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七夕の空を見上げると、香奈子は無性に泣きたいような衝動に駆られる。 日本の七夕なんて…
ふと空を見上げると、強く翼を広げる鳥がいた。 たった一羽。孤独な両翼。 しかし、その姿は…
迷いながら進んでいこう。 見慣れない路地をゆく。春の訪れを見るために。 ここはどこ…
深く真っ黒な湖の上で、私は舞うの。 明るい真っ赤な着物を纏い、真っ赤な薔薇を纏ったような…
それぞれの役割が繋がって、はじめて私は受け入れた、彼を (よっしぃさん) ・ ・ ・ と…
川を見るのが嫌い。海を見るのが好き。そう気づいたのは、電車の中で通る大きな川を見ている…
透明な壁の向こうに、君の暖かさを感じる。きっと君も、僕と同じように壁に手を添えているのが、壁からジワリと伝わる暖かさからわかる。 僕たちは言葉を交わす。こうやって手をかざし合った時だけ話すことのできる、不思議な対話方法。 【私達、結局会えないままだったね】 【うん、そうだね】 【私達、いつか会えるはずだったのかな】 【うん、どうだろうね】 僕らの世界は狭かった。君と僕は、世界でたった一人の住人。けれど、今日、君は消える。 それは大昔から決まっていたことで
「待ってよ」 声を張り上げる。けど、お前は振り向いたことなんてない。 お前は、何時だ…
雪の縁取り 理の誓いの下に 萌黄の芽 薄桜に頬を染め 微睡む春の神姫 雪深い山で、新しい…
昔から、「ベラノッテ」が好きだった。 この時期になると、母がよくCDをかけて、気分よく歌っ…
彼は私の前でよく笑う。 屈託のない、無邪気な子供のような笑顔だ。 けれど私は、その微笑み…
深い夜の底で 夜明けが来ないなら 光を放て 絶壁を前に したのなら 誰かからの 風を待た…
殺人鬼は部屋に押し入った。血に濡れた悪鬼たる男。部屋の主は動じない。人間生活を放棄した女…
一話はこちらから 国立天文台は、異様な興奮とざわめきで、空気がびりびりと電気を帯びているかのようだった。 多くの研究員が慌てふためく中で、一人だけ様々なデータを映し出す端末に噛りついている。 黒縁眼鏡をかけた「the 理系」という風体をした優秀そうで神経質な青年だ。 彼の癖なのだろう。 ひっきりなしに分厚いレンズの眼鏡を、鼻の上で上げ下げして、その動作は周囲と同様に落ち着きがない。 「………なんなんだ、このデータは」 呻き声が、口の端から漏れ出す。 あらゆる事象を