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お念仏と読書

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これまで読んで感銘を受けた本を紹介して、それを通して味わった仏様のお話をしていこうと思います。
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お念仏と読書22光と影

お念仏と読書22光と影

水道橋博士さんのユーチューブで、みうらじゅんさんの浪人時代の話に出あい、「光と影」について考えるご縁をいただきました。

みうらじゅんさんは美大への受験を二度失敗していて、二浪目には東京に出てきて彼女ができ、もう大学には行かず結婚しようと親に言うと「ばかやろー」と怒鳴られました。
そんな時、西荻窪の汚いアパートで、昼過ぎか夕方にカーテンを閉めていたら、そこから光が直線になり入ってきて、四畳半に、3

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お念仏と読書21『ヘレヘレじいさん』

お念仏と読書21『ヘレヘレじいさん』

『ブータンで本当の幸せについて考えてみました。「足るを知る」と経済成長は両立するのだろうか?』本林靖久・遠藤智樹(光文社新書)を読みました。
GNH(国民総幸福量)を提唱するブータンについて書かれてあり、読むと「本当の幸せ」とは何なのかを考えずにはおられなくなる本です。

その中で大変興味深い民話、昔話に出あいました。その主人公の名を「ヘレヘレじいさん」というのです。
ブータン人の生き方を見ていく

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お念仏と読書⑳漫才は関係性、お笑いはスパーク/『火花』又吉直樹

お念仏と読書⑳漫才は関係性、お笑いはスパーク/『火花』又吉直樹

今回は、又吉直樹さんの小説第一作にして芥川賞受賞作品『火花』を通して、お釈迦様の説かれる「縁起」と、龍樹菩薩の「空」を味わいたいと思います。
何時もの通りネタバレをしているところもあります。

若く売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人である神谷と熱海の花火大会で出会います。誰にも媚びることなく、己の感性・才能のみを信じて、お笑いに生きる神谷に惚れ込み、徳永はその日に神谷の弟子にしてもらうという始

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お念仏と読書⑲視点場妄想譚/『置き手紙』安野龍城

お念仏と読書⑲視点場妄想譚/『置き手紙』安野龍城

この本は義父である福井県越前市専應寺の安野龍城師が、住職退任を機にご門徒さんに向けて書かれたものです。寺報や福井新聞に連載されたものがまとめられています。

皆さんは、「視点場」という言葉をご存知ですか?
私は知らなかったのですが、この本を読んでなるほどと思い、今回、仏様の「視点場」について味わってみました。
本文を引用し、紹介させていただきます。

視点場妄想譚 京都の寺々の庭の録画を見ていた。

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お念仏と読書⑱今、ここを抱くナモアミダブツ/『愛をひっかけるための釘』中島らも

お念仏と読書⑱今、ここを抱くナモアミダブツ/『愛をひっかけるための釘』中島らも

中島らもさんのエッセイ集『愛をひっかけるための釘』の中にある「サヨナラにサヨナラ」を通して、アミダ様は私達の今とここをご一緒くださる仏、南無阿弥陀仏ということについて書かせていただきます。

私たちが夜、空を見上げる時に見ているのは「空いっぱいの悠久の過去」なのだそうです。

そこに今見えているのは、宇宙の開闢以来の過去を、同時に空いっぱいの光として見ているのです。

たとえば、これから夏になって

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お念仏と読書⑰平均以上効果と愚者のすくい/『自分では気づかないココロの盲点』池谷裕二著

お念仏と読書⑰平均以上効果と愚者のすくい/『自分では気づかないココロの盲点』池谷裕二著

今回は脳科学で言われる私たちの脳の持つ特性、「平均以上効果」を通して、私たちの抱える苦しみは、「自分をよく見せたい」、「愚かに思われたくない」という心から生じることについて書きたいと思います。
そして、アミダ様のすくいの中で、私達は愚か者と知らされていくということを書かせていただきます。

池谷裕二さんの『自分では気づかないココロの盲点』を取り上げるのは、このブログでは二回目ですが、興味深く、色々

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お念仏と読書⑯プラス思考の向こう『あしたのねこ』/きむらゆういち文・エムナマエ絵

お念仏と読書⑯プラス思考の向こう『あしたのねこ』/きむらゆういち文・エムナマエ絵

今回は私が一番好きな絵本『あしたのねこ』をとおして、私たちの「プラス思考」や「解釈」はこの世を渡っていくのに最強だが、そこにも限界があるということ、そしてその解決について書いてみたいと思います。

いつものように、ネタバレ注意ですが、宜しければお読みくださいませ。

『あらしのよるに』のきむらゆういちさんが文を書かれ、完全に失明をされているエム・ナマエさんが絵を描かれています。
エムさんの淡いタッ

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お念仏と読書⑮慈悲のこころを聞く/『ココロ屋』梨屋アリエ作・菅野由貴子絵

お念仏と読書⑮慈悲のこころを聞く/『ココロ屋』梨屋アリエ作・菅野由貴子絵

今回取り上げるのは、うちの子ども達に人気の本で薦められて読んだ『ココロ屋』です。
可愛い絵と、優しい文章で、大変読みやすい小学生向けの本ですが、とても深く考えさせられる作品でした。
また、浄土真宗は私たちは仏様の「慈悲心」を獲得していく道ではなく、聞かせていただく道ということについて書きたいと思います。

今回、多分にネタバレをしますので、未読の方はご注意くださいませ。

「ココロを入れかえなさい

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お念仏と読書⑭自分の「枠組」を知る/佐藤雅彦著『プチ哲学』

お念仏と読書⑭自分の「枠組」を知る/佐藤雅彦著『プチ哲学』

Eテレ『ピタゴラスイッチ』『考えるカラス』の監修もされている佐藤雅彦さんの『プチ哲学』という本が面白くて、読んで色々と考える機縁をいただきました。

今回はこの本の内容を踏まえて、今回は仏さまのお法りは「自分の枠組み」を知らせてくれることについて味わいます。
また、最後に私が法話の現場でした失敗談を少し書いてみたいと思います。

『プチ哲学』内容紹介この本に紹介されるプチ哲学は「不変」「想像力」「

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お念仏と読書⑬『でんでんむしのかなしみ』殻を背負う私と、私を背負うナモアミダブツ

お念仏と読書⑬『でんでんむしのかなしみ』殻を背負う私と、私を背負うナモアミダブツ

新美南吉さん作『でんでんむしのかなしみ』という絵本があります。

この絵本を通して、私たちの抱える苦しみの根源について味わいました。
また、そこに「そのまま背負う」とはたらくアミダ仏のおすくいを書かせていただきます。

あらすじ一匹のでんでんむしがいました。でんでんむしはある日、自分の悲しみの原因が何によってであるか気づくのです。

「ああ、自分の背中には殻がある。その殻の中には、悲しみがいっぱい

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お念仏と読書#1「大丈夫」

お念仏と読書#1「大丈夫」

コロナウィルスの問題で、今現在(2020年3月現在)お寺の法要、法話会など残念ながら自粛している状況です。法話会が休座になると、法話をする機会が失われます。
しかし、一軒ずつしているお彼岸のお参りや日々のご法事などでは、法話をしたり、法話の文章を配ったりしている。今だからこそともに聞いていきたい仏様の「安心」があります。
第一回の投稿として、この春彼岸にお参りする時に配る法話を載せます。

『大丈

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お念仏と読書#3 いのちの見方

お念仏と読書#3 いのちの見方

3回目となる今回は、福岡伸一さんの『最後の講義 完全版 どうして生命にそんなに価値があるのか』を読んで、内容を少し紹介します。そして仏教の「いのちの見方」について味わってみたいと思います。

「あなたは人生最後の日に何を語りますか」?
NHK BSで放送され、大反響をよんだ「最後の講義」が、本になってよみがえりました。

まず、「人生最後の講義であったとしたら?」何を語るのかというのが、とても興

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お念仏と読書#2「ギブ アンド ギブ」

お念仏と読書#2「ギブ アンド ギブ」

浄土真宗では、仏さまや、仏教についてのお話のことを法話と言い、それを聞くことを「聴聞」と言います。この聴聞をとても大切にしています。
なので、ご法事やお通夜でお経のお勤めの後に必ずと言っていいほど法話があるのです。お経に説かれている内容を、一緒に聞かせていただく時間と場所を大事にして、今まで仏さまのおこころは伝わってきました。

今回は、仏さまのおこころについて、シェル・シルヴァンスタイン作、村上

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お念仏と読書#4 不思議な踊りをおどるハト~迷信が生まれる訳~

お念仏と読書#4 不思議な踊りをおどるハト~迷信が生まれる訳~

今回は脳科学者の池谷裕二さんの『自分では気づかない、ココロの盲点 本当の自分を知る練習問題80』を取り上げます。
脳科学の研究から、私たち誰しもが抱える「認知バイアス」という脳の癖をわかりやすく解説されます。

脳が私をそうさせる。「認知バイアス」の不思議な世界を体感。たとえば買い物で、得だと思って選んだものが、よく考えればそうでなかったことはありませんか。こうした判断ミスをもたらす思考のクセはた

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