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「あわいの小説家」作家紹介⑤ 千羽はるさん

 こんにちは。note文芸部員の辰巳ろんです。

 本日は作家紹介記事第5弾をお送りします。今回紹介させて頂く作家さんは、千羽はるさんです。


 私は先日、#書き方座談会 でご一緒したことがきっかけで、千羽はるさんの作品を改めて読み進めました。そして、みなさんにぜひご紹介したい想いが強くなったのです。ぜひ最後までお読み頂けたら嬉しいです。



千羽はるさんとnote

 初めての投稿は2019年3月1日の「はじめましてのキッカケ」という記事でした。それから今まで116記事の投稿があります(2020年3月10日現在)。ひと月に10本以上の投稿があることも多く、精力的にnoteへの投稿を行っています。


千羽はるさんによる自己紹介文

読書と未知をこよなく愛し、「人」と「未知」の狭間を書く、「あわいの小説家」(現在修行中)/ noteには、短編小説やエッセイなどをのんびり書いています。/ 現在、皆さんから募集した音楽を基にした物語を集めた小冊子企画を実施中

 アカウントページに記載されているこの端的な紹介文にある「あわいの小説家」という肩書き。人と人の間、人と人外の間、大人と子ども。こっち側とあっち側。男と女。千羽はるさんの物語を読み終えるたびに、そこにある割り切れない「あわい」に思いを馳せることになります。それは怪しく美しかったり、切なかったりして、徐々に読むものの体に染み込んできて、気がつけば自分の形が少し変わっているのです。

 さらにその人となりを知りたいと思いましたら、「noteハンドメイド交流会(後に「noハン会(ハンドメイドなnoteオフ会:非公式)」に名称変更)」の参加を前に書かれた自己紹介の記事「「千羽はる」の改めプロフィール」があります。また、現在休止中とのことですが、やさしくオススメの本をご紹介してくださる「読書ススメ録」マガジンの記事からもお人柄を想像し、作品の背景に思いを馳せることができます。


様々な企画へ参加されています

 「note勉強会」、「note酒場」、「noteのつづけ方」、「「note+Twitter」Meetup」、「noハン会」など、noteで開催される各種企画会場へ出かけているとのことですので、実際にお会いになった方もきっと多いのだろうと推測します。残念ながら私は直接にお会いしたことはないのですが、初めて千羽はるさんの文章と出会ったのは、noハン会の小冊子企画参加作品でした。
 「同じテーマで小説を書いてみよう」や「教養のエチュード賞」への応募など、note上の企画へも積極的に参加されています。記事にはnoハン会の代名詞とも言える「心象風景」のKojiさんの絵を使った投稿やこちらのイベントで親しくなった方々への物語もあり、石好き仲間として「ひかりのいしむろ」のあゆみさんとの交流や、最近ではひかむろ賞の小説賞を担当するなど活躍しています。



千羽はるさんの小説リスト

 たくさんのエッセイの中にも心を打つものがありましたが、今回は特に小説にスポットを当ててご紹介したいと思います。主な小説作品はご自身のマガジン「広がるのは夢想の記録」にまとめられています。リストにしてみますとご覧の長さになりました。

とある夢想家の独白
少年たちの星月夜[1]〜[4]
天と地の火の祭
孤独の涙は地に堕ちる
それはあなたと私の秘密
渦を描く梨の花[1]〜[3]
色褪せない君の声
世界を守り、色を紡ぐ
零れ落ちちまえ、この手のひらから
この世界の隙間から
炎の星と小さなノア
羽ばたけ、私の風の声
忘れ得ぬ、きみのすがた
静かにして、ささやかなる革命を
電車の中で寛ぐ神様
境界線のオパリオス[1]〜[3]
本と檻と赤い常識
終わりのない夜の底で
夜見枯書店カイ想録
BELLA NOTTEの鐘
神姫の微睡み
名前の知らない君の背中を追いかけて
夢の抜け殻 僕の泣き殼
人魚の娘
【短編小説】にじいろ影切絵
私は「絶滅危惧種」なの
始まりを告げる街




千羽はるさんのオススメ小説3選

 たくさんの小説作品があるので、全てをご紹介することはできません。タイトルにピンと来たものから、どしどし読んでいただきたいのですが、以下に私のオススメを三作選びました。こちらの作品の前後に綴られたnoteの中から、特に心に響いたnoteへのリンクも追加しておきましたので、合わせてお読み下さい。


◆ 少年たちの星月夜[1]〜[4]

「まあな。けどさ、結局何言っても逃げられないんだ。お前は文章から逃げられないし、俺はきっと写真から逃げられない。俺は死ぬまでに絶対に満足する写真を撮らなきゃ死ねないだろうし、お前だって「星月夜」みたいな世界を書かなきゃ死ねないんだろ?」

 このセリフが書ける千羽はるさんの強さを感じました。この問いかけは、そのまま画面を通り越して、読んでいる私にまっすぐ突き刺さる迫力があります。そして、俺が魅了された「写真」、あいつにとってのゴッホの「星月夜」、「ひまわり」やこの少年たちをつつむ「夕焼け」の描写に惹きつけられました。ぜひみなさんにも、その言葉から広がる世界を味わっていただきたいです。

〔心に届くオススメnote〕
一杯の珈琲が起こした小さな出来事
私は、森を補填する人間なのだ。そうやってしか、生きていけない人間なんだと思い知った話


◆ 境界線のオパリオス[1]〜[3]

人が消えた瞬間、共に居た者たちは口を揃えて、こう言った。

「(あいつは)(あの人は)(彼女は)(彼は)境界の向こうへ行ったんだ」

 たくさんの対立するものが登場する本作は、まさに「あわい」を描こうとしている小説です。境界の先へ行けなかったものは、「ブラックオパールのような七色の輝き」を宿した瞳となり、境界の揺らぎを見ることができるようになるというのです。その視界はもしかすると、作者の見ている景色なのかもしれないと思うとほんの少し怖くもあり、同時に、どちらにも寄らない場所で揺れている「今、ここ」を捉えるのではないかという期待も感じます。オパリオスたちの活躍する続きが、もっともっと読みたい作品です。

〔心に届くオススメnote〕
渦を描く梨の花【一】〜【三】
千羽はる流、神田神保町の歩き方
千羽はるの「企み」詳細


◆ 夜見枯書店カイ想録

銃口を前にしても恐怖をおくびにも出さない男。虚勢を張っているわけではなく、ただ先ほどと同じ空気を継続しているだけ。

そう、私が持っている物が銃であっても珈琲カップであっても関係ないと言わんばかり。

 こちらは「教養のエチュード賞」への応募作品です。古書店街の奥の奥の奥地にある古書店「夜見枯書店」、その不気味な中にもちょっぴりユーモラスな雰囲気が漂う独特の世界が、作者の言葉によって目の前に広がります。この物語の主人公「夜見枯千明」のキャラクターにきっと驚くことでしょう。彼と「夜見枯書店」を訪れる人々との様々なエピソードをもっと読みたい、あなたもそう思うに違いありません。

〔心に届くオススメnote〕
夢の抜け殻 僕の泣き殼
2万Hz以上の音が、泉に響く



〔インタビュー〕千羽はるさんに聞きました

 三月某日に、千羽はるさんとDM(ダイレクトメッセージ)でのやりとりをさせていただき、noteでの執筆活動にまつわるお話をお聞きしました。その千羽はるさんの言葉をお伝えしたいと思います。

*****

辰巳 
(DMでのやりとりはゆっくりと)文通みたいな感じで進められればと思っています。よろしくお願いします!
まず、最近のnoteの活動について教えてください。

千羽
文通……素敵な響き……。こちらこそ、よろしくお願いします
さて、ちょっと悩みました。
活動でみなさんの印象に残っているのはひかむろ賞でしょうか。
たくさんの作品を読ませていただき、色々な世界に触れることができた素晴らしい賞でした。

個人としては最近少し書いてないなと感じています。ひかむろ賞が刺激になって、早くあわいの世界に戻りたいなと思い、小説の中で動き出したがっている人たちを待っている状況です(笑)

辰巳
ひかむろ賞は私も少しづつ楽しんでいます。応募された作品がどれもすてきですよね。
この賞の選考もあって、最近は、書くより読む時間が増えたということでしょうか。あれだけの作品を読み込むことは大変だったと思いますが、そんな風に集中してたくさん読むことで、何か思ったことなどはありますか?

千羽
そうですね、ろんさんの仰る通り、noteの記事を連続であれほど集中して読み込んだのは初めての経験です。自分はもともと電子書籍もweb小説も読まないので、なかなか目が慣れてくれなかった(笑)

ちょっと上から目線を許してもらえるなら、noteの世界ってすごいレベルが高いんじゃないかなと読んでいて思いました。だって、ああいう短編集が本屋の棚に並んでも何の違和感もない、そういう作品ばかり。本当にすごいと思います。

辰巳
私もnoteの世界はレベル高いと思います。それにどんどんみなさんレベルアップしていきますし、本当にすごいです。

また、「あわい」の世界がまた動き出しそうとのこと。楽しみです。
動き出したがっている人というのは、いろんな物語の人たちですか。小説のアイデアはいろんなお話を平行して考えるタイプですか、それともある程度一つの世界を完結できてから、次を考えますか?

千羽
自分の作品は、結局のところ群像劇です。頭の中に大体世界が三つくらいあります。その人たちは私なんぞ関係なしに生きていて、私がそれをちらっと覗いているだけです。物語の着想があるとき、それに似た生き方をしている人たちが浮かんできて、勝手に私の手を使って書かせてくれる。

小説のアイデアは、その三つの世界にカードのように配られます。その中で「はーい」と手を挙げた登場人物たちがいて、同じアイデアなのに全然違う方向に進んでいくときもありますね。なので、一つの世界を完結するというのはまだ、私の中で出来ていません。

よく「この物語、続きそう」と言われることがありますが、その通り。完全に終わることってないんです。小休憩しますよ、って、登場人物が勝手に言っちゃう、私は困ります(笑)

辰巳
たくさんの小説をどう生み出しているのか、とても不思議だったんですが…、なんかとても重大なことを聞いてしまった様な気がします。
頭の中に、三つくらいの世界があって、アイデアがカードのように配られ、物語の着想があると、その世界の中にスポットを当てるというわけですね。

もっと聞いてみたいところですが、ここで次の質問につなげてもいいでしょうか。短編集となる小冊子を企画されてますが、こちらの小冊子について、簡単に教えてもらえますか?

千羽
もともとスポットを当てた登場人物の雰囲気を固めるテーマ曲を決めるのが好きなので、「じゃあ色んな人に曲を教えてもらおう」と思い、Twitterで募集しました。
そうしたら、かなりの曲が集まり、全部の曲から物語が生まれる気がして。なら書いちゃえ、という軽い気持ちではじめました。

また、noハン会で自分の文章が活字になった快感が忘れられなかったので、せっかくだから教えていただいた皆さんへの感謝も込めて小冊子にしようと。

実は物語自体はほぼ完成しているのですが、私生活で忙しさが増したのもあり、のんびりゆるゆると進めています。

辰巳
どんな曲が集まったのか、どんなお話が描かれているのか、楽しみすぎる小冊子です!

この企画についてのnote(2019年11月の記事)では、収録されるお話は13話とありますが、それから約3ヶ月ほどで書き上げたということですよね。週に1作くらいのペースでしょうか。文字数も1作が2,000字とすれば、全体では26,000字。

このようにたくさん書き上げるために、例えば、毎日同じ時間にパソコンに向かうといったようなことで、何か工夫されたことはありますか?

千羽
あらすじはすべて一週間でできたんです。あとはそれを膨らませる作業ですね……。やっぱりそれは思った以上に大変でした。

私の場合、物語のイメージを持続させることを念頭に置いているので、思い立ったらすぐにPCを開ける、そのイメージを書き出せるような状態にしてます。

逆にそのイメージに気持ちが乗らなければいくらがんばっても書けません。かなり気分屋のようで(笑)
SFの話が頭にあっても、気持ちがな「今日はファンタジーなんだよね」ってなっちゃうと、もうその日はムリ。これは本当に悪い癖です(笑)

辰巳
なんと13話のあらすじを一週間で!
それからコツコツと書き進めたんですね。

私の場合も、そのときなんだかしつこく頭に浮かぶイメージってあります。それって書かなきゃと思うものとは関係なかったりして、ついnoteを開いたりして、時間ばっかり過ぎてしまうんですよね。イメージが思い立ったらすぐに書き込めるように、PCの画面も整えておくのはいいですね。

ところで、この小冊子に収録される小説は、小冊子完成後などで、noteでの公開も予定しているのでしょうか?私はぜひ紙で読みたい派ですが、noteでも読めたら嬉しい人がたくさんいるような気がします。

千羽
ろんさんのおっしゃるとおり、小冊子完成後はnoteで公開したいと思います。どういう形が一番協力していただいた皆さんに還元しやすいか、「読みたい」といってくださる方のもとに届けられるかを第一に考えて、より良い方法をとっていきたいです。

辰巳
今後のnoteの活動について何か考えていることはありますか?

千羽
noteの活動は、今まさに色々と変化させていきたいと考えているところです。

今までのんびり気ままに「日記」のように活動していた「個人的」なところを、より「公式的」な活動にシフトしたい。
そういう願望は以前からありましたが、勇気も実力も、時間もないからと言い訳してきました。

ただ、やっぱり諦めきれないので(笑)

ちょうど私生活も変化したので、そういう風にnoteを基盤に頑張って行きたいなと思います。まだ、ここで言い出しただけなので、どういう形になるのかは分かりませんが(笑)

辰巳
小冊子収録作品のnote公開の計画と合わせて、今後もnoteも頑張っていくというお考えを聞くと、とても楽しみになります。

noteでの活動の変化を検討しているのですね。どんな形になるかはまだ考え中とのことですが、より「公式的」とは、例えば、大きな賞への応募や企画への参加といったようなことでしょうか?もし差し支えなければ、教えて下さい。

千羽
それも、もちろんやりたいと思います。

また、今までの文章は「個人」で完結してしまった部分があるので、それをどれぐらい表面にだせるのか挑戦してみること。
「こんな個人的な文章は誰も読まないな」という思考回路を取っ払おうという、やっぱり個人的な挑戦です(笑)

それだけではなく、noハン会で個人をモデルにした小説を書いた経験があるので、誰かを巻き込み、応援、協力できる文章をもっと書いていきたいと考えています。
その人自身や、その人の活動をモデルにした小説、のような感じで。需要があるかは謎です(笑)

辰巳
文章に対する挑戦。誰かを巻き込み、応援、協力できる文章を書く。どちらもとても素敵な考えです!こちらも、もっともっとお聞きしたいお話です。それこそお茶でも飲みながらじっくり。けれど、そろそろ記事の長さが心配になってきました。

最後に、この記事を読んでいる方に一言メッセージお願いします。

千羽
「あわい」は、あなたの身近にあるものです。ふと風が吹いたとき、空を見上げたとき、心にかすめるものであり、忙しさで忘れがちになる淡いもの。
誰かの心に触れられる「あわい」を、もっと書けるようになりたいと思います。

読んでくださった皆さん、素敵な記事を書いてくださった辰巳ろんさん、note文芸部の皆さん、本当にありがとうございました。

辰巳
千羽はるさん、今回はとても貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

*****



 千羽はるさん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。千羽はるさんの物語のファンとして、今後の活躍と生み出される作品を楽しみにお待ちしています。

 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。当記事で千羽はるさんの魅力を少しでもお伝えできていたら嬉しいです。#ひかむろ賞愛の漣 千羽はる賞もお見逃しなく。


あわいへの扉

 さて、こちらをお読みくださっているあなたにぴったりの出口は、この記事にあるリンクのどれかとなっています。それは「あわい」への扉です。読んだことがある物語、初めての物語、どちらへでも。不思議の旅へ、どうぞいってらっしゃいませ。





千羽はるさん、辰巳ろんさん、ありがとうございました!
次回の作家紹介記事もお楽しみに!

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部誌作るよー!!