ボリス・ジョンソンという生き物

*日本の知人に一昨日送ったメールをポストします。いま時間がないのでママで。あとで修正・追加する可能性が非常に高いので、また読んでね。

(本文ここから)

今のイギリスの政治状況を読むのは、国外にいてはほとんど不可能かもしれません。国内にいてもわからないぐらいなので。ボリス・ジョンソンは、ナイジェル・ファラージュと同様に、メディア(特にBBC)が作ったオバケです。意識的にか、無意識にかはわかりませんが、政治番組のイロモノ枠で重用しているうちに国の顔になってしまった。

ジョンソンはいかにも保守党の党首らしい血統と経歴をもっていますが、従来の保守党の本流であるかどうかの点からみると、ちょっと違うかもしれません。ワタシが知る限りでは(94年以降)、彼と同程度の右派が党首だったとき、保守党は野党でした。ブレア時代です。中道のブレアと差をつけるには右に寄るしかないのでそうなっていたのだと思いますが、いまは労働党が明確に左の党首なので、保守党は中道党首を選んだ方が浮動票を拾えるはずです。なぜそうならなかったか。

ジョンソンが党首選決選投票で圧倒的大差で勝った背景には、保守党党員の急増があります。労働党もコービンが台頭するまでは似た状況でしたが、保守党はそれに輪をかけて党員が少なく、表向きに使われていた12万という数字とは裏腹に10万を切っていると見られていました。しかも高齢化(平均年齢72歳と言われていました)していて不活発。ここに、UKIPからの鞍替え党員がなだれ込み、いま16万ぐらいだと思います。

UKIP党員が保守党に移ったのはUKIPの極右化が理由です。UKIPはそもそも極右とリバタリアンが合体したような政治団体で(ワタシは以前からUKIPは「背広を着たBNP」だと言ってましたが)、それがあらわになったのがファラージュが党首を辞めて以降の党首選の紆余曲折。最短数週間といった単位で次々に党首が交替、今の党首になって以降、極右色が強まりました。これを嫌って(表向きはそういうことになってます)ファラージュが離党し、彼と共に党を去った党員の落ち着き先が保守党でした。この新党員たちが中心になって、各選挙区支部で、穏健な議員を不信任する状況が去年から続いていました。

この状況がトップまで波及したのがいまで、ジョンソンは野党と投票行動をともにする保守党議員は党員資格を剥奪すると言っているようです。夕べの時点で、8人の保守党議員(ほとんどが閣僚経験者)が議員のキャリアをなげうって、ジョンソンの合意無き離脱阻止に票を投ずるとしており、これら穏健派の柱となる議員たちを失うと、保守党議員は、総体的に、さらに右に寄ることになります。

ひとことで言えば、保守党は、ファラージュに持って行かれた票を取り返そうとジタバタするうちに、ファラージュ時代のUKIPになってしまったということです。

ジョンソンについて言えば、国民投票で残留側につくか離脱側につくか、最後の最後まで迷っていたことからもわかるように、政治的信念も政策方針らしいものはほとんど持っていないと思います。とにかくトップに立ちたいのみで、目立てそうな方、人気のとれそうな方になびく、という感じだと思います。

ジョンソンのロンドンに対する貢献は、はっきり言ってほとんどありません。下のツイートにいろいろぶら下げてあります。
https://twitter.com/midoriSW19/status/897040361830445056

市長になったのは、前市長のリビングストンに対する市民の飽きと、リビングストンへのメディアの攻撃も理由の1つだと思います。市長選時のリビングストンに対する攻撃はかなりのもので、公費の不正利用等のスキャンダルがデカデカと書き立てられましたが、あとになってみれば微々たる金額でした(後継者ジョンソンの身内政治に比べると無いも同然)。

保守党は「ボリスは労働党の牙城ロンドンで市長に再選」と宣伝していますが、再選時には投票率そのものが下がり、次点のリビングストンとの差はわずか。記憶によれば、EU国民投票の賛否票の割合(52%と48%)より小さかったと思います(市長選は候補者に順位をつける投票方法で、最下位票を分けることを繰り返して、最終的に二人の争いになる形で行われます)。

(とりあえずここまで)

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