マガジンのカバー画像

ソーのnote好きな小説まとめ

41
とりあえず、分野にこだわらず、好きな物を集めた
運営しているクリエイター

#創作

【掌編小説】最後の花火が打ち上がる#夏の香りに思いを馳せて

【掌編小説】最後の花火が打ち上がる#夏の香りに思いを馳せて

(読了目安3分/約1,400字+α)

「じゃあ大樹、コーラ3つな」

 じゃんけんで負けた僕は諦めて立ち上がる。スマホを見ると花火まであと10分しかない。人の間を縫うようにして土手を抜けると、ドリンクの出店を探す。

 花火まで時間が無いからか人々は足早に店の間を行き来する。

 その流れに似合わずゆったりと歩く、朝顔柄の浴衣を着た女性がいた。結いあげた髪は出店の照明で茶色く、うなじが白く輝いて

もっとみる
【1話完結小説】どうもこうも押すよね

【1話完結小説】どうもこうも押すよね

リセットボタンがあれば君は押すかな
口うるさくて面白みのない両親
君にレッテルを貼る先生
偉そうに上から目線の友達
君を縛り付ける窮屈な世界の中で

リセットボタンがあれば君は押すかな
愛に溢れた理解ある両親
君の個性を認めてくれる先生
助け合える優しい友達
君が毎日笑ってる世界を求めて

リセットボタンがここにあるけど
君はどうする?
もし押すのなら君は目の前の僕も
消すことになるんだ
君がどう

もっとみる
【1話完結小説】休日の洗濯物

【1話完結小説】休日の洗濯物

晴れた休日の朝。
光の中で揺れる洗濯物を見るのが好きだ。

汚れと一緒に慌ただしい平日のしがらみもすっきり洗い落とされたかのようなブラウスやスカートやタオル。
時おり気持ちいい風が吹き抜けて、踊るようにゆらゆら揺れる。
柔軟剤のいい香りがあたりにふわふわ漂う。
今週も一週間お疲れ様。
やっと楽しい休日が始まるよ。
思い切り羽を伸ばそうね。
…それはそうと柔軟剤、変えたのかな?
僕は先週までのフロー

もっとみる
星とハンス|#夏ピリカグランプリ

星とハンス|#夏ピリカグランプリ

ハンスはときどき、夜中に家を抜けて草原に行き、寝っ転がって星をながめるのが好きだった。

両親はハンスが幼い頃に亡くなっていた。祖父母に育てられたが、その祖父母も亡くなって数年経つ。だから、夜中に家を出て、草原で夜明かししても誰にも怒られない。「今日は冷えるな。」と、自分で自分の体のことを注意するくらいだ。

「今夜も星がきれいだ。」

昼間、大工の親方に「お前は何でそんなに不器用なんだ。」と叱ら

もっとみる
『夜と桜と指輪と彼と』

『夜と桜と指輪と彼と』

あろうことか、彼は一度出しかけた指輪を引っ込めてしまったのだ。
付き合いは長いから、大体わかっていた。
お互いにそろそろかなという雰囲気はあった。
彼が、あらたまって予定を聞いてきた時からわかっていた。
そんなことは、今までなかったから。
だから、私も覚悟は決めていた。
彼に恥をかかせるつもりはなかった。
それが、あろうことか…

私が高校2年の時に、彼は新入部員として入ってきた。
私は、野球部の

もっとみる
もう届かない①【短編小説】

もう届かない①【短編小説】

3月8日午後11時59分。

普段この時間に連絡なんて来ないが、俺は一分後に携帯が鳴ることを確信している。

ベッドの上に置いてある携帯電話を凝視する。

部屋の壁際に置いてある時計の針の進む音だけが聞こえてくる。

俺は一秒ずつ数えていた。57.58.59・・・。

3月9日午前0時に着信が来た。

携帯を取る。
ディスプレイには山岸 里桜と表示されている。

直ぐに通話ボタンを押して電話に出た

もっとみる
【1話完結小説】文化祭(午後原茶太郎シリーズ)

【1話完結小説】文化祭(午後原茶太郎シリーズ)

高校生活最後の文化祭。俺はベタながらお化け屋敷をやりたかった。男子はほとんど俺の味方をしてくれたけど、女子の大半が「メイドカフェをやりたい」と譲らない。

「文化祭と言ったらお化け屋敷だろ!」
「そんな暗いしキモチワルイの絶対イヤ!」
「メイドカフェ、一回くらいやってみたいし!」
「そんなもん女子しか盛り上がんねーだろ!」

意見は平行線で、出し物は永遠に決まらず、明日、改めて仕切り直すことになっ

もっとみる