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どこまでも遠くへいく、風を見て

ふと空を見上げると、強く翼を広げる鳥がいた。

たった一羽。孤独な両翼。

しかし、その姿は誇り高く強靭な生命に満ちている。

きっと、彼には果てがない。

きっと、彼には恐れるものがない。

強い向かい風が吹くであろう遙か上空に大きく広げる翼が、それを証明するかのように風を切る。

美しくも遠い景色が、彼の眼下には広がっていることだろう。

僕は彼が妬ましい。僕は彼が羨ましい。

見たくてもみれないものを、君はみる。
果てがある苦しみの世界を、君はきっと知らないだろう。

重力で視線さえ地面に縛られる僕は、君を羨むことしかできない。

そんな僕の、耳元に、風の、声が、

「お前の魂を縛るものは、お前以外にいないというのに」

世界の果てなぞ、ただのまやかし。

両肩に乗せられた重みは、己自身が望んだもの。

飛んで見せろ、と風は言う。
羽ばたいて見せろ、と君が言う。
縛りを解け、と、僕は言う。

重力、社会、人。惑わされるな。

それらは上から見てみれば、たった一本の道に過ぎない。

恐れるなかれ、止まるなかれ、嘆くなかれ。

自由であれ

気ままであれ

大胆であれ

お前を縛るものは、この世でたった一人、【お前】以外にいないのだ。

鳥は告げ、そしてより高い彼方へと舞い上がり、姿を消した。

鳥の姿をした、君は一体、誰なのか。

僕はその考えを振り払う。
だって、君には必ずまた会える。

果てのない道が、重力に押さえられても立ち続ける僕の目の前に広がっている。

きっとこの道の空の上を、君は飛ぶ。

一歩、踏み出した。
翼はいつでも、この胸に。

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