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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2021年1月の記事一覧

陰翳礼讃 (谷崎 潤一郎)

陰翳礼讃 (谷崎 潤一郎)

東洋文明の可能性 先に読んだ「日本文化論の系譜」において、文人による「日本文化論」の代表作として紹介されていたので、読んでみました。

 谷崎潤一郎氏(1886~1965)は、東京生まれでご存知のとおり明治~昭和期の小説家です。
 自然主義文学が盛んだった明治末期の文壇に異をとなえて、「刺青」をはじめとする倒錯的な官能美にみちた作品を発表しました。

 「陰翳礼讃」は、谷崎氏の手による随筆です。日

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マキアヴェッリ語録 (塩野 七生)

マキアヴェッリ語録 (塩野 七生)

やはり、「手段を選ばず・・・」 塩野七生さんの本は、妻が好きで家には「ローマ人の物語」をはじめ何冊もあるのですが、私は初めてです。

 以前、「君主論」を読んだとき、このBlogで「君主論≠マキアヴェリズム」の話題をとりあげました。「目的のためには手段を選ばず」という直接的な言い方は「君主論」には見られないという内容です。
 この本で塩野さんによる「君主論」からの抜粋で、「目的のためには手段を選ば

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日本文化論の系譜 (大久保 喬樹)

日本文化論の系譜 (大久保 喬樹)

日本文化論への案内 私がこのところ読んでいる本の一つの流れは、大きくは民俗学のジャンルも含めた日本人論です。

 この本は、ちょうどその範疇の「明治から昭和期の代表的著作」を要領よく紹介したものでした。全体は6つの章からなり、それぞれの章で、2・3人の学者・作家等の代表的著作を取り上げ概括しています。

1 明治開国と民族意識のめざめ : 志賀重昂・新渡戸稲造・岡倉天心
2 民俗の発見 : 柳田國

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五輪書 (宮本武蔵・鎌田茂雄)

五輪書 (宮本武蔵・鎌田茂雄)

合目的 江戸初期の剣豪宮本武蔵(1584?~1645)による江戸時代の代表的な剣術/兵法の書です。

 内容は、武蔵自らあみ出した二刀流(二天一流)の奥義を簡潔丁寧に伝授したもので、密教で言う「地・水・火・風・空」の五輪で構成されています。全編、武蔵のたゆまぬ鍛錬と真剣勝負とで体得した実技、実践法が記されており、一切の無駄を排した「戦闘に勝つための徹底した合理性」が底流に認められます。

 たとえ

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国家の品格 (藤原 正彦)

国家の品格 (藤原 正彦)

論理の出発点 言わずもがなの大ベストセラーです。
 著者の主張は明確で、立論の構成もシンプルなので、際立って読みやすい本でした。(立論の根拠やロジックが十分に首肯できるか否かは別としてですが)
 「品格」云々の主張はともかく、私がなるほどと感じた部分をいくつかご紹介します。

 まずは、「論理の出発点」についてです。
 著者は、本書で幾つかの点で欧米批判を展開していますが、かといって、それらの国の

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マックス・ヴェーバー入門 (山之内 靖)

マックス・ヴェーバー入門 (山之内 靖)

ヴェーバーの立ち位置 ヴェーバーの社会科学に対する基本的姿勢は、純粋客観主義の否定でした。社会科学が人間に係るものである以上、また、人間の営みである歴史に存するものである以上、そういった対象・環境の制約を受けることを前提とすべきという立場です。

(p3より引用) しばしば誤解されてきたことですが、ヴェーバーの言う「価値自由」とは、社会科学にたずさわる人間は一切の価値判断にとらわれてはならず、ただ

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第一阿房列車 (内田 百閒)

第一阿房列車 (内田 百閒)

 この本も、いつも参考にさせていただいている会社の先輩の方のBlogで紹介されていたものです。

 内田百閒(ひゃくけん)氏は、本名 内田栄造、大正~昭和期の小説家・随筆家です。
 岡山市に生まれ、東京帝国大学独文科卒業。陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学でドイツ語教授を歴任した後、文筆活動に入りました。百鬼園(ひゃっきえん)と号し高校時代から俳句に親しみ、夏目漱石の門下生になって芥川竜之介・鈴

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明治大正史(世相篇) (柳田 國男)

明治大正史(世相篇) (柳田 國男)

民俗学への興味 先に宮本常一氏の本「忘れられた日本人」を読んだので、その流れで民俗学の関係の本に興味を持ちました。
 日本の民俗学といえば、やはり柳田國男氏の著作に触れないわけにはいきません。

 以前、氏の著作は読んだような漠然とした記憶があったのですが、どうも思い出せませんでした。
 数年前、何年かぶりに実家に寄った際、学生時代に買った本が並んだ本棚を眺めていると、この本が目に付きました。全く

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イノベーションのジレンマ (クリステンセン

イノベーションのジレンマ (クリステンセン

顧客重視のジレンマ かなり旬はすぎているのでしょうが、やはり通しで読んでおこうと思って手に取りました(元のBlog記述当時)。

(p7より引用) 企業の成功のために重要な、論理的で正当な経営判断が、企業がリーダーシップを失う原因にもなる。

とあるように、本書の真髄はオッと思うようなセンセーショナルな指摘にあります。

 その論旨は最終章にまとめとしてコンパクトに整理されています。
 まずは、市

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方法序説 (デカルト)

方法序説 (デカルト)

叡智の先導 「方法序説」は、デカルトが41歳のときの書です。
 その正確なタイトルは「理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法の話。加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学」だそうです。

 デカルトは、この著作の目的を

(p11より引用) 自分の理性を正しく導くために従うべき万人向けの方法をここで教えることではなく、どのように自分の理性を導こうと努力したかを見せるだけ

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アインシュタインの夢 (アラン・ライトマン)

アインシュタインの夢 (アラン・ライトマン)

 先に読んだ「ザ・プロフィット」という本のブックリストで紹介されていたので読んでみました。
 「ザ・プロフィット」の著者スライウォツキーは、この課題図書により、読者に対して「常識に縛られない自由な発想を促す」ことを目論んだようです。

 内容は、1905年、特殊相対性理論の完成を目前にしたアインシュタインが夜ごと悩まされた時間に関する奇妙な夢を、現役物理学者でもある著者が、「30の小編」に仕立てあ

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99.9%は仮説 (竹内 薫)

99.9%は仮説 (竹内 薫)

はじめに仮説ありき 副題は、「思いこみで判断しないための考え方」、数年前にかなり売れた本です。

 この本では、繰り返し繰り返し、

「世の中には『確定』したものはない、ほとんどが『仮説』に過ぎない」ということを理解したうえで、「自ら考え、人と接するようにすべきだ」

と説いています。

(p74より引用) 世界の見え方自体が、あなたの頭のなかにある仮説によって決まっているわけなのです。
 ・・・

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ゾウの時間ネズミの時間 (本川 達雄)

ゾウの時間ネズミの時間 (本川 達雄)

解説の妙 1992年出版ですが、この年大きな話題になった本です。
 タイトルのネーミングが絶妙で多くの人の興味をひきました。

 内容は、「サイズ」をキーコンセプトにした変わった切り口の生物学入門書です。いくつかの数式が登場する反面、素人でも直観的に「なるほど、そうかも・・・」と思えるような例示や説明が随所にあります。

 たとえば、古生物学における「島の規則」です。

(p17より引用) 島に隔

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ドラッカー365の金言 (P・F.ドラッカー)

ドラッカー365の金言 (P・F.ドラッカー)

箴言中の箴言 P・F.ドラッカー氏が亡くなられて以来、是非手元に置いて読んでみようと思っていた本です。

 昨今は、マネジメントスタイルが従来型企業とは全く異なる新たなサイバー系企業が脚光を浴びています。その中で、過去のエクセレントカンパニーに大きな影響を与えてきたドラッカー氏の数々の箴言は、どのような位置づけ・意味づけがなされるのでしょうか?

 やはり、氏の拠って立つ本質的な視点ゆえに、企業像

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