「夜見枯古書店心書譚」第二十話
――ワイルドハントを模した物語。
阿光は頭の中から知識をひねり出した。仮にも『バベルの言語』を読む人間である。これぐらいの知識は当然だった。
阿光が『物語喰らい』と言われる原因は、この『バベルの言語』にある。
『バベルの言語』とは、遥か昔、人が共通言語を持っていたころ、バベルの塔と呼ばれるものを作り、神をあがめようとした話に由来する。これは、失われた共通言語のことを指している。
本来、読み手を失ったはずのこの言語を、阿光は生まれたときから読んでいた。だからこそ、阿光は