natsume
オリオン座の3つ星が1つ消えてしまった あの日、滝鳴街は地下に移された。 kの住む町では大きな雨音が辺りに響き、 道にはいくつもの水たまりが出来ていた。 あのとき…
竜が人間界に銀河の風をはこんでいた遠い昔。 少年は竜の背に乗って様々な空を旅した。 竜の背中から観る世界の広さに 空の大きさに胸は高鳴った。 頬にあたる風の冷たさを…
22175 右目が見えなくなった11歳の誕生日の夜に楓は現れた。 月が綺麗な夜だった。 カーテンの向こうがわは月明かりに照らされ ひっそりとしたシルエットがポツン…
学校の帰り道、細い路地を入ると右側に少し傾いたとても古い家がある。今にも崩れてきそうで、かつては白かったであろう壁には苔がびっしりと生え、雑草だらけの庭にはいつ…
私であることもすっかり忘れて 真っ黒な空間をプカプカと浮いていた。 何度も何度もそのチャイムは鳴り続け、 とうとう翔(かける)は目が覚めてしまった。 マルコポー…
南十字路珈琲 しんしんと雪の降る寒い夜だった。 山小屋は暖炉で暖められ、Kは珈琲を飲みながらゆっくり椅子に座り 本を読んでいた。 「コンコン」とドアをノックする音…
さなぎを育てよう! さあ、あなたもさなぎで快適生活を手に入れよう! 春子は駅前のスーパーで配っていたチラシを見ていた。 さなぎセット大特価と書かれたチラシには、 …
空は重たい雲でとうとういっぱいになってしまいました。 人間達の心からはみ出した感情は 吐き出す息と共に煙となり モクモクと空に上昇していくと雲にまとわりつきました…
どこまでも青く深い紺のネイル この色を見ているとまるで自分がどこか遠くへと深く潜れたような気がしてくる。 気がつくと時計は12時をさしていた。 いつもの眠る時間を超…
拝啓 k様 お久しぶりです。お元気ですか? 毎日暑い日が続いていますがいかがお過ごしですか? 昔は梅雨も雨もそんなに好きではありませんでしたが 灰色の空をみている…
寝袋の中で寝ていると 2匹の猫が入ってくる。 kは寝袋で眠るのが好きだった。 寝袋に包まれていると落ち着くのだ。 その日は雪の降るとても寒い夜だったので kは顔も全…
kは毎日星を食べます 空に手を伸ばし 一つ一つ星をつまみます kが星をほおばると 星のしずくがさらさらと 口からこぼれていき 宙には無数の星のくずがキラキラと舞いま…
掃除が終わったあとkは 床に寝転がります 床はひんやりしていてとても心地が良いのです しばらくぼんやりした時間を過ごします すると足下の方に何かがひょっこり顔を…
町が海になった 海の中をさまよう スローモーションの人影 空にはいくつもの青と黒のグラデーションが出来ていた 自然に呼吸が出来ているのは酸素ボンベがあるからだ …
kはコンコンと眠っていました kが眠ってからというもの 毎晩のように7人のこびと達はkの元を訪れます まずkの顔のパーツを一つ一つはずして 目、鼻、口を ベット…
本当の青 青の向こう側 青のこちら側 何かのいろ 何もない色 不確かな匂い 染みついた匂い 五感をそらにほおむった 宙に浮き 地球にキスをする 月が照らす 闇夜…
2020年3月24日 23:29
オリオン座の3つ星が1つ消えてしまったあの日、滝鳴街は地下に移された。kの住む町では大きな雨音が辺りに響き、道にはいくつもの水たまりが出来ていた。あのとき夜の中で目が合ってしまった。いつも何かに見られているような夜の気配はどんどん濃くなっていく。ひっそりと身を潜め沈んでいた物が次々と浮かび上がってくる。背後に引きずるような影を抱えて歩く人。笑っていたが影はずっしりと重たそ
2019年12月22日 08:07
竜が人間界に銀河の風をはこんでいた遠い昔。少年は竜の背に乗って様々な空を旅した。竜の背中から観る世界の広さに空の大きさに胸は高鳴った。頬にあたる風の冷たさを手のひらにそっとのせてみると風は少年の手の中でさらさらと消えていった。遠くの高い空から世界を見渡し精一杯目を見開いてみたのだけれど少年の小さな瞳には広い世界の一部しかみることができなかった。すると竜は眼のずっとずっと奥の方
22175右目が見えなくなった11歳の誕生日の夜に楓は現れた。月が綺麗な夜だった。カーテンの向こうがわは月明かりに照らされひっそりとしたシルエットがポツンと浮かんでいた。「楓だよ」楓が姿を現したときジャスミンの香りが遠くからしていた。楓の現れた翌朝は部屋のあらゆる物が壊され荒らされていた。その後しばらくの間、楓は姿を見せなかった。月が半分に欠けた晩、楓はまた何時
2019年3月4日 23:28
学校の帰り道、細い路地を入ると右側に少し傾いたとても古い家がある。今にも崩れてきそうで、かつては白かったであろう壁には苔がびっしりと生え、雑草だらけの庭にはいつもたくさんの猫がいる。 ちょうど通りに面している家の縁側にはいつも猫と猫じじいが一緒に座っていた。 なつこたちの帰る頃、縁側に座りたくさんの猫たちに囲まれ「おかえりー」というのである。 手にはいつも猫の絵が描かれた缶詰がある。
2019年2月20日 15:38
私であることもすっかり忘れて真っ黒な空間をプカプカと浮いていた。何度も何度もそのチャイムは鳴り続け、とうとう翔(かける)は目が覚めてしまった。 マルコポーロ荘は壁が薄いのだ。そんなにならすと隣の八さんからまた苦情が来る。八さんは翔の部屋の隣に住んでいる白い猫だ。以前、翔がここに引っ越してくる前に住んでいたタンバリンの男は帰って来ても、出かける時も、鍵をかけるときも、とにかくタ
2019年2月17日 13:57
南十字路珈琲しんしんと雪の降る寒い夜だった。山小屋は暖炉で暖められ、Kは珈琲を飲みながらゆっくり椅子に座り本を読んでいた。「コンコン」とドアをノックする音が聞こえる。ドアを開けてみたが誰もいない。そこには真っ白な銀色の世界があるだけだった。「あの...」かすかに声が聞こえる。「あの、、、、私の話をきいてください」と足下から声が聞こえてきた。みるとkのふくらはぎくらい
2019年2月11日 11:26
さなぎを育てよう!さあ、あなたもさなぎで快適生活を手に入れよう!春子は駅前のスーパーで配っていたチラシを見ていた。さなぎセット大特価と書かれたチラシには、いろんな色のさなぎがあった。だいたい、1メートル前後のさなぎだが中に入ると驚くほど広い空間が広がっているのだという。春子がチラシをまじまじ見ていると、「お客さん、さなぎの素質ありそうだわー」とチラシを配っていた女性に話しかけら
2019年2月5日 17:40
空は重たい雲でとうとういっぱいになってしまいました。人間達の心からはみ出した感情は吐き出す息と共に煙となりモクモクと空に上昇していくと雲にまとわりつきました。空の隙間は埋め尽くされギューギューという何かをひねり上げるような不気味な音と稲光が空を走っていました。世界の時間も空に合わせて走り早送りの時間の中で人間達はあっという間に年を取り死んでいき次々に新しい命が誕生していきま
2019年2月5日 17:37
どこまでも青く深い紺のネイルこの色を見ているとまるで自分がどこか遠くへと深く潜れたような気がしてくる。気がつくと時計は12時をさしていた。いつもの眠る時間を超えていた。「寝なくちゃ。明日も仕事だ。」kは昔からそうだった。気がつくといつまでもいつまでも深い青を眺めてしまう。明日で5連勤が終わる。最近は3日目あたりから体の疲れがとれにくくなっている。明日は仕事の帰りに銭湯へ行こ
2019年2月5日 17:34
拝啓k様お久しぶりです。お元気ですか?毎日暑い日が続いていますがいかがお過ごしですか?昔は梅雨も雨もそんなに好きではありませんでしたが灰色の空をみているとだんだんと梅雨の時期が好きになりましたどんより重たい雲も雨の降る音もほんのり薄暗い景色も少し落ち着きますあじさいの花がとても好きで梅雨時期には沢山のあじさいを見ていました映画も見たくないし本も読みたくないし旅に
2019年2月5日 17:28
寝袋の中で寝ていると2匹の猫が入ってくる。kは寝袋で眠るのが好きだった。寝袋に包まれていると落ち着くのだ。その日は雪の降るとても寒い夜だったのでkは顔も全部寝袋に入れてお腹を隠すようにくるまって寝ていた。しんしんと雪の降り積もる音が部屋の中まで聞こえてきた。すると何時ものように猫も一緒に入ってきた。kの家には2匹の猫がいる。1匹は額にmと書いてあるキジトラ柄の猫で名
2019年1月20日 11:37
kは毎日星を食べます空に手を伸ばし一つ一つ星をつまみます kが星をほおばると星のしずくがさらさらと口からこぼれていき宙には無数の星のくずがキラキラと舞います 星屑達は集まってまた一つの星になります kがまた一つの星を食べようと手を伸ばすとうっかり落としてしまいました 落ちていった星は湖の底深くまで潜っていきぼう ぼうと水の中から発光しています 湖の発光を宙か
2019年1月19日 12:51
掃除が終わったあとkは床に寝転がります床はひんやりしていてとても心地が良いのですしばらくぼんやりした時間を過ごしますすると足下の方に何かがひょっこり顔を出しているのが見えましたその何かは何なのかkには初め分かりませんでした丁度kの足のサイズと同じこびとのようですひょっこり顔を出したり隠れたりしながらkの様子をうかがっていますkは心地よい睡魔に襲われそのまます
2019年1月18日 10:35
町が海になった 海の中をさまようスローモーションの人影空にはいくつもの青と黒のグラデーションが出来ていた 自然に呼吸が出来ているのは酸素ボンベがあるからだ 世の中が海になる前に人々に配られたものだ 酸素ボンベは思ったよりも軽い kがいつも行っている商店街の入り口にはコンビ二がある コンビニの中には酸素ボンベが積み重なっておいてあった。酸素ボンベにはピンクと青
2019年1月18日 10:33
kはコンコンと眠っていましたkが眠ってからというもの毎晩のように7人のこびと達はkの元を訪れますまずkの顔のパーツを一つ一つはずして目、鼻、口をベットの脇に置きますそしてkの顔を白いタオルで拭いていきますキュッキュッキュッと音がなりkの顔はピカピカになりましたそしてこびと達は慎重に一つ一つのパーツをkの顔に戻していきます1ミリのずれも許されない慎重な
2019年1月18日 10:18
本当の青青の向こう側青のこちら側何かのいろ何もない色不確かな匂い染みついた匂い五感をそらにほおむった宙に浮き地球にキスをする月が照らす闇夜の海熱帯の茂みかすかな香りを漂わせながら風鈴の音をきく夏のおとめまいがする熱気意識が遠のくかすかな木漏れ日の中うたた寝をするなつのおわり