かしていく。だから日本人が、自国のコモン・センスで権威主義国の政治を批判したって意思疎通は叶わず、相手国のコモン・センスでやり返されるだけの話だ。

 「和を以て貴しとなす」精神に疎遠な一匹狼は、当然村社会的コモン・センスとは別のセンスを持っている。一匹狼がその国のコモン・センスに納得できない場合、その国から去るか、鬱々と生きるか、同じ考えの同朋を探すことになる。それらが多人数になると、自国のコモン・センスを覆すような団体行動に出ることもある。民主主義には選挙制度があるから、彼らは政党を作って戦えば、社会が自分たちのコモン・センスに変わる可能性も秘めている。しかし日本のように、社会常識を覆すような政策を持って戦いに挑む政党があるかと言えば……、??と言うことになるし、風土・風習を変えるのは並大抵でないだろう。選挙風土一つを取っても、見ての通りになる。

 一匹狼には、属する集団や社会のコモン・センスに流されない気概と、自分の考えを掘り下げるだけの知性が求められる。社会の伝統的な流れに乗っかれば楽ちんだろうが、どこに流されるかはまったく分からない。それはアメリカやアフリカで観られる動物の群の集団移動と変わるところはない。彼らは豊富な餌のある豊かな草原を求めて、リーダーの勘に頼って移動する。しかしその勘が外れれば、集団は絶滅の危機に瀕してしまう。人間でいえば、リーダーは大統領や首相だ。ニーチェはそうした人間集団を「畜群」と揶揄し、一人一人が一匹狼たる「超人」になれと叫んだ。超人は人を頼らず、すべてが自分の責任だと覚悟して熟慮し、行動する人間だ。例えば最近行われた都知事選でも、各候補の公約を比較して自分の理想と照合し、投票した人は何人いるだろうか(かく言う私もいい加減に読みました)。しかし人生、軽い乗りで生きていける時代ではなくなりつつあることは、誰が見ても明らかだろう。

 地球は戦乱時代に入りつつある。また、地球沸騰化時代を迎え、我々は茹で蛙になりつつある、……ということは、一人一人がサバイバーになる時代が到来したというわけだ。仲良しクラブ、仲良し社会、仲良し国家、仲良し世界の時代は終わった。畜群はなぜ移動するのか……。いま居る場所の餌を食い尽くしてしまったからだ。このまま世界中で日照りが続けば、食糧自給率38%の日本はどうするのか。金持ちしか生き残れない時代が迫っている。まさか餌を求めて過日のごとく中国を侵略するわけにもいかないだろう。

 しかしこれはあくまで僕の考えで、世の中には武器を蓄えてどこかの国を侵略しようとするリーダーも、自給自足を推奨して、みんなで庭を耕そうと運動を起こすリーダーもいるだろう。社会に危機が迫ったとき、国民一人一人が間違ったリーダーの言を信じて付いて行った場合、再び昔の悲劇を味わうことにはなるだろう。そうならないためにも、いまから我々はサバイバーとしての一匹狼的感性を取り入れ、熟考・醸成する必要があるのだ。死ぬときは一人だと肝に銘じ、他人頼りにせず、軽薄な世の流れに流されない訓練を、いまから始めよう。来るかも知れない、ハルマゲドン?!を意識して……。

 

ショートショート
ミロのヴィーナス
あるいは 爆風と共に去りぬ

 医科大学の解剖学教室に、警察からの電話で解剖依頼が来た。教授が司法解剖ですかと聞くと、相手は「~のようなもの」と答える。隣の大統領官邸の門の前に、死体らしきものが転がっていたという。そいつは近くの警察からストレッチャーで運ばれてきて、刑事と二人の警官が付き添っていた。解剖室は感染リスクを避けるバイオハザードシステムが完備していて、刑事だけが入室を許され、服を着替えさせられる。教授の二人の弟子が、警察のマークが付いた袋に入れられた死体を運び入れ、もう一人の弟子も加わって、三人がかりで解剖台に移した。

 「先生、重いです」
「大きいな。死体だとすれば大男だ。袋を切る前に、刑事さんからもっと詳しく聞きたいな」と教授。
「一応、爆発物処理班が現場で確認して、爆発する危険はないとのことです」
 刑事は少しばかりおどおどして答えた。
「一応ですか……。しかし、毒物を発散している可能性はある。この部屋は常に天井から床に空気が流れているから、安心ですけど。ただ、死体のようなもの、とはどういう意味ですか?」
「ひょっとしたら、現代彫刻かも知れないからです」
「現代彫刻?」
 教授は苦笑いしながら弟子に目配せし、二人の弟子がハサミで袋を切り始めた。そうして、あらわにされた死体を見て、教授と弟子たちは驚きの声を発した。
「これはミロのヴィーナスじゃないですか。死体じゃないですよ。完全な彫刻です」
「我々も最初はそう思いました。身長も二メートル以上とヴィーナスを真似ている。しかし、大理石じゃない。髪や皮膚を触ってみてください」

 教授がゴム手で白い腹の皮膚を押すと、確かにブヨブヨしている。しかも、死体の感触と変わらなかった。髪は若々しい綺麗な白髪だ。
「皮膚は合成樹脂ですよ。腰布を取ってごらん」
 弟子が腰布に触って「取れません。一体化してます」と答えた。
「やっぱりプラスチックの人形だ」
「しかし、もげた両腕の部分を見てください。ひどくリアルです」と刑事。

 教授は腕の断面を見て、「ウワッ!」と嬌声を上げた。
「君たち見たまえ。これがイミテーションなら、ヴィーナスの作者に劣らない天才だ。本物よりもシズル感があるよ」
 教授は何度も死体の腕を切断していて経験も豊富だが、偽物だと決め付けることはできなかった。「細胞検査!」、と弟子に命じた。
「ついでに髪と皮膚、腰布もやってみよう」

 一人が髪、一人が両腕の切り口の肉と骨組織、一人が胸、腹、衣を少し切り取って、デスクの顕微鏡で観察を始めた。
「髪の毛、本物です!」
「傷口、本物です。露出した骨も本物です!」
「衣を含めて、皮膚の全て本物です!」
 五分も経たないうちに、三人の答えが返ってきた。

 「腰布にも細胞がある?」と、刑事が驚いた顔をして聞く。
「そうみたいですな。つまり、人間の組織か豚の組織か分からんけど、この彫刻の材料はすべて生体組織を加工したものであることになります。天才的な職人技だ」
「まいったな。感心している場合じゃないでしょ」と刑事。
「まあまあ、見てくださいよ。女神ですよ。美しいじゃないですか。本物の死体なら、生前はどれだけ美しかったことか……」と言って、教授は白髪の髪の毛を引っ張った。
「見てください。明らかに本物だ。つまり、本物の頭蓋骨に頭の皮を貼り付けた公算が高い。……ということは、頭だけでも、どこかの死体から移植したことになり、これは明らかに事件だ。殺人か死体損傷かは分からないけれど……」
「面倒なことになってきた……」
 刑事はマスク越しに溜息を吐いた。
「しかし何で本物の彫刻みたいに目を見開いていないんですか?」
「そりゃ死体だからでしょう。遺族に渡すときは私も閉じてます」と教授は返し、笑った。

 「おい、CT!」
 弟子たちは死体を再びストレッチャーに乗せ、CTスキャナのある隣室に運んだ。教授と刑事も隣室に移動し、コンソール画面を覗き込む。
「驚いたな。多少の肉付けはしてあるが、基本は一人のちゃんとした人間だ。しかも、骨盤の形状から女性である可能性が高い。内臓もちゃんと揃っている。彫刻のベースは一人の大女だ。内臓は腐りかけてガスが溜まっている。いやこれは腐った体液か……。肺にも溜まっている。しかし不思議だ。死体特有の匂いはしない。ホルマリンの臭いもなしだ。だが、グリセリンみたいな甘い臭いがする。ならば腐った体液ではなく、食品用の保存薬液かも知れない。体液は腐ればガスも出るからな。刑事、身長二メートル以上の女性に心当たりは?」
「ひょっとしたら……」と呟くように言って、刑事は戸惑いながら「一年前にテロリストに拉致された外務大臣かも知れません」と返した。
「そうか、彼女は元女子バスケットの選手だったな。嫌な予感がする……」

 そのとき、画面を見ていた弟子の一人が「先生。左目の眼球が右目と異なっています」と叫んだので、教授は左目を拡大した。左目はピンポン玉のように浮き上がり、ガチャガチャのように中に何かが入っている。教授は弟子に命じて台上の死体から左の眼球を取り出させた。それはやはりテログループの旗が描かれた球体のケースで、捻って開けるとメモ用紙大の手紙が出てきた。教授はそれを刑事に渡し、刑事は声を出して読み上げた。

 「拝啓。この手紙を開いてくださり、感謝申し上げます。この手紙を読んでくださる貴殿は、私たちから末永く尊敬される英雄です。その理由を述べる前に、まずは一年前に獲得した外務大臣をお返しいたします。この女は、我々の同志であり主治医でもある整形外科医の優れた技術により若返り、世界中の人々を魅了する美女に変身しました。肉付けには国軍捕虜二人の肉も使用しております。
 ここで重大な発表です。彼女の体内には、我々が新しく開発した破壊力抜群のニトロ系液体火薬が仕掛けられております。そしてその爆薬を起動させるスイッチは、この手紙を納めたガチャガチャだったということになります。ガチャガチャをゲットし、蓋を開けると大当た~り! 二十秒後に爆発する仕掛けとなっております。貴殿の病院はもちろん、隣の大統領官邸をも破壊する威力です。
 いつの日か、天国か地獄かでお会いすることがありましたら、過日の思い出を楽しく語り合いましょう。そのときは、貴殿の英雄的功績に勲章でも用意しましょう。敬愛する貴殿の僕、下劣な不可触賤民より」  

「ウァーッ!」

 全員が扉に殺到し、蜘蛛の子を散らすように病院から飛び出した。しかしその二秒後には、病院と大統領官邸、近隣の建物すべてが大音響とともに吹っ飛び、大統領はもちろん、来賓の同盟各国トップ、教授、刑事、弟子たち、その他諸々、なんと世界の至宝ミロのヴィーナスまでもが粉みじんとなって、跡形もなく消え去ってしまった……。

(了)



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