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英国総選挙2019(3)すべての花を刈ることはできても、春が来るのは止められない
岩波書店『世界』2020年1月号への寄稿(初稿)を期間限定で公開します。12月初頭発売の同誌が店頭に並んでいるので実はルール違反なんですが、今日の選挙が英国にとってどういう意味をもつかを理解する参考にしていただきたく。校正後の原稿は『世界』で読んでね。
→次号が出版されたので公開解禁になりました。
<校正前の初稿ここから>
二〇一九年労働党マニフェストの発表演説を、コービン党首は「これは希望
英国総選挙2019ーーリセット資本主義ーー階級政治vs文化戦争(2)
2019年英下院総選挙の争点は「ブレグジット」と「公共投資(社会保障拡充とインフラ整備)」の二つだ。後者は「NHS(国民保健サービス制度)」と言い換えてもいい。この二つはそれぞれ文化戦争と階級政治を象徴するものでもある。
ブレグジットは英国にとり、最も先鋭化した文化戦争ーーEUという連合体の一部であることを望むか否かを決する投票ーーの結果だ。EU懐疑派の政治的スペクトラムは極右から極左まで多岐に
英国総選挙2019ーー国民の物語をどう描くかーー階級政治vs文化戦争(1)
2019年英下院総選挙の争点は何か。国内外(特に国外)のマスメディアが、今選挙の争点と想定しているのはブレグジットだろう。ボリス・ジョンソン首相はもちろんそれで戦うつもりだ。自分が取り付けたEU離脱合意を議会が承認しないので(*1 文末参照)やむなく離脱期限を延長し、期日前選挙で議会過半数を得てブレグジットを完遂する、と有権者に売り込む戦略だ。スローガンは「ブレグジットを片付けちまおう!」だ。
労働党のブレグジット---労組vs党員
2019年労働党党大会3日目(9月23日月曜日)ーー党のブレグジット戦略(近々あると想定されている総選挙における方針)が今日決まる。これは同時に、コービンが2015年党首選に立候補したとき以来の誓約ーー党を党員の手に委ねるーーを守れるか否かも決する。
ブレグジット戦略をめぐって、労働党におけるコービンの二つのパワーセンターである「労組」と「党員」が割れているのだ。労組は、コービンが打ち出したブレ
労働党副党首「トム・ワトソンの失脚」未遂
労働党の年次党大会開始を翌日に控えた金曜(9月20日)夜、ウェストミンスター担当のジャーナリストたちが一斉に「労働党で内戦勃発」のニュースをツイートした。
党の最高意志決定機関である全国執行委員会(NEC)で、副党首のポスト廃止が提議され、賛成17票、反対10票で否決されたというのだ(この動議の可決には出席者の2/3の賛同が必要)。可決まで1票差。この提議は翌日午前中のNECで再度投票され、可決
コービンの「どっちつかず」は悪いことか(「強いリーダー」とは何か)
コービン労働党党首の呼びかけで野党党首の会合がもたれて以降の展開を記録しておこうと何本か書きかけているのだけど、いつまとまるかわからず、今日は別のことを書く。テクニカルな話になる。
ブレグジットをめぐる議論は下院に議席をもつほぼ全部の政党を分裂させている。全議員が1つになっているように見えるのはスコットランド国民党(SNP)ぐらいで、他の党には何かしら意見の対立があるようだ。特に立場の違いが大き
ボリス・ジョンソンという生き物
*日本の知人に一昨日送ったメールをポストします。いま時間がないのでママで。あとで修正・追加する可能性が非常に高いので、また読んでね。
(本文ここから)
今のイギリスの政治状況を読むのは、国外にいてはほとんど不可能かもしれません。国内にいてもわからないぐらいなので。ボリス・ジョンソンは、ナイジェル・ファラージュと同様に、メディア(特にBBC)が作ったオバケです。意識的にか、無意識にかはわかりませ
終末感ただようブレグジットUK
ーーお客様へのお知らせーー
「終末もの小説は、時事問題の棚に移しました」
こう書かれた貼り紙の写真がツイッターに流れて来た。イングランド南西部コーンウォールにある書店のショーウィンドーに貼り出されたものだという。ツイートしたのはBBC地方局のジャーナリストで、ブレグジットで混迷を深める(特に「合意なき離脱(ノー・ディール・ブレグジット)」が現実味をおびてきた今の)英国を、これほど適確に表した一
EU残留至上主義者は、100%以外は全部NO
先週水曜日(2019年8月21日)、コービン労働党党首は2通目の書簡を野党党首(と野党下院リーダー)および、与党保守党の反ジョンソン議員数名宛に送った。これは、合意なき離脱阻止のための結集を呼びかけた14日付け書簡(詳細は前回のnote)に続くもので、夏の最後のバンクホリデイ(公休日)明けの火曜日(8月27日)に、9月3日から始まる秋の議会での戦略を合議しようと呼びかけるものだ。
1通目の書簡が
コービン党首の「合意なきEU離脱阻止戦略」書簡と反応
4月に岩波書店から出版された拙共訳書『候補者ジェレミー・コービン』を書評してくださったジャーナリストの小林恭子さんによるインタビュー記事で、「労働党ウォッチャー」の呼称をいただいたので、調子に乗って観察記録をつけることにした。(記事はこれ「来月頭にも内閣不信任決議案提出か、次期首相はコービン氏?労働党ウォッチャーに聞く」)以下は、状況を説明するため、8月15日に複数名宛に送った電子メールの文面。