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月草骨董店

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「ここは、月草骨董店。あなたをお待ちしている逸品が、ここにありますよ」
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星合の宵

星合の宵

 七夕の空を見上げると、香奈子は無性に泣きたいような衝動に駆られる。

 日本の七夕なんて、大概が梅雨のせいで曇り空。

 湿気が多い今日に至っては、普通に雨が降っていた。大学が終われば止んでいたから、最近多い通り雨だったのだろう。

 七夕に雨が降ると、織姫と彦星が会えないというのは有名な話だ。

 しかし、「宇宙がある」と知っている現代人は、「織姫と彦星はデートを見られるのを恥ずかしがっている

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琥珀色のあの人

琥珀色のあの人

 その人は琥珀色をしていた。

 目も、髪も、その雰囲気さえも。

 何故そう思ったのかといえば、結局のところ、その人の胸元で大きく揺れていた琥珀のペンダントのせいだ。

――ああ、これかい?

 その人は、うっすらと微笑む。視線が行く先を見て、その大きな琥珀を手に取って、私に見せた。

――これはね、大昔にもらったものだよ。本当かどうかは知らないけれど、創世記に舞い降りた天使の一人が入っていると

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Shana Shana【前編】

Shana Shana【前編】

 黒猫と目が合った

 空に浮かぶ満月のように大きな金色の瞳

 夜の大波が押し寄せようとする小さな部屋に、本当の闇が行儀よく窓辺に座っている。置物のように。

 彼の手前には、上品なきらめきを反射する銀の小箱がぽつりと一つ。

 中には、真っ白なジグソーパズル。暇をつぶすにはちょうどいい。

 しゃなしゃなと、箱からピースをばらまいた。

 満月の光に照らされたそれは、星のように仄かに光っていた

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